(以下は『指揮者列伝 世界の指揮者100人』玉木正之と平林直哉の文章から抜粋
2008年6月19日~21日にノートにとり勉強したものをここにアップする)
🔵フェリックス・ワインガルトナー 1863.6.2. ~ 1942.5.7. クロアチア
最初に日本を訪れた巨匠級の指揮者である(1937年)。
ウィーンの伝統を受けついだ端正で高貴なスタイル。
録音に積極的だった。
ブラームス自身から絶賛された交響曲2番は名演。
ベートーベンの2~4、8番も良い。
🔵アルトゥーロ・トスカニーニ 1867.3.25. ~ 1957.1.16. イタリア
トスカニーニのリハーサルを録ったLPがあるが、ものすごく熱く、激しく指導している。
楽譜に忠実といわれたが、上っ面をなでるようなものではなく、熱湯のような情熱で追求した。
レスピーギのローマ3部作が名演の筆頭。
メンデルスゾーンの交響曲イタリア、ヴェルディのレクイエム、椿姫、プッチーニのラ・ボエーム、ベートーベンの英雄のライブも良い。
🔵ウィレム・メンゲルベルク 1871.3.28. ~ 1951.3.22. オランダ
マーラーが師匠。
ロイヤル・コンセルトヘボウを一流オケに育て上げた。
当時は難解とされていたマーラーや、R・シュトラウスの普及につとめる。
テンポを大胆に操作し、弦には甘美なポルタメント奏法を多用する古風なスタイル。
芳醇な音色が特徴。練習は長く厳しかった。
チャイコフスキーの6番(1938年の方)は名演。
ライブのベートベン交響曲全集、バッハのマタイ受難曲も良い。マーラーも良い。
🔵セルゲイ・クーセヴィツキー 1874.7.26. ~ 1951.6.4. ロシア
現代音楽や、当時は無名だったショスタコーヴィチやプロコフィエフの作品をよく取り上げた。
骨格のがっしりしたスケールの大きなスタイルである。
🔵ピエール・モントゥ 1875.4.4. ~ 1964.7.1. フランス
春の祭典の初演をしたことで有名。
ちょっと聴くとありきたりに思えるが、よく聴くと上品で格調の高い、深い響きだと分かる。
個性が弱そうだが、実はきっちりと仕事がなされている。
ベートーベンの4、8番、チャイコフスキーの4~6番は名演。 (ステレオ期のもの)
海、リストの交響詩「前奏曲」、スクリャービンの「法悦の詩」、R・シュトラウスの交響詩「死と変容」もいい。(全てRCA)
ブラームスの2番(ロンドン響、フィリップス)もいい。
🔵ブルーノ・ワルター 1876.9.15. ~ 1962.2.17. ドイツ
穏和な性格でオケを叱らなかった。
ユダヤ教徒だったためナチスに追放され、娘は射殺された。
アメリカに渡り活動した。
1956年(80才)の時に一度引退した。
58年に米CBSが説得して、ステレオ録音をした。
ステレオ録音は、田園、未完成、巨人などがある。
モーツァルトの交40番(52年ウィーンフィルのライブ)や、マーラーの大地の歌(52年ウィーンフィル)が名演。
🔵パブロ・カザルス 1876.12.29. ~ 1973.10.22. スペイン
モーツァルト、バッハが名演。剛毅なスタイル。深い精神性がある。
ベートーベンの交8番、メンデルスゾーンのイタリアもいい。
🔵トゥリオ・セラフィン 1878.9.1. ~ 1968.2.2. イタリア
イタリア・オペラ歴代最高の指揮者である。
イタリア・オペラしか録音を残していない。
彼のようなイタリア民族派(イタリア音楽専門)は、イタリアの香りを優先する。
この派には、サバタ、ファブリティス、エレーデ、ガヴァツェーニなどがいる。
彼の指揮で、マリア・カラスの歌、ルキーノ・ヴィスコンティ(又はフランコ・ゼッフィレッリ) の演出、スカラ座のオケ、この4点セットが揃ったのがイタリア・オペラの最高峰である。映像は残ってない。
1955年の「椿姫」の録音ではカラスが外され、そのショックでカラスのわがままが激しくなったとも言われている。
🔵カール・シューリヒト 1880.7.3. ~ 1967.1.7. ドイツ
軽い一筆書きの音楽というイメージだったが、近年になり音源が発掘され、激しさもあったとわかり人気が上昇。
ブルックナーの交8、9番(ウィーン・フィル EMI)は名演。
ベートーベンの英雄(ウィーン・フィル オルフェオ)も名演。
ベートーベンの1番、ブラームスの2番(ウィーン・フィル デッカ) や、モーツァルトの36、38番も良い。
オペラは振らず、生涯特定のポストにつかなかった人。
