マイクロチップの勉強②
日立のミューチップ、ICタグ、RFID
(2022.1.30~31.)

前回の日記(マイクロチップの勉強①)に続けて、マイクロチップを取り上げます。

マイクロチップの1つであるミューチップをネットで検索したところ、開発した日立の担当者が講演をしていて、それが文章にまとめられてました。

読んでみたところ、非常に興味深い内容です。

その内容は、前回の日記で紹介したムーの記事と、ほとんどが合致しています。

そこで今回は、この講演を取り上げる事にし、抜粋して紹介します。

2005年2月の講演なので、今から17年前のものです。
当然ながら、今は技術がさらに進んでいるはずです。

なお、前回の日記を読んでからの方が、今記事を理解しやすいと思います。

〇 財団法人 社会経済生産性本部 情報化推進国民会議 平成17年(2005年)2月22日の講演
井村亮(日立のミュー・ソリューション事業部長)の講演
「ミューチップの拓く新しいビジネス」から抜粋

米国のウォールマート社は2005年1月から、サプライチェーンでのICタグの導入を、上位100社のベンダー(商品の供給先、主に販売者を指す)に義務づけた。

ICタグは、「電子荷札」とも呼ばれる。

なおウォールマート社は、上位100社のベンダーにICタグを義務づけたが、その費用を一銭も払うつもりがない。

最近のICタグの採用は、今から43年前に発明されたバーコードの番号が足りなくなっている事が背景にある。

さらにバーコードは、ロット管理には便利だが、商品を1個ずつ管理することは出来ない。
(※ICタグならば1個ずつに荷札をつけて管理できる)

ICタグは1980年代後半に発明され、1990年代には実用化が始まった。

実用化すると、無線で個体を識別する技術「Radio Frequercy Identitication(RFID)」が必要になってきた。

ウォールマート社にすると、無線技術を使えば、発送されてくる商品(のIDタグ)をダンボールの外から(スキャナー)で読み取り、箱を開けることなく検品して製造日などを知ることが出来る。

ウォールマート社の昨年の売上は24兆円だった(ちなみにトヨタは16兆円だった)が、そのうち賞味期限切れや、搬送中の盗難、万引きなどの損失が3兆円に達するそうだ。

ICタグの導入で、損失を減らすのを期待している。

現状だと、ICタグの導入にかかる費用は数十~数百億円だ。

ウォールマート社は、「1個が5セント以下のICタグが欲しい」と言っているが、それは2~3年で実現できるだろう。

現に日立のICタグは、すでに10円台になっている。

他方では、ICタグの導入で失敗した例もある。

ベネトンやGAPというアパレル・メーカーが、昨年(2004年)にニューヨークで個人向けの服にICタグを付けて管理したが、プライバシーの保護団体から叩かれた。

(※ICタグは極小のマイクロチップもあるので、購入者が気付かずにそのまま着てしまうからである)

とはいえ日立の予想では、悪くいっても2010年にはICタグは全世界で7~10兆円の市場規模になる。

日立の開発した「ミューチップ」は、今から6年間(1999年)に日本銀行の幹部OBと日立の中央研究所の談話会から生まれた。

その時、(日銀の幹部OBから)「紙(紙幣)の中にICを漉き込みたい」と言われた。

それで、ウチ(日立)の宇佐美光雄という研究者が、6年前に開発を始めた。

2001年1月1日に使用が始まった100ユーロ紙幣は、偽造紙幣がその2日後の1月3日に見つかった。

進化する印刷技術による偽造を防ぐには、5~10年で紙幣を新しくし、最新技術を導入する必要があるそうだ。

100ユーロ紙幣には、紙と紙の間に「スレッド」というアルミの蒸着膜が入っていて、製造原価が1枚で147円するから、ICタグ(ミューチップ)が5セント以下になれば十分にペイする。

