CRISPR-Cas9の解説
(2022.4.12~13.)

今年1月の日記では、『CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)』という遺伝情報(DNA)を改変する技術を取り上げました。

科学雑誌「Newton」を見たら、この技術を特集しており、詳しく解説してました。

この新技術は、日本ではあまり注目されてませんが、その危険性も含めて多くの人が知っておいたほうがいいです。

というわけで、同記事の抜粋を書き、皆さんとシェアしようと思います。

〇 CRISPR-Cas9の解説 Newton2021年11月号から抜粋

「ゲノム」とは、個体が持つ全ての遺伝情報のことで、「生命の設計図」ともいえる。

ゲノムを書き換える技術を、「ゲノム編集」と言う。

そして最新のゲノム編集技術が、『CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)』である。

ゲノムは、DNA(デオキシリボ核酸)に書き込まれているが、4種の「塩基」が並んで情報を構築している。

A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という4種の文字(塩基)が並んだ鎖状のものが、遺伝情報なのである。

2020年のノーベル化学賞は、アメリカ人のジェニファー・ダウドナとフランス人のエマニュエル・シャルパンティエが受賞した。

これは、CRISPR-Cas9の開発を評価したものだ。

ダウドナとシャルパンティエは、細菌の免疫システムを研究する中で、『細菌がウイルスのDNA配列を認識して、切断すること』を発見した。

これの応用でCRISPR-Cas9を開発した。

CRISPR-Cas9は、2012年に論文が発表されて以降、数年のうちに世界中の研究者が使うようになった。

安全性や倫理面は、置き去りである。

人の受精卵のゲノム編集も行われ、それで生まれた赤ちゃんを「デザイナー・ベビー」と言うが、2018年に中国の賀建奎が行って双子を誕生させた。

これに対し多くの批判がなされ、賀建奎は翌年に違法行為をしたとして懲役3年の実刑判決を受けた。

ゲノムが変化することを、「変異」と言う。

変異は、DNAの複製ミスや紫外線による損傷などで絶えず起きている。

変異が蓄積していくと、遺伝子が働かなくなったり、機能が変化したりして、別の性質を持つ個体が生まれるようになる。

農業における品種改良は、変異で実が大きくなったり味が良くなったものを選んで掛け合わせたものだ。

品種改良(ゲノムの変異)を効率的に行うため、種子などに放射線(ガンマ線)を照射して、人工的に変異を起こす事も行われている。

このやり方で開発されたものに、梨の「ゴールド20世紀」がある。

ゲノム編集は、『狙った場所の遺伝情報を書き換えて、変異させる技術』といえる。

はさみの役割をする分子を使って、ゲノムの狙った所を切り、そこをいじるのである。

つまり「ゲノム編集」とは、狙った所の遺伝子(遺伝情報)を書き換える技術である。

「CRISPR-Cas9」は、まずDNAの文字列を検索して、狙っている場所(書き換えたい所)を探し出す。

そのために使うのが、「ガイドRNA」だ。

RNA(リボ核酸)とは、DNAと同様に4種の文字(塩基)が並んだ物質で、自らと対になる配列のDNAに結合する性質がある。

RNAは人間が自由に設計できるので、目的に合うガイドRNAを作って、それをDNAに結合させることで、狙っている場所を見つけるのである。

ガイドRNAは、末端の20文字をDNAに結合させる。

同じ20文字の配列がDNAにある確率は、計算上は1兆文字あたりに1ヵ所しかない。

人のゲノムは約31億文字なので、ガイドRNAは目的の場所にほぼ正確に結合する。

結合したら、今度は「Cas9」というタンパク質でDNAを切断する。
「Cas9」は、はさみの役割をする。

要するに、ガイドRNAとCas9の複合体を投入して、DNAの狙った所に結合させて切断するのだ。

CRISPR-Cas9の技術は、ガイドRNAの文字列を変えるだけで、ゲノムのあらゆる所を簡単に書き換えられる。