🔵レオポルド・ストコフスキー 1882.4.18. ~ 1977.9.13. イングランド
ディズニーの映画に出て有名に。
オケの配置を今日のスタイルに並べ替えた。(録音に適した配置にした)
編曲も多くした。
自由自在な指揮ぶりで、非正統派の筆頭。異端などとも言われた。
音の魔術師との異名もあり。
🔵ヘルマン・アーベントロート 1883.1.19. ~ 1956.5.29. ドイツ
重厚さが特徴。情熱派。
ブラームスの1番(ライブ、ターラ)、チャイコフスキーの6番、合唱、ハイドンの88番が良い。
🔵ヴァーツラフ・ターリッヒ 1883.5.23. ~ 1961.3.16. チェコ
チェコ・フィルを育てあげた。
他のチェコ指揮者と同様に、端正で伝統的な解釈が特徴。
レパートリーは自国のものが主である。
ドボルジャークの新世界は、それを聴いたムラヴィンスキーが「自分にはあれはできない」と言って以後にドボルジャークを取り上げなかったほどの出来。
🔵エルネスト・アンセルメ 1883.11.11. ~ 1969.2.20. スイス
バレエ音楽の専門と言われた。チャイコフスキーの一連のものは模範とされている。
ストラヴィンスキーとの出会いからロシア音楽に注力したという。
ストラヴィンスキーの春の祭典、火の鳥、ドビュッシーの牧神の午後、ラヴェルのボレロも名演である。
🔵オットー クレンペラー 1885.5.14. ~ 1973.7.6. ドイツ
問題行動を起こすので有名だった。
晩年にはテンポは遅くなり、響きは枯れたが、幽玄さが出た。
ウィーン・フィルとのライヴ(1968年 テスタメント)は名演。(色々の曲をやっている)
グルックのアウリスのイフィゲニア序曲も良い。
フランク、ドヴォルジャークの交響曲も良い。
🔵ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 1886.1.25.~1954.11.30. ドイツ
「天才的な素人」とトスカニーニは評した。
最大の特色はめまぐるしく流動するテンポ。
彼のそれは高度に洗練されており、魔術的な巧みさを持っている。
音の出し方も独自で、不明確な合図は楽員に緊張を与え、あのずしりと来る響きになる。
間のとり方がうまく、大きくとるのも特色。
ライブで本領を発揮すると言われていた。
ベートーヴェンの交響曲が有名で、英雄(1944年ウィーンフィル) 、運命(47年ベルリンフィル) 、第7番(43年ベルリンフィル)、合唱(51年バイロイト)が特に良い。
シューベルトのザ・グレート(42年ベルリンフィル)と、ブラームスの第4番(48年ベルリンフィル)なども名演として名高い。
🔵ポール・パレー 1886.5.24. ~ 1979.10.10. フランス
一番輝いていたのはアメリカでの10年間で、1952年にデトロイト・フィルの常任になった。
フランスものが名演で、他のフランス指揮者と違い輪郭をくっきり描いている。
シャブリエ作品集、ベルリオーズの幻想交響曲、ドボルジャークの新世界より、シベリウスの2番が良い。
シューマンの交響曲全集もいい。
🔵ハンス・クナッパーツブッシュ 1888.3.12. ~ 1965.10.25. ドイツ
ワーグナーのワルキューレ、リエンツィ序曲、ジークフリートの葬送行進曲などが名演。
ブルックナーも良く、交響曲7、8番が特にいい。
ウィンナ・ワルツもいい。
練習嫌いで有名で、本番での即興性を重視した。
🔵フリッツ・ライナー 1888.12.19. ~ 1963.11.15. ハンガリー
シカゴ響の黄金時代(1953~63年)をきずき、今日「世界最高の精緻なアンサンブル」とも言われるオケの基礎を築いた。
ジョージ・セルと同様に厳格な指導で有名だった。
バルトークを得意とし、名演ぞろい。
R・シュトラウスのエレクトラ、サロメ、交響詩も名演。
ウィンナ・ワルツ集のアルバムは、シュワルツコップが無人島へ持っていきたい一枚に選んだ。
🔵エーリッヒ・クライバー 1890.8.5. ~ 1956.1.27. オーストリア
カルロス・クライバーの父。
唯一のステレオ録音に、フィガロの結婚の全曲集があり名演。
他に英雄もいい。
🔵ニコライ・ゴロワノフ 1891.1.21. ~ 1953.8.28. ロシア
ボリショイ劇場で活躍し、ロシアのフルトヴェングラーとも呼ばれた。
テンポの変化と金管の咆哮が特徴。
チャイコフスキーの1812年は名演。