「ミューチップ」は、紙幣の偽造防止を目的に開発したので、非常に小さくした。

このチップは、0.4ミリ角で、指紋と指紋の間に見えるほどだ。

これは、8インチのシリコンウエハーから、なんと20万個も取れる。

開発者の宇佐美光雄は、開発にあたり紙の中に入れて折り曲げても壊れない0.5ミリ以下のサイズにしようと考えた。

さらにコストを下げるため、1枚のウエハーから10万枚以上が取れるようにし、最後にどれだけの機能を(そのマイクロチップに)入れるかを考えた。

「ミューチップ」は、アルミホイルのアンテナに接続されていて、最大で30cm離れた所からでも情報が読める。

ちなみに電車のICカードの定期券は、無線が飛びすぎると後ろの人の定期券も読み取ってしまうので、わざと読み取り距離を短くしている。

「ミューチップ」には、128ビットの改ざんが不可能なデータが入れられている。
つまりデータの読み出し専用だ。
これは、紙幣に使うことが前提だったからだ。

128ビットなので、10進数で38ケタの番号が入っていて、我々はそれをID番号と呼んでいる。

ICタグは、1980年代の後半に、オランダのフィリップス社が開発した。

そして1980年代に狂牛病の発生を受けて、(1頭1頭を管理・選別するために)イギリスで牛の耳にマイクロチップ(ICタグ)が埋め込まれた。

この牛の耳用のマイクロチップは、日本には8年前(1997年)に上陸した。

マイクロチップは、自動車の盗難防止器(イモビライザー)にも使われている。

しかし牛の耳に入っているのは1個で1800円、盗難防止器は1個で500~800円する。

ミューチップは、こういった市場も狙っている。

「インレット」は、樹脂フィルムなどの上に金属箔をつくり、そこにICチップを搭載するもので、「アンテナ付きのICチップ」である。

(※これはRFIDインレイ、RFIDインレットとも言う)

これは、金属箔がアンテナになるのだ。

インレットを、ラベルのように商品にぺたっと貼れば、タグになる。

この商品を、日立と三菱の合弁会社であるルネサンス・テクノロジーに生産委託している。

月産100万個のオーダーで注文してくれれば、1個で十数円の値段になる。

これが、愛知万博の入場券に入っている。

このID番号付きのICタグは、読み取りを無線で出来るので、箱を開けなくても中身が見えるし、何よりも重要なのはコンピュータで商品の1つ1つの情報を管理できる。

日立の中では、「アンテナは邪魔だ」という意見もある。

実はミューチップの発明者の宇佐美光雄は、アンテナを0.4ミリ角のチップの中に作り込んでしまう考えを持っている。

(チップの中にアンテナを入れると)残念ながら現段階では、1~2ミリしか無線通信が飛ばないが、紙幣ならばそれで十分である。

逆に無線が飛びすぎると、財布の中身が遠くからでも分かってしまう。

ミューチップを紙に漉き込む技術の実用化として、文書、パスポート、税関の申告用紙、鑑定書に使おうと、「Secure Paper」というものの開発を、ある製紙メーカーと組んで行っている。

ミューチップは、2005年3月25日に始まる愛・地球博(愛知万博)の入場券で使用するため、累計で2500万枚ぐらいを協会に納品する予定だ。

ミューチップを使うことで、偽造を防止し、パビリオンの予約が家のパソコンから出来るだろう。

実は日立は、ある国家の身分証明書(IDカード)にミューチップを使うことも提案している。

これはパスポートと同様に、カード番号とデータベースを照合させるものだ。

今アメリカは、指紋と顔写真で照合をやっているが、時間がかかるので世界に普及するシステムではない。

新日鉄の君津製鉄所は、原板鋼板にICタグをつけて、出荷・加工・在庫明細などを一括管理するのを検討している。

1枚の鋼板を100枚ぐらいに切り刻んでいるが、ICタグなら全てを管理できる。

ICタグでの医薬品の管理は、米国政府のFDA(食品医薬品局)が始めている。

日本でも2005年春から、血液など来歴の管理をしなければならないものにIDタグを付けようとしており、実証実験が始まっている。

ミューチップとブランド・メーカーの提携は、賞味期限の管理に向けて行っている。

フランスの某メーカーは、高級化粧品の蓋にミューチップを付ける検討をしている。

また、パソコンのマザーボードの海賊版が出回るため、台湾のメーカーがマザーボード上にICタグを付けて、工場から家庭まで一貫管理しようとしている。

家庭で故障したら、メーカーの修理屋はID番号から本社のデータベースにアクセスして設計図や回路特性を見て、出先で修理できるわけだ。

現在の家電商品は、調達した部品を組み立てて作るのが普通だが、故障した時や使い終えて捨てる時に、ICタグを付けておくと便利なのではないか。

デトロイトの自動車業界はもう動き出していて、タイヤやエンジン周りにICタグを埋め込んでおいて、リコールになった時はガソリンスタンドや高速道路の料金所でIDタグを読み取って、リコールだと伝えるのを考えている。