その簡便さゆえに、瞬く間に世界中の研究室で使われるようになった。

DNAを切断すると、DNAは修復機能を発揮する。

そして本来は、元通りに繋げ直す。

DNAは二重鎖の構造だが、二本鎖の両方を切断すると、修復が難しくなる。
この場合は、修復には「非相同末端結合」と「相同組換え修復」が行われる。

「非相同末端結合」は、切断された末端どうしを繋ぎ直すものだが、ミスが起きて文字が増減(変異)しやすい。

そしてたった1文字の増減でも、遺伝子の機能を失ったり、機能が変わることがある。

だから作物や動物の品種改良に使われている。

「相同組換え修復」は、近くにある似たDNA配列を見本にして修復することだ。

DNAがこの修復をする時に、挿入したいDNAを近くに置いておけば、その遺伝子の挿入ができる。

ガイドRNAとCas9を細胞に投入する時、挿入したいDNAも一緒に投入すれば、Cas9がDNAを切断した後に、外来のその遺伝子を挿入できる。

こうして狙った場所に、入れたい遺伝情報を挿入するのである。

CRISPR-Cas9を使って、筑波大学の江面浩・教授らはトマトのゲノム編集をした。

トマトには「GABA」というアミノ酸をつくる遺伝子があり、GABAは人の血圧上昇を抑えたりするという。
トマトは普段はGABAを作らないようにしていて、ストレスがかかるとGABAを作り出す。

江面浩らは、ゲノム編集でGABAを5倍も含むトマトを生み出した。

このトマトは、日本政府がゲノム編集食品として初めて認可し、2021年の冬から販売される予定である。

他にも、ソラニンという人体には毒となる成分を少なくしたジャガイモや、アレルギー反応を起こさない卵の開発も、CRISPR-Cas9を使って進められている。

京都大学の木下政人・准教授と、近畿大学の家戸敬太郎・教授らは、CRISPR-Cas9を使って肉厚なマダイを作り出した。

筋肉の増加や成長を抑える遺伝子「ミオスタチン」をゲノム編集で失わせて、筋肉を増やしたのだ。

木下政人らは、短期間で成長するトラフグも作り出した。
食欲を抑える遺伝子をCRISPR-Cas9で無くした結果である。

(※ミオスタチンを失わせたマダイの写真を見ると、異常な体つきをしており、長生きできそうにない。これが自然界で生きていけるとは思えない。)

ゲノム編集をした食品のうち、外来の遺伝子を挿入したものは、遺伝子組換えの作物と同様に、「カルタヘナ法」で規制される。

こうした食品の遺伝子が自然界に放たれれば、何が起きるか分からない。

だから遺伝子組換え生物の国際ルール「カルタヘナ議定書」が成立し、それを元に日本の国会は「カルタヘナ法」をつくった。

カルタヘナ法により、栽培や流通で生態系に悪影響が出ないことを証明し、事前に農水省と環境省の審査を受けなければならない。

また、食品安全委員会の審査も受ける必要がある。

(※安全面で問題だらけのコロナ・ワクチンが、日本に氾濫している現状を見ると、上記の行政の審査がきちんと行われるとは思えない)

一方で、ゲノム編集した食品でも、遺伝情報の一部を壊すタイプの編集ならば、カルタヘナ法の規制に該当しない。

(※前述のトマトやマダイやトラフグは、これに当たる)

放射線を照射して遺伝子を壊して行う品種改良に、安全性の審査が無いため、同じようにCRISPR-Cas9で遺伝子を壊した食品でも必要ない、との日本政府の判断である。

しかし「未知のリスクがあるかもしれないから、規制が必要だ」との声もある。

(※コロナ・ワクチンと同じで、しっかりした安全審査や検証なしに、日本政府はゲノム編集食品を市場に出そうとしている)

遺伝子組換え作物や、外来の遺伝子を挿入した食品は、「食品表示基準」により店頭で表示する義務がある。

ところが遺伝子を放射線やCRISPR-Cas9で壊した食品は、表示義務がない。

なお、CRISPR-Cas9で遺伝子を壊すと、CRISPR-Cas9の遺伝子がゲノムに組み込まれる。

この段階では、カルタヘナ法の規制対象である。

しかしCRISPR-Cas9で遺伝子を壊した生物が、交配していくと、CRISPR-Cas9の遺伝子が入らない個体が出てくる。
それを選別することで、遺伝子組換えでない(表示義務のない)生物に仕上げることが出来る。