チャイコの6番、ワーグナーの管弦楽曲集、リストの交響詩「前奏曲」も良い。
🔵ヘルマン・シェルヘン 1891.6.21. ~ 1966.6.12. ドイツ
現代音楽の普及に力を入れた。
🔵シャルル・ミュンシュ 1891.9.26. ~ 1968.11.6. アルザス
1937~46年はパリ音楽院管楽の常任指揮者。
1949~62年はボストン響の常任。
1967年にパリ音楽院管楽がパリ管楽に生まれかわった際は、初代の主席指揮者となった。
ベルリオーズの幻想交響曲(RCA)は名演。
ブラームスの1番も名演。
🔵クレメンス・クラウス 1893.3.31. ~ 1954.5.16. オーストリア
名門ウィーン・フィルをもっとも優雅に美しく鳴らせた人。
ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートを始めた人でもある。
ヨハン・シュトラウスのワルツやポルカが名演。
粋で洒落ているのが特徴。
R.シュトラウスも名演ぞろいで、生前のR.シュトラウスが最も高く評価していたのがクラウスである。
🔵カール・ベーム 1894.8.28. ~ 1981.8.14. オーストリア
ジキルとハイドと呼ばれ、性格が悪かった。
モーツァルトを得意とし、ベルリン・フィルとの交響曲全集 (ドイツ・グラモフォン)は名演。
魔笛(ドイツ・グラモフォン)もいい。
ベートーベンの田園(ウィーン・フィル)もいい。
ザ・グレートもいい。(ドレスデン国立管楽のほう)
🔵アーサー・フィードラー 1894.12.17. ~ 1979.7.10. アメリカ
1930年から半世紀に渡ってボストン・ポップス管楽を指揮。
あらゆるジャンルをこなす。
ガーシュウィンやグローフェは名演。
リロイ・アンダーソンやスーザの行進曲も良い。
とにかく楽しいスタイル。
🔵ジョージ・セル 1897.6.7. ~ 1970.7.30. ハンガリー
クリーブランド管楽をきたえ上げて、ニューヨーク、シカゴ、 ボストン、フィラデルフィアと並ぶ「ビッグ・ファイブ」に入るまでに育てた。
ミリタリー・トレーニングと呼ばれるほどの指導で、トスカニーニよりも厳しいと言われた。
バーンスタインはニューヨーク・フィルの常任時代に、セルを招いて鍛えてもらった。
精緻なアンサンブル、澄明な音色が特徴。
R・シュトラウスの「四つの最後の歌」(シュワルツコップの歌唱) は名演。
🔵ロヴロ・フォン・マタチッチ 1899.2.14. ~ 1985.1.4. クロアチア
1965年に初来日し、以後たびたびN響を指揮しに来た。
レハールの「メリー・ウィドウ」全曲(EMI)は名演。
ブルックナーの5、7番(チェコ・フィル、スプラフォン)もいい。
最後の来日(1984年)のベートーベン2、7番(N響)もいい。
🔵エイドリアン・ボールト 1889.4.8. ~ 1983.2.22. イングランド
ホルストの惑星は5回も録音し、最後の1978年のものは名演。
ブラームスの全集、ヴォーン=ウィリアムズの全集、ベートーベンの全集も良い。
🔵ユージン・オーマンディ 1899.11.18. ~ 1985.3.12. ハンガリー
フィラデルフィア管弦楽団を指揮していた時は、フィラデルフィア・サウンドと呼ばれ、華麗な音の代名詞だった。
厳しい練習で有名。
ストコフスキーと新作のすさまじい初演合戦を行い、現代作品を多くこなす。
レスピーギのローマ3部作が名演。ベートーヴェンの英雄もいい。
🔵フランツ・コンヴィチュニー 1901.8.14. ~ 1962.7.28. ドイツ
ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管楽を指揮。
ドイツ系の交響曲が得意で、渋く重厚な響きである。
🔵エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム 1901.9.3. ~ 1959.4.13. オランダ
1945年にロイヤル・コンセントヘボウ管弦楽の主任に。
前任者のメンゲルベルクが鷹揚にして濃厚だったのに対し、ベイヌムは庶民的で端正だった。
ロイヤル・コンセントヘボウのものが一番良く、ブラームスの交1番は名演。
マーラーの4番、ブルックナーの7番、ベルリオーズの幻想交響曲も良い。
🔵エフゲニー・ムラヴィンスキー 1903.6.4.~1988.1.19. ソ連