日本では2004年から経済産業省の指導の下で、「HIBIKIプロジェクト」が始まった。

これは低価格の無線ICタグを2年で開発しようというもので、日立がプロジェクト・リーダーに指名された。

目標は、ISO準拠のICタグを5セントの価格にすることだ。
通信周波数帯はUHF帯の900MHzで、書き換え可能型で、読み取り距離は3mを目標にしている。

(※HIBIKIプロジェクト(響プロジェクト)をネットで検索したところ、2006年7月に目標を達成し実用化に目処をつけたとの事である。

このプロジェクトは、月産1億個で価格は5円の目標で開発し、日立が中心となって、大日本印刷、凸版印刷、NEC、富士通と協力して開発が進められた。)

今、ISOで規程しているICタグの周波数は、135KHz、13.56MHz、860~960MHz、2.45GHzの4つのバンドがある。

またICタグには、書き換えできるタイプと、読み出し専用のタイプがある。

まず、動物や自動車に埋め込まれている低周波のものは、「Texas Instruments社」のTIRISがある。

13.56MHzには、フィリップス社のI-codeや、ソニー社のFelicaがある。

2.45GHzには、日立のミューチップがある。

そして860~960MHz(UHF帯)には、HIBIKIプロジェクトや、ウォールマート社の選んだEPCがある。

(※EPCは、Electronic Product Codeの略である。これはバーコードの後継として作成されたコード体系である。

ウォールマート社はEPCとRFIDについて、商品の購入後にICタグを取り外すかどうかを購入した者が決定できる点などを挙げて、プライバシー侵害にならないと主張している。)

実はUHF帯は、電波の性質から、長距離で飛ばすことが期待できる。

そしてデータの読み取り器(スキャナー)は、LSI化して複数の周波数帯を読み取れるようにする話も出ている。

ちなみに13.56MHzやUHF帯を使うと、電磁結合の関係から、アンテナがぐるぐる巻きの蚊取り線香の形になり、タグはカード大のサイズになってしまう。

一方で、2.45GHzだと、ミューチップのように極小にできる。

読み取り距離を長くとりたい場合は、UHF帯が良い。

ICタグは、商品に付いた時はプライバシー侵害の問題が生じる。

だから、「この商品にはICタグが付いている。嫌なら外して下さい」とのインフォームド・コンセント(情報を伝えた上での合意)が必要である。

ミューチップは、4年前(2001年)に日立の社内ベンチャーとして、資本金10億円で5人でスタートした事業である。

その後、2004年1月1日付で日立の事業部の1つとなった。

ミューチップは、私(井村亮)と浅井彰次郎が社内ベンチャーとして推進してきた。

私はスタートする時、日立が持っているミューチップの特許350件を委託してくれと会議で頼んだ。

スタートすると、社内のどの部署に行っても、「前例がない」と言って、たらい回しに遭った。
正に「抵抗勢力は身内にあり」だった。

ミューチップは、グローバルに事業のパートナーを求めるべきだが、日立はグローバル展開が遅れて知名度がなく、営業に行くと極東の田舎者としか見られなかった。

〇村本のコメント

上記の、ミューチップ事業部の代表者の話は、日本の紙幣にマイクロチップが採用されたかは言及していません。

しかし、紙幣にマイクロチップを漉き込む目的でミューチップの開発がスタートした事を考えると、現在流通している紙幣には漉き込まれている可能性が高いと思います。

ドル紙幣でもマイクロチップが入っているという説があるようで、電子レンジでドル紙幣を熱するとマイクロチップが焼けて破壊されるとの記事がネットにありました。

私は試す気はありませんが、色々と検証のため試す方がいるようですね。


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