(以下は『音楽の正体』渡辺健一著から抜粋
2010年8月6日にノートにとり勉強したものを転載)
○ソナタ形式
ソナタ形式は、クラシック音楽において代表的な形式の1つ。
提示部、展開部、再現部の3つに分かれている。
(※この本では「起承転結」との比較のために、提示部を二つに分けている)
①提示部その1
第一主題で、最初のメロディである。
クラシックをつまらないと言う人は、大抵これを唯一のメロディとして聴いてしまうため、これ以後はオマケになり眠くなってしまう。 (※この指摘、すごく当たっていると思う)
この部分は、ミュージカルならば舞台設定が説明され、主人公が出てくる所。
「ああ、この人が主人公なのね」で眠ってしまっては、元も子もない。
②提示部その2
第二主題で、ミュージカルで言えばヒロインやそれと出会う主人公が出てくる所。
ここでは、ヒロインと主人公の対立がストーリーの軸になる。
対立をどう結着させるかが見物。
③展開部
①と②が入り乱れて葛藤する部分。
メロディを小さな断片にして、くっつけたり離したり、引き伸ばしたりする。
ミュージカルで言えば、アクションや駆け引き、ドンデン返しの連続といった所。
④再現部
①と②と同じ調で演奏され、対立は解消される。
高らかに融和した喜びを歌う。ハッピーエンド。
ソナタ形式は、主人公とヒロインをしっかり覚え、どうケンカするのかや、人生の葛藤に一喜一憂しなければ、面白さは半減である。
その上で俳優の演技を観賞するように、演奏者の腕前を堪能する。
この形式は、文章作りの基本である「起承転結」 とソックリ同じだ。
○変奏曲
変奏曲とは、同じことを繰り返しつつ、徐々に変化を加えていく形式だ。
メロディに修飾をつける、和音をかえる、リズミックにする、などのバリエーションを付けていくことを指す。
これは繰り返しの単調さを避けるためよりも、むしろ小さな差異を愛でることに喜びを見い出すもの。
クラシック音楽では、ソナタ形式、ロンド形式と並んで多用される。
ジャズも変奏曲と言えて、アドリブの入るジャズはほぼこの形式である。
ジャズのアドリブに影響を受けたロックのアドリブも、この形式である。
「理屈抜きでこのメロディにひたっていたい!」となると、どうしても変奏曲になる。
(※ジャズに対してこの解釈をした事はなかったが、かなり的を得ていると感じた。
実際にはジャズの場合、メロディよりもコード進行がアドリブ時に重視される感がある。
アドリブについては、メロディ重視かコード重視かは、演奏者によって、その場の雰囲気によって違ってくる。)
ソナタ形式やロンド形式は理知的で、自然な流れをわざと断ち切って意外性を狙う。
また構成美の妙を見せつける。
これに対し変奏曲は、もっと原始的である。
心から酔えるメロディを何度も弾いて陶酔したい。だが完全に同じだと苦痛になるのでチョット飾りをつける。後でまた元に戻る。といったスタイルだ。
変奏すること、それは人間にとって非常にプリミティブな歓びだ。
だから「人生の讃歌」が主題の曲にハマる。
ベートーベンは交響曲第9番の最終楽章に、この形式を選んだ。
だから第9の合唱はジャズなのだ!
クラシックにアレルギーのある人が、なぜ第9には感動できるのか?
それは最も原初的な変奏曲だからなのだ。
(2024年10月1&9日に作成)