生演奏を2度体験したが、人生最大の事件だった(平林氏の談)。
練習好きでトスカニーニを尊敬し、師事したいと思っていた。
トスカニーニ同様に即物的だが、音色は透明で洗練されていた。
レニングラード・フィルを終生指揮した。
チャイコフスキーの交4~6番が代表作。
日本公演ライブ(1973年)のベートーベン4番とショスタコーヴィチの5番もいい。
ベートーベンの3番、5番(1972年ライブ)もいい。
ショスタコの8番(1982年フィリップス)もいい。
バルトークの全般と、オネゲルの3番もいい。
🔵アンドレ・クリュイタンス 1905.3.26. ~ 1967.6.3. ベルギー
シャルル・ミンシュの後を継いでパリ管の主席になる(1946~60年)。
ラヴェルのものは評価が高い。
ベルリン・フィルのベートーベン交響曲全集の初録音を指揮した。
玉木氏はカラヤンのものより良いと評価。
🔵アンタル・ドラティ 1906.4.9. ~ 1988.11.13. ハンガリー
セル、ライナー、ショルティなどのハンガリー指揮者と同様に、職人的な上手さがある。平均水準が高い。
史上初のハイドン交響曲全集(デッカ)を完成させた。
キャリアの初期から録音に積極的だった。
バルトークの管弦楽集が良い。
ストラヴィンスキーの3大バレエも良い。
🔵カレル・アルチェル 1908.4.11. ~ 1973.7.3. チェコ
ナチスによって父母、妻子を虐殺された。
さらに晩年には、「プラハの春」事件を知ってカナダに亡命した。
穏和で高貴なのが特徴で、1950年にチェコ・フィルの指揮者になった。
スメタナのわが祖国、ドヴォルジャークの新世界より、ヤナーチェクのシンフォニエッタなど、お国のものが得意。
ブラームスの1、2番もいい。
ドヴォルの8番(ロイヤル・コンセルトヘボウ EMI) は最高峰の出来。
🔵ヘルベルト・フォン・カラヤン 1908.4.5.~1989.7.16. オーストリア
尊大な性格で嫌う人も多い。
にごりのない美しすぎる響きは精神性の欠如を思わせもする。
だが1950年代(40歳代)の演奏は躍動感に満ちている。
マリア・カラス主演のドニゼッティのオペラ「ルチア」のライヴや、シュワルツコップ主演のRシュトラウスの「ばらの騎士」などが名演盤。
R.シュトラウスの交響詩は全て名演。
さらにベルク、シェーンベルク、ウェーベルンなどの現代ものを分かりやすく聴かせたものも名演。
演奏自体に特記すべき特徴がなく、近い将来に「過去の人」になって消え去るかもしれない。
🔵朝比奈隆 1908.7.9. ~ 2001.12.29. 日本
レパートリーは割と固定で、重厚な作品を好む。(フルトヴェングラーと同じ好み)
響きの重厚さが特徴。
1990年代以降ならどのCDでも個性が出ている。
🔵ジャン・マルティノン 1910.1.10. ~ 1976.3.1. フランス
1958年の悲愴(ウィーン・フィル)は名演。
ラヴェルとドビュッシーの管弦楽曲集(フランス国立管楽 EMI)は名演で、クリュイタンスのものより評価する人も多い。
サン=サーンスの全集も良い。
🔵ルドルフ・ケンペ 1910.6.14. ~ 1976.5.12. ドイツ
地味な芸風のため、晩年にようやく認められた。
渋く落ち着いた音色である。
R・シュトラウスの管弦楽曲、協奏曲集(EMI)が名演。
ブルックナーの4、5、8番もいい。
ベートーベン、ブラームスの交響曲もいい。
オペラでは「ローエングリン」が良い。
🔵ギュンター・ヴァント 1912.1.7. ~ 2002.2.14. ドイツ
1980年代までは手堅い演奏をするとの評価だった。
だがレパートリーを選別し、90年代以降は神様のような評価を受けた。
13MGクラシックスから出たものは全て名演。
🔵セルジュ・チェリビダッケ 1912.6.28. ~ 1996.8.14. ルーマニア
録音をしない主義だった。
ベートーベンの2、6番、ブラームスの4番、ブルックナーの6、7番などは名演。
ハイドンもいい。展覧会の絵も個性的。
ミュンヘン・フィルとのものがお奨め。
🔵イーゴリ・マルケヴィッチ 1912.7.27. ~ 1983.3.7. ウクライナ
日本フィルの常任指揮者になり、鍛え上げた人。
日本フィルとやった春の祭典(ライブ)は名演。
同曲のワルシャワでのライブもいい。
チャイコフスキーの交響曲は全ていい。
ラムルー管楽の幻想交響曲もいい。
🔵クルト・ザンデルリンク 1912.9.19. ~ ドイツ
