(『音楽用語事典』リットーミュージック刊行から抜粋
2009年10月29日、2010年6月18日にノートにとり勉強)
🔵インピーダンス
音声信号などの交流電流に対して抵抗として働く、様々な要素の総称。
コンデンサーは直流に対しては無限大の抵抗となるが、交流に対しては周波数が高くなるほど抵抗値は小さくなる。(小さい抵抗として働く)
コイルは直流に対しては抵抗値はゼロだが、交流にとっては周波数に比例した抵抗となる。
コンデンサーとコイルの交流に対する抵抗を、リアクタンスと呼ぶ。
実用機器においてインピーダンスとは、直流についての抵抗(純抵抗)とリアクタンスが合成されたものになる。
単位は抵抗と同じΩ(オーム)で、略記号はZ。
スピーカーの(入力)インピーダンスが8Ωの場合、入力される音声信号に対しての値である。
従って直流用のテスターで測定しても8Ωになるとは限らない。
これはアンプなどにも同じ事がいえる。
🔵機器の入出力インピーダンスについて
出力インピーダンスとは、信号発生源から出力端子までの間に存在する全てのインピーダンスの合成値のことである。 (ICやトランジスタの抵抗も含まれる)
入力インピーダンスとは、入力信号が加わったときに、機器の内部に流れ込む電流に対するインピーダンスの合成値である。
これらはテスターでは測れず、カタログなどで確認しないと分からない。
🔵インピーダンス・マッチングについて
一昔前までは、出力と入力のインピーダンスを同じにする方法がとられていた。
信号を「電力」として伝送するには最良の方法で、多くの機器が入出力インピーダンスを600Ωに統一していた。
だが、現在では信号を「電圧」と見るのが主流で、インピーダンス・マッチングはあまり行われていない。
現在は、出力インピーダンスを低くし、入力インピーダンスを数倍高くする、「ロー出し、ハイ受け」が一般的である。
電圧だけならこれで十分に伝送可能だ。
🔵入力インピーダンス
装置や回路に信号が加わったとき、信号をアースに流す抵抗分の総計である。
理想のアンプ回路では、入力インピーダンスは無限大、つまり信号はアースに全く流れ込まない。
だが実際の回路ではあり得ず、必ず流れ込んでしまう。
この流れ込む抵抗分を総合して、1本の抵抗とみなしたものが、入力インピーダンスである。
🔵出力インピーダンス
機器や回路は信号を出すものである。
出力だけに注目すれば、一種の発電機と考えられる。
出力インピーダンスとは、発電機の出力に直列につながった抵抗分といえる。
発電機内部の様々な要素がこれにあたり、その合成されたものを1本の抵抗と考える。
具体的には、出力素子自体の抵抗成分と、出力端子までのコンデンサー、コイルなどの抵抗成分をトータルしたものが、出力インピーダンスとなる。
つまり、出力信号が発生してから出力端子に着くまでに受ける抵抗の総計である。
注意したいのは、信号は交流のため、コンデンサー、コイルも関わってくる。
そしてコンデンサー、コイルの抵抗成分(リアクタンス)は、信号の周波数によって変わる。
このためアンプなどの出力インピーダンスは、周波数にも左右される。
ただし実用上はそこまで考慮せず、1kHzなど特定の値を検討の対象にしていることが多い。
出力インピーダンスは、次につながる機器の入力インピーダンスとの関係でとらえられる。
伝送される信号電圧は、出力インピーダンスと入力インピーダンスの分圧比で決まる。 入力インピーダンスが低いと、信号電圧は低下してしまう。
このため「ロー出し、ハイ受け」が多く採用されている。
これは電圧の伝送を中心にした考え方である。
他方で、ひと昔前までは電力伝送の考えが主であったため、出力と入力を同じ値にする「インピーダンス・マッチング」 が採用されていた。
出力と入力が同じ値の時に、伝送電力は最大になる。
これは電力の伝送を中心にした考え方である。
🔵内部インピーダンス
出力インピーダンス、入力インピーダンスの総称であるが、特に出力インピーダンスを指すことが多い。
「内部抵抗」は、内部インピーダンスと同義だ。
インピーダンスは等価的に抵抗と見なせるため、このようにも呼ばれる。
🔵ロー・インピーダンス
インピーダンスが低いこと。
出力、入力インピーダンスが低いこと、およびそれらをつなぐラインを指す。
また、600Ω以下の出力をこう呼ぶことがある。
🔵ハイ・インピーダンス
入出力インピーダンスが高いこと。
そのような機材、回路、およびラインを指す。
オーディオ分野では、10kΩ以上を指すことが多い。
🔵インピーダンス・マッチング
マッチングは、日本語では整合と言う。
インピーダンス・マッチングとは、機材をつなぐ時に、双方の入出力インピーダンスや信号レベルを同一に合わせること。
音響分野では、放送用は600Ωで規定されていて、マッチングが常識であった。
しかし現在は「ロー出し、ハイ受け」が主流である。当然これはミス・マッチングである。
機材によってはミス・マッチングでしか使えないものもある。
例えば出力インピーダンス=100Ω以下、負荷インピーダンス=10k以上の機材など)
ミス・マッチングは決して悪いこととは限らない。
ただし、信号レベルについては、どんな場合でもマッチングさせなければいけない。
入力信号が大きすぎると歪みが出じる。
反対に小さすぎるとS/N比の悪化につながる。
🔵マッチング・トランス
主にインピーダンス・マッチングを行うために使うトランスをいう。
出力インピーダンスと出力レベルが共に小さいMCカートリッジや真空管式のパワーアンプの出力段に使われる。
🔵Ω(オーム)
電流の流れにくさの単位。
抵抗やインピーダンスなど、電流の流れを阻止する要素の単位に使われる。
オームの法則とは、電流を流そうとする力=電圧(VまたはE)と、流すまいとする要素 =抵抗(R)、そこに流れる電流(I)の関係を示したものである。
V=IRがポピュラーだが、その変形式のI=R分のVで理解した方が簡単だろう。
なおI=R分のVは、電圧が強くなれば電流は増加し、抵抗が大きくなれば電流は減少する、ことを表している。
これは全ての電気回路の基礎である。
(2025年6月4日に作成)