用語解説

〇 GHQ関係

GHQ

連合国軍総司令部の略。
連合国軍となっているが、実際には米軍である。

GHQの参謀部

第1部(G1)から第4部(G4)まで分かれている。

主な機能は、G1は企画・人事・庶務。G2は諜報・保安・検閲。
G3は作戦・引き揚げ・命令実施。G4は予算・調達・武装解除。

G2

GHQ参謀部の第2部。
下部にCISとCICを抱え、占領中に数々の秘密作戦や謀略を行った。

CIS

対敵情報部のこと。防諜部ともいう。

ソープ代将がトップで、占領開始時には日本共産党の幹部ら政治犯を釈放した。
ソープは後に、G2のウィロビーによって追放された。

陸軍省の命令で活動するスパイ組織で、日本全国に下部のスパイ網(CIC)を設置した。

CIC

GHQの防諜部隊。G2の監督下に置かれた。
日本の特高警察などを吸収し、諜報活動や謀略を行った。

CISの下部組織で、日本全国に拠点を設置していた。

GS

民政局の略。GHQ幕僚部に属する。
日本の民主化政策を担当し、公職追放も主導した。

CTS

GHQの民間鉄道管理局のこと。

ESS

経済科学局のこと。
財閥解体を主導した。

CIE

民間情報教育局のこと。
ラジオ放送や映画などを担当。

NRS

天然資源局のこと。農業担当で農地解放を行った。

JSOB

合同特殊工作委員会(または総合特殊作戦本部)の略。

GHQの中に設置され、CIAの代表者も参加した。
日本における秘密工作の中心となった。

組織の長はレイシー大佐で、G2のウィロビーが任命した。

この中にジャック・キャノン中佐を長とするZ機関(キャノン機関)が置かれた。

CIA

中央情報局の略で、アメリカ政府につくられた諜報と謀略を行う機関。
1947年に日本に支局を設置し、以後は日本でも活動。

初代の東京支局長はポール・ブルーム、2代目はハーベイ・オバレシュ。

DRS

記録調査局のこと。
CIAが日本に来た時に郵船ビルの4階に設置され、G2・CICから有能な部分を引き抜いたという。

LS

リーガル・セクションと呼ばれた法律局のこと。
GHQの1部局。

PHW

GHQの公衆衛生課のこと。

この課は旧日本軍の細菌兵器技術を入手するため、731部隊や神奈川県稲田登戸にあった第9技術研究所のメンバーを雇用したという。

キャノン機関(Z機関)