ブラームスの交響曲全集は名演。
2002年に引退。
引退公演のシューマン4番は名演。
1972年のR.シュトラウスの英雄の生涯(ライブ)も良い。
🔵山田一雄 1912.10.19. ~ 1991.8.13. 日本
振り間違えで有名。
情熱派でビジネス・ライクでないため録音が少ない。
最後のスタジオ作となったジュピター(1990年 フォンテック)は良い。
🔵ゲオルグ・ショルティ 1912.10.21. ~ 1997.9.5. ハンガリー
ニーベルングの指環の全曲録音を世界初で行った (10年かかった) 。これが名演。
ワーグナーの諸作品や、R・シュトラウスのオペラも良い。バルトークもいい。
ダイナミックな演奏と言われたが、それ以外の個性が無い。
🔵キリル・コンドラシン 1914.3.6. ~ 1981.3.7. ソ連
モスクワ・フィルと史上初のショスタコーヴィチの交響曲全集を作った。
1979年にオランダへ亡命した。
新世界より(ウィーン・フィル デッカ)、リムスキー・コルサコフのシェラザード(フィリップス) 、マーラーの7番(ターラ)は良い。
🔵カルロ・マリア・ジュリーニ 1914.5.9. ~ 2005.6.14. イタリア
イタリア・オペラを得意とし、1955~57年にヴィスコンティ演出、マリア・カラス主演のスカラ座でやった椿姫は戦後最高と言われている。
1957年にスカラ座を辞めてからは、ほとんどフリーで活動。
「孤高の大指揮者」と言われた。
シューベルトの9番、ブルックナーの9番も良い。
🔵ラファエル・クーベリック 1914.6.29. ~ 1996.8.11. チェコ
バイエルン放送響を育てた人で、その時代のものが優れている。
シューマン全集、モーツァルトの後期6大交響曲、ブルックナーの3、4番は名演。
マーラーの全集も良い。
ドボルジャークの8番(ドイツ・グラモフォン)、 スメタナのわが祖国(スプラフォン、ライブ)も良い。
🔵フェレンツ・フリッチャイ 1914.8.9. ~ 1963.2.20. ハンガリー
晩年は風貌と演奏がフルトヴェングラーに似ていた。
白血病におかされたため演奏に出来不出来がある。
1996年に発掘された悲愴(1959年 ベルリン放送響)は名演。
新世界(59年 ベルリン・フィル)もいい。
ベルリン・フィルを振ったベートーベンの3、5、7番も良い。
🔵レナード・バーンスタイン 1918.8.25. ~ 1990.10.14. アメリカ
レパートリーが広い。
本質的にハート(心)の指揮者。感情を音にする。
アメリカのメジャーなオケの常任に就任した、初のアメリカ出身の指揮者である。
マーラーが特に良く、カラヤン時代のベルリン・フィルを一度だけ振った交響9番は圧巻。
作曲もしており、ミュージカルは傑作ぞろい。
🔵ペーター・マーク 1919.5.10. ~ 2001.4.16. スイス
メンデルスゾーンの3番(デッカ)は名演。
メンデルスゾーンの真夏の夜の夢もいい。
モーツァルトのジュピターもいい。
🔵ヘルベルト・ケーゲル 1920.7.29. ~ 1990.11.20. ドイツ(東ドイツ)
ドイツの統一時にピストル自殺して、有名に。
細部を重視し、冷たく整然としたスタイル。
マーラーの巨人、ベルリオーズの幻想交響曲は名演。
ペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」もいい。
ライブでは1989年の来日時の運命、田園が良い。
🔵ヴォルフガング・サヴァリッシュ 1923.8.26. ~ ドイツ
本領はオペラで、1957年に33才という史上最年少でバイロイト音楽祭にデビュー。
1962年のバイロイト・ライブのタンホイザーは名演。
オペラ以外はいまいち。
🔵スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ 1923.10.3. ~ ポーランド
一つ一つの音をくっきり浮かび上がらせるのが特徴。
近年のザール・ブリュッケン放送響とやっているのが良い。
🔵クラウディオ・シモーネ 1923.12.23. ~ イタリア
最近(2000年代はじめ)は、古楽器の奏法を取り入れないバロックや古典派の演奏は、本道にあらずという風潮がある。
ヴェネツィア合奏団と組んだシモーネは、古楽器スタイルを取り入れず、評価が低い。しかし内容はすばらしい。
🔵ピエール・ブーレーズ 1925.3.26. ~ フランス
