(『ドラムのコツ100』岩井禎彦著、『音楽用語事典』リットーミュージック発行から抜粋)
〇ドラムを叩く時の姿勢
背筋はあまり伸ばさない。
「気をつけ」の状態ではなく、やや肩を下げて息を吐いた状態にする。
足首の力は必ず抜くこと。
イスの高さはあまり関係なく、楽器との距離が重要である。
ドラミングでは、両足(両足首)が浮く時が意外に多い。
その状態を再現してみて、バランスを崩さずに座っていられるポジションを見つけるのがコツである。
〇ドラムのストローク
ストロークとは、スティックの振り方のことで、4種類ある。
①フル・ストローク
これは大きな音で叩いて、再び大きな音で叩く時のストロークである。
叩いた後に、できるだけ素早くスティックを振り上げる。
②ダウン・ストローク
大きな音で叩いて、その次は小さな音で叩く時のストロークである。
叩いたらスティックを返さずに、低いポジションでスティックを止める。
叩いた時に指をしっかり握った状態にすると、やりやすい。
③アップ・ストローク
小さな音で叩いて、次は大きな音で叩く時のストロークである。
叩いたら出来るだけ素早くスティックを振り上げるが、小さい音で叩いた後なのでリバウンド(反動)は無く、スティックを振り上げるのは手首の力で行う。
指はしっかり握った状態がやりやすい。
④タップ・ストローク
小さな音で叩いて、再び小さな音で叩く時のストロークである。
スティックの動きを小さく抑えるのがコツ。
12ビートは、3連符を4つ並べて、1小節を12に分けたビートである。
R&Bのスロー・バラードでよく使われる。
12ビートでは、ダウン・ストローク→タップ・ストローク→アップ・ストロークを3連符に当てはめると、3連符の頭にアクセントが付く。
シャッフル・リズムは、12ビートを進化させたもので、ハネた軽快なグルーヴが特徴である。
3連符のうち2打目を抜いて、1打目をダウン・ストローク、3打目をアップ・ストロークで叩く。
「ロール」は、ストロークのスピートを速くして音を繋げることを言う。
長いロールはロング・ロール、短いものはショート・ロールと言う。
ショートロールには、5ストローク・ロールや7ストローク・ロールなどがあり、ルーディメンツの一部でもある。
音がはっきり粒立っているロールを、オープン・ロールと呼ぶ。
スティックをヘッド(打面)の上で多く弾ませて、それを繋げるロール(粒立ちの良くないロール)を、クローズド・ロールまたはプッシュ・ロールと呼ぶ。
〇ベース・ドラムの奏法
ベース・ドラムの奏法は、「ヒール奏法」、「アップ・ヒール奏法」、「ダウン・アップ奏法」、「スライド・ステップ奏法」の4つがある。
「ヒール奏法」は、ペダルのプレートにカカトを付けた状態で叩く。
このやり方だと安定感があり、小さく繊細な音が出しやすい。
音を大きめにしたい時は、カカトを付けた状態でスタートし、叩く瞬間に少しだけカカトを浮かせる。
「アップ・ヒール奏法」は、カカトをプレートから浮かせた状態(爪先はプレートに軽く触れた状態)でスタートし、足全体の重みを乗せて叩く。
コツは、足首をリラックスさせる事で、足首の上下動をしっかり使うこと。
「ダウン・アップ奏法」は、ヒール奏法とアップ・ヒール奏法を交互にするもので、慣れると「ドドドド」と連打ができる。
コツは、ビーター(ベース・ドラムのスティック)が打面に当たっている瞬間をできるだけ短くすること。
「スライド・ステップ奏法」は、高速で2連打するやり方である。
まずプレートの少し手前から、カカトを浮かせた状態でスタートする。
カカトを浮かせたままで1打目を行い、足を前方に滑らせながらビーターを戻して、足全体で2打目を打つ。
1打目と2打目の間で足が前方に滑ることから、「スライド・ステップ」と呼ばれる。
コツは、1打目の後に素早くビーターを戻すこと。
〇ハイハットのペダル・テクニック
ハイハット・シンバルのペダル奏法は、「ヒール奏法」と「アップ・ヒール奏法」がある。
ハイハットを開く時に、カカトを付けるのがヒール奏法で、カカトを浮かせるのがアップ・ヒール奏法である。
「ヒール奏法」は、カカトがプレートに付いているので安定するが、ハイハットを閉じる時に大きな「チッ」という音を出すには練習がいる。
コツは、踏み込む時に素早く行って、タイトな「チッ」という音を出すこと。
「アップ・ヒール奏法」は、カカトをペダルから浮かせるので安定しにくいが、踏む時に足全体の重みを乗せられるので、「チッ」が出しやすい。
