タイトルピアノ演奏に関する知識、様々な奏法

(『ピアノ演奏のコツ55』カルチャーランド著から抜粋)

ピアノの指番号は、右手も左手も親指が1番で、人差し指が2番、小指が5番である。

指のトレーニングは、テーブルの上に指を置いて、1から5番まで1本ずつ指を上げていく。

慣れたら、1と3番、2と4番、3と5番と、2本ずつ上げていく。

ピアノ演奏では、肩の力を抜くの大切である。

背筋はまっすぐにし、肘はまっすぐ伸ばしてはいけない。

椅子は、高すぎても低すぎてもよくない。

指だけで弾こうとせず、手首を柔らかくすると、速いパッセージも滑らかに弾ける。

手首は、力が抜けているのが理想的だ。

片手の指で、もう片手の手首をチョンと上げてみて、手首が軽く上がるなら、脱力している状態だ。

ピアノの鍵盤は、時代と共に増えてきた。

モーツァルトの時代は61鍵、ショパンの時代は82鍵だった。

現在は88鍵だが、最低音のラの振動数は27Hz。
最高音のドの振動数は4.2kHzだ。

音としてはその4倍音まで聴くことができ、人の可聴範囲とほぼ一致する。

ピアノは88の鍵盤があり、オーケストラのあらゆる楽器の音域をカバーしている。

低音は、チューバーの最低音よりも低い音が出せる。

つまりオーケストラのような表現力を持つ。

このため、交響曲をピアノ独奏用にアレンジした楽譜もある。

「アーティキュレーション」は、曲に表情をつける大事なものだ。

レガート、スタッカート、ポルタート、ノン・レガート、フェルマータなどがある。

休符も、アーティキュレーションの1つだ。

バッハなどのバロック期の楽譜には、ほとんどアーティキュレーションの指示がない。テンポも書いていない。

曲の解釈は、演奏者に任されていた。

演奏に表情をつける方法には、ダイナミクスとアゴーギクがある。

ダイナミクスは、強弱の変化である。
アゴーギクは、テンポの変化である。

アゴーギクは高度な技術で、普通はテンポは一定をキープする。

テンポが崩れる場合は、メトロノームを活用したり、録音してチェックするのが有効だ。

また、リズムのノリを感じながら演奏するには、多少のミスタッチは無視して、どんどん前に進むことも大切である。

シンコペーションとは、小節内の弱拍あるいは弱部を強く弾くことである。

強弱の拍子を逆転させて、意外性のあるリズムにするのが、シンコペーションの効果といえる。

ピアノでは、音の強弱は指の力ではなく、打鍵する時の指の速度による。

速く指を下ろせば強音になり、ゆっくり下ろすと弱音になる。

フォルテッシモで弾くにも、決して力づくで叩きつけないこと。

そして強く打鍵した後は、すぐに脱力すること。

力ずくで弾くと、大きな音になっても響かない音になり、迫力が出ない。

フォルテッシモの和音を弾く時、鍵盤を叩きつけている人がいる。

しかし和音は叩くのではなく、手首のスナップをきかせて、ボールを掴むように弾くのがポイントである。

アルベジオの練習は、まずは指を開くトレーニングからしよう。

ついペダルを使いたくなるが、まずは指だけで滑らかに弾く練習をする。

アルペジオは、ハープ(アルプ)が語源になっている事から分かるように、美しいうねりを持つ奏法である。

音域が広いアルペジオだと、両手を使うこともある。

アルペジオでは、ついペダルを使いがちだが、ペダルに頼りすぎるといつまでも指がきたえられず、持術が上がらない。

トリルは、音の粒をそろえることが大切だ。

トリルは隣同士の音の連続だが、3度以上離れた音の連続はトレモロという。

トレモロは、腕の脱力が重要で、脱力した状態で手を振り子のように動かす。

スケール練習で重要なのは、親指の動きである。

親指をすばやく他の指の下へ送り込む動作(指送り)と、親指を軸にして他の指をかぶせる動作(指かぶせ)の練習をくり返すことだ。

グリッサンドは、「滑る」という意味で、ピアノでは爪の部分を鍵盤に当てて滑らす奏法をいう。

この奏法では、1つ1つの音をしっかり出す必要はない。

手の傾きの角度によって、強弱が出る。

深い角度で押しつけるように滑らせるとフォルテになり、浅い角度でなでるように滑らせるとピアノになる。

グリッサンドの音は、パフォーマンス的な要素が強い。

スタッカートを弾くには、俊敏な指の動きが必要となる。

腕には力を入れず、手首を柔らかくして、手首を支点にして上下に動かすのがポイントだ。

なお、スタッカートで連打する時は、途中で指を変えると疲れない。

優しい音色を出すには、指を伸ばし気味にして、指の腹でゆっくりと打鍵する。

逆にきつい音色は、速い打鍵でひっかくようにする。

暗い音色は、鍵盤の深くまでゆっくりと重々しく弾く。

明るい音色は、指や手首のスナップをきかせて、はじくように弾く。

どんな楽器でも、基音を鳴らすと共鳴で倍音が発生し、独自の音色になる。

ピアノの倍音は非調和性の性質をもち、主音とズレがある。
それで輝きのある、伸びやかな音になっている。

音は高くなるなど、倍音は少なくなり、減衰も早くなる。
そのため音域によって音色は変わってくる。

ペダルの踏み方は、かかとを床につけたままで、親指の付け根で踏む。

自動車のアクセルを踏む感覚と同じである。

右ペダル(ダンパー・ペダル)は、音を持続させて音色を豊かにする。
音量を増大させる効果もある。