メシアンの弟子で作曲家でもある。物議をかもす発言が多かった。
聴き手の目の前に記号(音符)が並ぶようなクールなスタイル。
ドビュッシーやラヴェルはいい。
🔵クラウス・テンシュテット 1926.6.6. ~ 1998.1.11. ドイツ
ドイツ・ロマン派の指揮者。
1984年に発病し、以後はあまり活動せず。
チョン・キョンファは彼と共演したくてEMIに移籍してきた。
マーラー の交1、6、7番は名演。
ワーグナーの管弦楽曲集もいい。
BBCシリーズの合唱、ブラームスの3番、ドヴォルジャークの8番も良い。
🔵カール・リヒター 1926.10.15. ~ 1981.2.17. ドイツ
オルガン奏者として有名で、バッハならリヒターという時代が長く続いた。
指揮もバッハが得意。
🔵ガリー・ベルティーニ 1927.5.1. ~ 2005.3.17. イスラエル
マーラーの全集(EMI)がある。
🔵ホルスト・シュタイン 1928.5.2. ~ ドイツ
実力は高く評価されているが、録音が少ない。
ブラームスの全集(1997年 コッホ)は名演。
1980年代にシューベルト全集、Rシュトラウスのツァラトゥストラ、アルプス交響曲、ベートーベンの英雄などがあり、良い。
ブルックナーの2、6番も良い。
🔵エフゲニー・スヴェトラーノフ 1928.9.9. ~ 2002.5.3. ロシア
岩盤のように固く重い音が特徴。
チャイコフスキーの交響曲全集は名演。
ドビュッシーの海やレスピーギのローマ3部作も、ロシア色で料理して個性的。
🔵ハインツ・レーグナー 1929.1.16. ~ 2001.12.10. ドイツ(東ドイツ)
読売日本フィルの指揮でよく来日した。
ドイツ統一後はショックで元気をなくし、演奏が力の無いものに。
ブルックナーの6~9番、マーラーの3、6番、ワーグナーの管弦楽曲集は良い。
ザ・グレート(デンオン)も良い。
🔵パーヴォ・ベルグルンド 1929.4.14. ~ フィンランド
シベリウスなどの北欧物を得意としている。
2006年に出たショスタコーヴィチの8番(ペンタトーン)は名演。
🔵イシュトヴァン・ケルテス 1929.8.28. ~ 1973.4.16. ハンガリー
1930年代初めからデッカと契約し、ウィーン・フィル、ロンドン・フィルと録音。
61年のウィーン・フィルとの新世界は名演。
モーツァルトの33、36、40番や、トヴォルのスラヴ舞曲、スメタナの売られた花嫁序曲も良い。
レスピーギや、ブルックナーの4番も良い。
2度来日し、DVDがある。
🔵ニコラウス・アーノンクール 1929.12.6. ~ オーストリア
オリジナル楽器による演奏の草分け。
玉木氏は評価せず、理屈っぽいと言う。
🔵ロリン・マゼール 1930.3.6. ~ アメリカ
神童と呼ばれ、1960年にアメリカ人として初めてバイロイト音楽祭に出演した。
基本的に無難で、たまに妙なことをする。
🔵カルロス・クライバー 1930.7.3. ~ 2004.7.13. ドイツ
1970年代に出た運命のLPは、「事件」と呼ばれるほどの評判になった。
指揮をしている時の姿が美しいので有名。
1994年の来日公演、ばらの騎士は圧巻だった。
レパートリーは少なく、その全てで名演を残した。
練習は指示が細かく、オケと対立して公演がキャンセルになることもあり、「キャンセル魔」といわれた。
カラヤンは「真の天才」と評価した。
🔵ウラジミール・フェドセーエフ 1932.8.5. ~ ロシア
彼の指揮したモスクワ響はすばらしく、ロシアの作曲家のものが特に良い。
スヴィリドフの「吹雪」が特にいい。
🔵クラウディオ・アバド 1933.6.26. ~ イタリア
カラヤンに見出されデビュー。 スカラ座やロンドン・フィルなどの常任に。
ロシアものを好む。個性に乏しい。名演なし。
ロッシーニのオペラ「ランスへの旅」(ベルリン・フィル)は良い。
🔵ロジャー・ノリントン 1934.3.16. ~ イングランド
当初は古楽器のオケであるロンドン・クラシカル・プレイヤーズを率いて話題を呼んだ。
その後に、現代のオケに古楽器の奏法を取り入れて活躍した。
(ジンマン、ガーディナーらも同じ事をしている)
とてもすっきりした演奏。巨人が良い。
🔵ズデニェク・マーツァル 1936.1.8. ~ チェコ
2001年からチェコ・フィルの主席に。
チャイコフスキーの1番は良い。
🔵ズービン・メータ 1936.4.29. ~ インド