この機関は、秘密工作・謀略の実行部隊の1つ。
G2の下で活動し、麻薬密輸・麻薬密売も行った。

ジャック・キャノンが機関長で、ヒロシ大西・大尉、ビクター松井・准尉、ロイ・グラスゴ准尉など、25名ほどの機関幹部がいた。

いくつもの下部組織を抱えたが、主なものは「柿ノ木坂機関」「矢板機関」「横浜機関」「日高機関」「伊藤機関」「海安商会」であった。

東京の本郷ハウス

キャノン機関の本拠地。
湯島にある岩崎別邸を徴発したもので、数々の秘密工作(捕虜の尋問と拷問や洗脳など)が行われた。

川崎・新丸子の東川クラブ

キャノン機関の拠点の1つ。

東川クラブの責任者は、ハワイ生まれの日系二世のマサシ橋本・准尉。その下にウィリアム光田・軍曹がいた。

東川クラブの管理役・支配人として、ロイ尾崎が雇われていた。

神奈川県茅ヶ崎のC31ハウス

茅ヶ崎郊外にあるキャノン機関の拠点の1つ。

この豪邸は、かつて中島飛行機の財閥が所有し、中島知久平・元軍需相の妾宅だったという。

目黒・代官山のUSハウス740号

代官山駅の近くにあるキャノン機関の拠点の1つ。東急社長だった五島慶太の所有する建物を徴発したもの。

ここはキャノン機関だけではなく、JSOBに関連した特殊工作機関の長であるスティックレン大佐に所属する、伊藤准尉とデービス中尉も働いていた。

代官山ハウス

渋谷区猿楽小学校の近くにあるキャノン機関の拠点の1つ。

沢田ハウス

東京・麹町にあり、「キャノン機関」が置かれた本郷の岩崎ハウス(旧岩崎別邸)と並ぶ、G2の情報拠点だった。

〇 GHQの人物

ダグラス・マッカーサー元帥  GHQのトップ。

チャールズ・ウィロビー少将  G2のトップ。

ルーファス・ブラットン大佐  G2のナンバー2。

ガルシェン大佐  CICの東京地区のトップ。

ガルシェ大佐として、CIAの東京支部代表として来日した人物は同一人物だろう。
フィリピンのCIA拠点から派遣されて、1952年に日本に来た。

コートニー・ホイットニー少将  GSのトップ。

チャールズ・ケーディス  GSの次長で、民主化政策を主導した。

クレーマー大佐  ESSの初代トップ。

ウィリアム・マーカット准将  ESSのトップ。

カーネル・ヤング大佐

ESSに所属し、日銀金庫の管理を担当した。日銀にあったダイヤを盗んだため逮捕された。

ウェルシェ   ESSのアンチ・トラスト・カルテル課の課長

エドワード・マレー大佐

日銀で接収した貴金属やダイヤの管理官だったが、ダイヤを盗みアメリカ本国に密輸して逮捕された。

盗んだのは10万カラットともいわれるが、アメリカはほとんどを日本に返還しなかった。

ジャック・キャノン中佐

キャノン機関の長である。
キャノン機関は、特務機関として設置され、諜報・秘密工作・謀略を行った。

ビクター松井・准尉

キャノン機関で働いた日系二世のアメリカ人で、ジャック・キャノンの右腕として活動。
後にCIA工作員となり、シアヌーク暗殺計画に関与した。
ベック松井とも松井正雄ともいわれた。

韓道峰

キャノン機関で働き、ジャック・キャノンの秘書的存在だった。
日本名は村井恵。

ウィリアム光田

キャノン機関で働いた日系二世で、中島辰次郎の証言によると松川事件の実行犯の1人。

ロイ・グラスゴ准尉

キャノン機関で働き、鹿地亘の拉致ではジャック・キャノンと共に実行犯となった。

山田善二郎

キャノン中佐の下でコックをしていた人物。
鹿地亘の監禁事件では目撃者と証人になった。

エイブラハム少佐

千葉CICの隊長だったが、横浜CIC隊長に転じた。
ジャック・キャノンと共に働いたりしていた。

ポール・ラッシュ中佐

CISで働き、戦犯や戦争責任者の公職追放に関する情報を収集した。

情報収集の拠点にしたのは東京・麹町の「沢田ハウス」で、ここは「キャノン機関」が置かれた本郷の岩崎ハウス(旧岩崎別邸)と並ぶ、G2の情報拠点だった。

〇 その他の用語

NSC

国家安全保障会議の略。

アメリカ政府高官が集まった機関で、大統領らがここで議論し、主に外交政策(謀略を含む)を決定してきた。

OCB

工作調整委員会の略。

NSCが立てた方針に基づき、CIAによる秘密工作を検討する合議組織。
国務省と国防総省の次官級と、CIA長官で構成される。

スービック米海軍基地、クラーク米空軍基地

フィリピンにある米軍拠点。

JCS  米政府の統合参謀本部のこと。

SCAP  連合国軍最高司令官のこと。

SWNCC

アメリカ政府に設けられた、国務省・陸軍省・海軍省の政策調整委員会。
日本における占領政策を立案した機関である。

終戦連絡事務局

日本政府内に設けられた、GHQとやり取りするための事務局。
ここがGHQから指令を受けて、それを日本政府に伝えた。

ACJ

アメリカ対日協議会のこと。
ニューズウィーク誌のハリー・カーンらが中心となり、白洲次郎や佐藤栄作が参加した。
GSの民主化路線を潰すのを目指した。

(2019年6月17日に作成開始)


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