(『図説 楽器の歴史』フィリップ・ウィルキンソン著から抜粋)
🔵ヴィブラフォン
ヴィブラフォンはシロフォンに似ているが、シロフォンは音板が木製で、ヴィブラフォンは金属製である。
ヴィヴラフォンの特徴は、音板の下に共鳴管があることと、共鳴管の中に羽が付いていて電気モーターで回転することだ。
音板を叩くと羽が回転して、共鳴管が開閉することにより、ヴィブラート効果が生まれる。
羽の回転速度を変えることで、ヴィブラートの速度を変えられる。
さらにヴィブラフォンは、フェルト製のダンパーが付いていて、ペダルでダンパーを動かし、すべての音を止めることができる。
個々の音を止めたい時は、音板に指で触れる。
演奏者は、左右の手にマレットを1本ずつ持つが、2本ずつ持って4音同時に出すこともできる。
中には片手に3本ずつ持つ者もいる。
ヴィブラフォンは、1921年にハーマン・ウィンターホフが開発した。
すると間もなく楽器メーカーのディーガン社が、よく似た楽器を「ヴィブラハープ」という名で売り出した。
これが普及してジャズに使われ、「ヴァイブ」という呼称が定着した。
ちなみにジャズのヴィブラフォン麦者では、ライオネル・ハンプトンとミルト・ジャクソンが有名である。
クラシック作曲家では、ベルクがいち早くオペラ「ルル」でヴィブラフォンを使い、ブリテンやコープランドやブーレーズも使った。
🔵グロッケンシュピール
グロッケンシュピールは、調律した金属の小さな板を叩くことで、鈴のような澄んだ音を出す楽器である。
シロフォンやヴィヴラフォンと同じく、マレットを使い、金属板の中央部分を叩いて演奏する。
マレットの丸い球の部分は、素材は色々とあり、素材によって音色が変わる。
モーツァルトのオペラ「魔笛」は、鋼の楽器を使うよう指示された場面があり、グロッケンシュピールのような楽器で演奏されたと思われる。
現在はチェレスタで演奏することが多い。
オーケストラでグロッケンシュピールを使うのは、キラキラした音色を添えたい時や、鈴の音を模倣する時などである。
マーチング・バンドでグロッケンシュピールを使えるようにしたのが、「ベルリラ」(別名はリラ・グロッケンシュピール)である。
1870年代にドイツで誕生した。
ベルリラは、垂直に持てるようになっていて、ベルトで楽器を固定して、片手で楽器を構えて、もう一方の手で叩く。
🔵シロフォン(木琴)
木琴は、古くからアフリカやアジアで演奏されてきた。
16世紀にアフリカを旅したヨーロッパ人が、木琴を自国に伝えた。
アフリカの木琴は、甘美な音色と高度な演奏技術から、ヨーロッパの探検家を感心させた。
アフリカの木琴は、高い精度で作られており、完成度が高い。
ユダヤ教徒のヨセフ・グシコフ(1806~37年)は、ヨーロッパ各地を旅して木琴を演奏した。
作曲家のメンデルスゾーンは、「グシコフの演奏は、多くのピアニストの演奏よりも喜びを与えてくれた」と書いている。
グシコフがヨーロッパで木琴の知名度を上げたのは間違いない。
20世紀初頭になると、オーケストラ用のシロフォンの開発が進み、作曲家たちもよく使うようになった。
作曲家のメシアンとブーレーズは、シロフォンの音域を拡大した「シロリンバ」を使って、オーケストラにすばらしい色彩感を与えた。
🔵マリンバ
マリンバは、シロフォンにとても似た楽器である。
ラテンアメリカの楽器を起源としていて、アメリカの会社が開発した。
シロフォンよりも大型で低音域の楽器だ。
木製の共鳴管ではなく、アルミ製の共鳴管にしている。
音板は木製だが、シロフォンよりも薄くて柔らかく、まろやかで優しい音色である。
(2023年12月31日、2024年11月9日に作成)