23才でウィーン・フィルを振り大成功。数々のオケの監督を務めてきた。
最近はオペラを中心にしている。
🔵デイビッド・ジンマン 1936.7.10. ~ アメリカ
1991年に録音したグレツキの交3番がヒットした。
1998年から出たベートーベンの全集は、古楽器の奏法を用い、それまでの重厚かつ巨大なベートーベン像を180度変えて、衝撃を与えた。
🔵シャルル・デュトワ 1936.10.7. ~ スイス
無名だったモントリオール・フィルを有名にした。
フランス物や近代曲を得意とし、ラヴェルなどが良い。
平均点が高く、ハズレがない。
N響はデュトワを招いて立て直そうとしたが、団員は厳しい練習を嫌っていた。
マルタ・アルゲリッチと結婚(後に離婚) し、チョン・キョンファとも親密だった。
🔵ウラジーミル・アシュケナージ 1937.7.6. ~ ロシア
ソ連から亡命した。N響の常任指揮者に。
ショスタコーヴィチのものが良い。
🔵小澤征爾 1935.9.1. ~ 日本
玉木氏は評価せず。
🔵クリストフ・エッシェンバッハ 1940.2.20. ~ ドイツ
ピアニストでデビュー。
近年は指揮でも頑張っている。
🔵小林研一郎 1940.4.9. ~ 日本
チャイコフスキーの5番が名演。
朝比奈隆と正反対で、チャイコ、マーラー、ベルリオーズ、ストラヴィンスキーなどを得意とし、レパートリーは狭い。個性派。
🔵プラシド・ドミンゴ 1941.1.21. ~ スペイン
オペラ歌手として有名。
オペラを指揮したものは、まあまあの出来。
🔵エド・デ・ワールト 1941.6.1. ~ オランダ
1970年代に出たモーツァルトのハフナー・セレナード以外は大したものがなかった。
だが近年になりエクストン・レーベルから出しているものは皆良い。
🔵リッカルド・ムーティ 1941.7.28. ~ イタリア
スカラ座の帝王と呼ばれたが、あまりに厳格なためイタリア人(地元人)には評価されず。
緊迫感を重視し、冗長さを嫌い、華やかな演出(歌手の譜面にない節回し)を禁じた。
🔵エンリケ・バティス 1942.5.2. ~ メキシコ
明るく、ノリノリのスタイル。
レスピーギのローマ3部作(ナクソス)が良い。
ラテン・アメリカやスペイン音楽のシリーズはどれも良い。
🔵ダニエル・バレンボイム 1942.11.15. ~ アルゼンチン
ピアニストとしてデビューしたが指揮者に転向。
あまり評価されてないが仕事が多く、ユダヤ教徒のためユダヤ教徒のシンジケートにコネがあるらしい。
デューク・エリントンや南米音楽をやったものは良い。
🔵マリス・ヤンソンス 1943.1.14. ~ ラトヴィア
父のアルヴィドも指揮者。
名演はなし。
2004年にロイヤル・コンセルトヘボウの首席に。
🔵ジョン・エリオット・ガーディナー 1943.4.20. ~ イギリス
古楽器派だが、あまりおもしろくない。
古楽器によるロマン派音楽のためのオケ、ORRのものは良いのがある。
🔵ジェイムズ・レヴァイン 1943.6.23. ~ アメリカ
ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場の監督を13年した。
プッチーニの「トゥーランドット」(ゼッフィレッリの演出)は名演。
オペラ以外も指揮しているが、特に良いものは無い。
スコット・ジョップリンのラグタイム(ピアノ独奏をしている)は良い。
🔵マイケル・ティルソン・トーマス 1944.12.21. ~ アメリカ
作曲家で、ピアニスト。指揮では特に名演なし。
バーンスタインの「オン・ザ・タウン」は良い。
🔵ジュゼッペ・シノーポリ 1946.11.2. ~ 2001.4.20. イタリア
作曲家でもある。
イタリア・オペラは良い。
🔵ヴァレリー・アファナシエフ 1947.9.8. ~ ロシア
フルトヴェングラーやメンゲルベルクを尊敬する古典的ロマン派。
悲愴は良い。これからに期待。
🔵オスモ・ヴァンスカ 1953.2.28. ~ フィンランド
北欧ものは良くて、特にシベリウスが良い。
🔵ヴァレリー・アビサロヴィッチ・ゲルギエフ 1953.5.2.~ ロシア
解散の危機にあったマリンスキー劇場(旧名キーロフ劇場)の管弦楽団を育てあげて復活させた。
ストラヴィンスキーの火の島、春の祭典や、スクリャービンの交響曲第4番、ショスタコーヴィチの交響曲第4、7番などが名演。