ゲノム編集で懸念されるのが、「オフ・ターゲット作用」である。

これは、狙った所ではないDNAまで書き換えてしまう事だ。

CRISPR-Cas9は、ガイドRNAを使って切断する所を見つけて結合するが、似た配列の別の所にも結合する可能性がある。

すると別の所のDNAが切断されてしまう。

オフ・ターゲット作用は、目的の配列と似た所で起きやすいので、あらかじめゲノム情報で似た所を見つけておき、変異していないかを後で確認できる。

ゲノム編集でエイズ(後天性免疫不全症候群)を治す研究が行われている。

エイズ・ウイルスはリンパ球の表面にある「CCR5」というタンパク質を目印にして侵入する。

そのためCCR5遺伝子をゲノム編集で無くすことで、エイズに感染しなくなるという。

また、癌の治療でもゲノム編集が研究されている。

まず癌の患者から細胞を取り、CAR-T細胞をつくる。

CAR-T細胞とは、免疫細胞にゲノム編集で外部の遺伝子を加えて、癌細胞を強く攻撃するようにしたものである。

これを患者に投与することで、癌細胞を攻撃させるのだ。

CAR-T細胞は、患者本人以外に移植すると、拒絶反応が起きる。

そこでCAR-T細胞の「T細胞受容体」という遺伝子をゲノム編集でカットし、他人にも移植できるようにする研究も進めている。

上記の方法は、細胞を取り出して、人体の外でゲノム編集を行うものだ。

これに対し、『体内で直接にゲノム編集をする方法』も出てきた。

例えば目の病気では、網膜に薬剤を注射して、ゲノム編集を行う治療がある。

この臨床試験が、2019年からアメリカで行われている。

(※コロナ・ワクチンで遺伝子が書き換えられるという説があるが、技術的には注射でゲノム編集がすでに可能らしい)

現在では、CRISPR-Cas9をさらに発展させる技術開発が進んでいる。

その1つが「塩基編集」である。

塩基編集は、指定した1つの塩基を別の塩基に書き換える技術だ。

DNAの二本鎖を切断できなくしたCas9と、塩基を変えられる特殊な酵素を用いる。

これだとDNAの切断は起きず、狙った塩基だけを書き換えられる。

遺伝性の疾患は、1文字(1塩基)だけ変化したものが多いため、その治療に活用できると期待されている。

もう1つのCRISPR-Cas9を発展させた技術は、「プライム編集」である。

これは、ガイドRNAに「DNAをどう書き換えるか」が書かれている。

だから外部の遺伝子を一緒に投入しなくていい。

Cas9は、DNAの一本鎖のみを切断するものを使う。

プライム編集では、一本鎖を切断した後、塩基を1文字から数十文字で挿入したり欠失させたり出来る。

ゲノム情報は、全てが常に使われているわけではない。

必要な時に、必要な遺伝子を働かせるため、「スイッチ」の様なものがある。

このスイッチが、「メチル基」や「アセチル基」が関わる「化学修飾」である。

メチル基やアセチル基が、DNAや、DNAに巻きついている「ヒストン」というタンパク質に結合したり外れたりすることで、スイッチのON/OFFが行われる。

そこで、このスイッチを操作する技術も開発されている。

この技術は、「エピゲノム編集」という。

アメリカの国立衛生研究所(NIH)は、塩基編集、プライム編集、エピゲノム編集を用いたプロジェクトを、2021年4月から行っている。

以上のように、ゲノム編集の技術は、ここ10年で一気に進んだ。

もはや、人という種に人工的に変化を起こすことが可能だ。

しかし遺伝子を書き換えることは、後になって問題が発覚し、子孫にまで影響が及ぶリスクがある。

例えば人の受精卵にゲノム編集を行うと、数塩基だけを書き換えるつもりが、数千もの塩基が失われる場合があると、分かってきた。

また、受精卵にゲノム編集を行うと、それが全身の細胞に適用されるので、生殖細胞も変異する。
結果として、そのゲノム編集は次の世代にも受け継がれる。

2018年に中国において受精卵のゲノム編集で生まれた「デザイナー・ベビー」は、エイズに関わるCCR5遺伝子を無くす編集が行われた。

しかしエイズはすでに治療法が確立したし、両親がエイズでも体外受精や出産時にエイズ・ウイルスを除去する方法がある。

このため、受精卵にゲノム編集をする必要がなかったと、批判を浴びた。

また、病気を起こす遺伝子は、ある環境下では生存に有利なこともある。

例えば鎌状赤血球症という病気は、貧血になりやすいが、マラリアにかかりにくいという特徴がある。

(※鎌状赤血球症はアフリカ人やアフリカ系の人に多く、マイルス・デイビスも自伝で苦しんだことを述べている)


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