〇ハイハットの叩き方
ハイハット・シンバルは、エッジ(縁)を叩く場合と、トップ(上部)を叩く場合があり、音色が違う。
この2つの叩き方を交互に行って、強弱のニュアンスを出すこともある。
よりニュアンスにこだわる人は、手首の角度も使い分けると良い。
手首の甲を上に向けると、余韻の短めな重い音になる。
親指を上に向けると、余韻の長い軽い音になる。
ハイハットの「ダウン・アップ奏法」は、片手でダウン・ストロークとアップ・ストロークを交互に行って叩くことをいう。
ダウンの時は手首を下げて、スティックのショルダーでハイハットのエッジを叩く。
アップの時は手首を上げて、スティックのチップでハイハットのトップを叩く。
この奏法は、慣れてくると強弱が生じて、独特のノリが出る。
〇ライド・シンバルの叩き方
ライド・シンバルは、基本的にスティックのチップ(先端部)で、シンバルのボウ(中心と縁の間の部分)を叩き、「チーン」というクリアーな音を出す。
重要なことは、叩き続けても疲れない位置にシンバルを設置することで、肘が脇腹からあまり離れないようにする。
ドラマーの上級者になるほど、「指で演奏している」と気付く。
ニュアンスや音色は、指の使い方がかなり影響する。
「シンバル・レガート」は、シンバルで一定のリズムを刻んでいく事を指す。
これは主にライド・シンバルで行われる。
スティックの当たる角度や場所により、シンバル・レガートは様々な音色になる。
特にジャズ・ドラマーは、リズムのハネ方、うねり方、音色に強い個性が見られる。
〇ライド・シンバルのサウンド・バリエーション
ライド・シンバルは、叩き方で多彩な音を出すことが出来る。
そのバリエーションを書く。
①通常の叩き方
前述した、スティックのチップでシンバルのボウを叩き、「チーン」というクリアーな音を出すもの。
②エッジ(縁)をチップで叩く
①よりもシンバル全体のウォーンという音が加わる。
③カップ(中心の盛り上がっている所)をチップで叩く
カーンという音が出る。チップで叩くので繊細な響きになる。
④カップをスティックのショルダー(肩の部分)で叩く
ショルダーで叩くので、「キンキン」という音になる。
⑤ボウをショルダーで叩く
サステインの短いクラッシュ音が出る。
⑥エッジをショルダーで叩く
クラッシュ・シンバルを叩く時と同じ叩き方だが、ライド・シンバル特有の濁ったクラッシュ音になる。
⑦エッジを縦に叩く
エッジにスティックを縦に当てるやり方で、トライアングルのような透き通った音になる。
〇リム・ショット
リム・ショットは、リム(太鼓の輪の部分)を叩く奏法である。
これは主にスネアで行うが、タムタムでも可能である。
「オープン・リム・ショット」は、ヘッド(太鼓面)とリム(輪)を同時に叩く奏法で、インパクトのある音が出る。
「クローズド・リム・ショット」は、スティックを上下逆さに持ち、スティックのチップをヘッド(太鼓面)に押し付けて、そこを支点にしてスティックをリムに当てる。
手首をヘッドに押し付けたままにするのがコツ。
そうすることでショットが安定する。
独特の「カッ」という力の抜けた音が出る。
静かな曲で使われる奏法である。
なおスティックを上下逆さにしないで行う時もある。
〇ゴースト・ノート
ゴースト・ノートは、グルーヴの隠し味として使う音符で、使うとノリが違ってくる。
ポイントは音量で、小さな音で演奏する。
聴こえない位の音量なので、ゴースト・ノート(お化け音符)と呼ばれる。
スネアは、センター(打面の真ん中)からエッジ(縁)に向かうほど、倍音が増す。
これを活かして、ゴースト・ノートはエッジ寄りを叩くと、サステインの長い軽い音になり、通常の音とコントラストが付く。
〇移動ショット
移動ショットとは、スネアとタムタムを次々と移動しながら叩くことだ。
ポイントは、いかにスムーズにスネアに戻れるかである。
スティックの先端が弧を描くイメージで、タムタムからスネアに戻れると良い。
〇片手でロール
まずスティックを、ヘッド(打面)と平行に構える。
そしてほとんど同時に、(厳密に言うとヘッド→リムの順に)スティックをヘッドとリムに当てる。
この時にスティックをリムに押し当てて、それを手首で戻すことで、次のヘッド打ちをする。
これを素早くくり返すと、片手ロールの完成である。
(2023年1月17日に作成)