ものすごく仕事をする人で、ライブは良い時と悪い時がある。天才肌の人。
🔵サイモン・ラトル 1955.1.19. ~ イングランド
カラヤン、バーンスタインの後、ブーレーズ・、アバド、 ムーティ、レヴァインが巨匠と呼ばれ、その後はラトルの時代になると言う人もいる。
だが名演はまだ無い。
古楽器・原典主義の演奏を現代オケに取り入れたのが、新しいと評価された。
1980年にバーミンガム市立響の常任になり、きたえ上げた。
2002年からはベルリン・フィルの常任に。
🔵ケント・ナガノ 1956.11.21. ~ アメリカ
これからが期待される人。
🔵クリスティアン・ティーレマン 1959.4.1. ~ ドイツ
レパートリーはドイツ、オーストリアものが中心で、古楽器風の軽快な解釈に背を向け、ドイツものを重厚にやっている。
平林氏が期待している。
🔵アントニオ・パッパーノ 1959.12.30. ~ イングランド
オペラを得意とし、次代を担うと考えられている。
🔵佐渡裕 1961.5.13. ~ 日本
バーンスタインの最後の愛弟子といわれた。
ラムルー管楽を復活させた。
ライブの評価が高い。
🔵マルク・ミンコフスキー 1962.10.4. ~ フランス
オッフェンバックのオペレッタ、ラモーのオペラなどが良い。
モーツァルトの交40、41番もいい。
玉木氏は天才と高評価。
🔵金聖響 1970.1.12. ~ 日本
在日コリアンで大阪育ち。
日本の若手の中で期待されている一人。
🔵ダニエル・ハーディング 1975.8.31. ~ イングランド
ラトルのアシスタントをし、1994年にデビューした。
さわやかで軽いスタイル。
🔵グスターボ・ドュダメル 1981.1.26. ~ ベネズエラ
ラトルが、もっとも驚くべき才能と評する。
🔵平林直哉のあとがき
カラヤンとバーンスタインの2大スター亡き後、クラシック界は低迷を続けていると言われている。
しかしムラヴィンスキー、チェリビダッケ、ヴァント、ザンデルリンク、カルロス・クライバーは人気があった。
つまり逸材の泉は即座に枯渇したわけではない。
低迷の原因はいくつか考えられるが、もっとも深刻なのは有名オケが無能な人物を主席指揮者にしたことだ。
ハイティンク(ロイヤル・コンセントヘボウ)、アバド(ベルリン・フィル) バレンボイム(シカゴ) 、マズア(ニューヨーク・フィル)、サヴァリッシュ(フィラデルフィア)、ドホナーニ(クリーブランド)、ブロムシュテット(サンフランシスコ)などである。
これらの指揮者の録音は、後世に残るものは皆無である。
レコード制作の現場も堕落している。
オーケストラは大所帯で金がかかるため、近年は録音のみのセッションは珍しくなり、リハーサルから演奏会までずっと録音して、良い所をつぎはぎして完成させる。
そのため修正が入り、音質が悪い。
評論家たちも本当はひどいと思っているのに、表向きは賞賛している。
フルトヴェングラーらの時代は黄金時代と呼ばれるが、彼らのようなタイプは第二次大戦中の独裁者を連想させるとの理由で敬遠されるようになった。
また、個性の強い演奏は作品本来の持ち味が失われているとの考えが主流になり、客観的で無味乾燥なスタイルが増えた。
🔵玉木正之の愛聴盤ベスト8
ラトル バーンスタイン「オン・ザ・タウン」 EMI
クナッパーツブッシュ ヨハン・シュトラウス「南国のバラ」 セブンシーズ
カラヤン ドニゼッティ「ランメルムーアのルチア」 EMI
ゲルギエフ ストラヴィンスキー「春の祭典」 フィリップス
ミンコフスキ オッフェンバック「天国と地獄」 EMI
セラフィン ヴェルディ「序曲集」 EMI
バーンスタイン マーラー交9番 ドイツ・グラモフォン
カルロス・クライバー R・シュトラウス「ばらの騎士」 ドイツ・グラモフォン
🔵平林直哉の愛聴盤ベスト8
ザンデンリンク 「ラスト・コンサート」 ハルモニア・ムンディ
ワールト R.シュトラウス「ツァラトゥストラは~」 エクストン
フルトヴェングラー ベートーベン交9番 1951年バイロイト
ベルグルンド ショスタコーヴィチ交8番 ペンタートン
マタチッチ レハール「メリー・ウィドウ」 EMI
クレンペラー ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」 テスタメント
ムラヴィンスキー ベートーベン交4番 アルトゥス
ワルター モーツァルト交40番 ソニー
(2024年11月22日~12月14日に作成)