右ペダルを踏むタイミングは、「①音を出した直後」と、「②打鍵と同時」の、2つがある。

①は離れた音をつなぐのに最適で、②はフォルテで始まるフレーズの時に行う。

右ペダルは、踏みかえを間違えると、音がにごってしまう。

楽譜には基本的にペダリングは書いていないので、自分の判断で行う。

基本的に、次の和音を弾いたのと同時にサッと踏み直す。

真ん中にある「ソステヌート・ペダル」は、踏んだ時に鳴っている音のダンパーだけを開放する。

このペダルを踏むよう指示しているのは、理代曲以外にはほとんどない。

踏むタイミングが難しく、ピアノの上級者でないと使いこなせないペダルである。

左側の「ソフト・ペダル」は、音を弱くしたい時に踏む。

ソフト・ペダルは、グランド・ピアノとアップライト・ピアノでは仕組みが違い、音色も違っている。

なおアップライト・ピアノは、構造上から音色は悪くなる。

グランド・ピアノだと、繊細な音色を出せる。

アップライト・ピアノは、垂直方向に弦が張られているので、ハンマーに伝わるエネルギーのロスがグランド・ピアノよりも大きくなる。

またハンマーを元の位置に戻すのにスプリングの力を借りるので、鍵盤が戻りきらないと次の打鍵ができない。

だからトリルなどの奏法に限界がある。

アップライト・ピアノは、天板を開けて、正面や足元の板を外すと、グランド・ピアノに近い音になる。

ピアノにとって良いのは、温度は15~25℃、湿度は35~70%である。
直射日光や冬の結露は大敵だ。

湿度が高い時期は除湿剤を使い、乾燥する時期は近くに観葉植物を置くとよい。

ピアノの弦は、1本あたり90kgという強い力で張られている。

そのため次第に弦が伸びてきて、音程が狂う。1年に1度は調律するとよい。

電子ピアノは、ピアノよりも音色やタッチは劣るが、ヘッドホンで音が聴けるので、近所に気兼ねなく弾けるメリットがある。

また価格もピアノより安い。

ピアノ演奏時に使う椅子は、専用のものがベストである。

椅子は、正しい姿勢になるよう高さを調節する。

背もたれの付いているタイプもあるが、演奏中は背もたれは使わずに弾く。

演奏時は体重が左右に動くので、安定性あり、ガタガタ、キシキシと音がしない椅子にする。

クッションは硬いものか、もしくはクッションの無いものが望ましい。

ピアノの教則本では、バイエルとチェルニーが日本では有名である。

バイエルはドイツの作曲家で、ピアノの教則本も書いた。

明治時代に日本に初めて持ち込まれたピアノ教則本がバイエルだったので、今でもピアノ教育の権威になっている。
しかし海外では、日本ほど重要視されていない。

バイエル自身は、「この教則本は小さな子供用で、完成された曲は入れていない」と述べている。

チェルニーは、ピアニストで作曲家だった。
ピアノ教師としても有名で、教則本も書いた。

バイエルもチェルニーも、教則本は時代錯誤の面もあり、実際に発表会で弾けるような曲はない。

だからつまらないと感じる人が多い。あくまで練習用のフレーズ集である。

クラシック音楽の楽譜は、「校訂版」と「原典版」に分けられる。

校訂版は、作曲家が譜面に書かなかったことも、演奏家や研究者が解釈して書き加えている。

原典版は、作曲家の自筆譜を基にし、書き加えをしていない。
ただし自筆譜がない場合だと、筆写譜や初版譜などを原典にしていることもある。

原典版は、校訂版と違って曲の解釈が書かれていないので、どう弾いたらいいか分からないと言う人もいる。

バッハなどのバロック期のクラシック音楽は、「通奏低音」が使われていた。

チェンバロやリュートやチェロが低音を奏でて、その土台の上でメロディ楽器が動くという形だった。

バッハが亡くなった1750年頃に始まるのが、古典音楽である。

ハイドン、モーツァルト、ベートーヴンが代表的な作曲家で、この3人はウィーンで活躍したので、「ウィーン古典派」と呼ばれることもある。

それまでのバロック音楽と比べると、シンプルで端正なたたずまいである。

交響曲や弦楽四重奏といった、今日のクラシック音楽のレパートリーが確立された時代で、チェンバロに代わってピアノが登場した時期でもある。

ベートーヴェンの「エリーゼのために」は、40歳の時に結婚を申し込んだテレーゼ・マルファッティのために書いた曲である。

ベートーヴェンは悪筆のため、「テレーゼ」と綴ったのに、読んだ人が「エリーゼ」と解釈してしまった。

テレーゼ・マルファッティは、ベートーベンの主治医の姪で、当時は18歳だったが、結婚の話を断った。

ロマン派の音楽は、古典派を下敷きとし、より主観的・感情的になり、民族主義(民族音楽)も織り込まれている。

ロマン派は、19世紀半ばを区切りとして、前期と後期に分けられる。

ロマン派の音楽を始めたのはシューベルトやウェーバーで、シューマンやショパンが後に続いた。

ロマン派の作品は、転調の多様化、不協和音の活用などで、自己表現を強めた。

後期ロマン派の特色は、リストが創った交響詩と、ワーグナーやマーラーが大規模化した管弦楽曲と楽劇である。
彼らは、計算づくしの重厚な作品をつくった。

一方でこの時期は、古典時代を踏襲した「新古典派」のブラームスも活躍した。

(2024年5月21日に作成)


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