最近になって、「シンギュラリティ」という言葉を知りました。
気になっていたところ、科学雑誌のNewtonに分かりやすく書いてあり、さっそく勉強しました。
その記事の抜粋を書き、皆さんと分かち合おうと思います。
このところ、コロナ・ワクチンやグレート・リセットに絡んで、「このまま科学技術の研究を安易に進めたり、研究を後援する権力者たちを放置すると、大多数の人間がAIやマイクロチップを介して支配されてしまう」との懸念が出ています。
こうした懸念の元ネタになっているのが、今記事で紹介するレイ・カーツワイルの著書だと思われます。
なので、議論を深めるためにも、多くの人が知っておいて損はないと思います。
〇シンギュラリティの解説 Newton2021年11月号から抜粋
「シンギュラリティ」とは、人工知能(AI)が人間よりも賢くなり、社会を大きく変える分岐点のことだ。
シンギュラリティが起きると、人間の脳はインターネットと直接つながり、人はAIと一体となり、現実と区別がつかないバーチャル・リアリティが体験できるという。
アメリカ人のレイ・カーツワイルは、2005年に『The Singularity is Near』という本で、こう述べた。
「2045年にAIが人間の知性を上回り、シンギュラリティに到達する。
シンギュラリティとは、人が作り出したテクノロジーと、人が融合する臨界点で、後戻りできないほど生活は変容する。
人の脳とAIが直接つながり、人は現実と区別がつかないバーチャルな世界(サイバー空間)で好きな体験ができる。
医療では、臓器を機械に置き換えてサイボーグ化することで、寿命が飛躍的に伸びる。」
カーツワイルの主張は、「テクノロジーの進化が加速しており、指数関数的に進化する」との考えに基づいている。
つまり、爆発的に技術進化のスピードが早まると予想している。
これは、根拠のないわけではない。
例えば囲碁のAIは、人間よりも強くなるのに時間がかかると見られていたが、急激に進化して、もはや人のプロ棋士よりも強い。
レイ・カーツワイルは、シンギュラリティに到達するには、いくつかの段階を経ると考えた。
そして「2025年までに人の知能を模倣できるコンピュータが、パソコン・サイズで実現する」と予想した。
カーツワイルは、人の脳全体の情報処理能力を、「1秒あたり1京回の計算ができる」と見積もった。
ちなみに、2012年に完成した日本のスーパー・コンピュータ「京」は、1秒あたり1京回の計算ができた。
その後継の「富岳」は、1秒あたり44京回である。
市販のパソコンだと2021年現在、1秒あたり1兆回ほどである。
だから2025年には間に合わないかもしれない。
カーツワイルは、人の脳の記憶量は100京ビットと見積もった。
現在は1テラバイト(8兆ビット)のハードディスクが1万円以下で買えるので、何億円もかければ100京ビットは可能だ。
だが市販のパソコンが100京ビットになるのはまだ先だ。
レイ・カーツワイルは、「2020年代の半ばまでに、人の脳を模倣したソフトが開発される」とも予想した。
そして「人の脳を模倣するハードとソフトが揃うので、2020年代の終わりにはコンピュータがチューリング・テストに合格する」と予想した。
チューリング・テストは、イギリスの数学者のアラン・チューリングが考案したテストである。
コンピュータか人間か分からない相手と、人(判定者)が文字で会話をし、コンピュータだと判定者の30%以上が見破れなければ合格とする。
2014年に、初めてチューリング・テストで合格者が出た。
それは、ウクライナ在住の13歳の少年という設定の、会話するAIである。
ただし英語が母国語ではなく、少年で知識が乏しいという条件での合格だった。
会話するAIは、学習することで能力が上がっていく。
ビッグ・データを用いて、「ニューラル・ネットワーク」と呼ばれる手法で学習する。
「ニューラル・ネットワーク」とは、脳の神経細胞(ニューロン)を模倣した、人工ニューロンを使った学習法である。
なお、人工ニューロンを多層化(深く)したものが、「ディープ・ラーニング(深層学習)」である。
ディープ・ラーニングの登場で、コンピュータの言語処理や画像認識の精度が大きく向上した。
だが会話するAIは、単語の意味を人と同じに理解しているわけではない。
あくまでも、人の会話を学習して、統計的にありそうな単語を並べて返事するだけである。
AIの進化の鍵を握るのが、「自分で自分を改良するAI」だ。
イギリスの「Google DeepMind社」が開発した囲碁AI「AlphaGo」は、2016年に世界のトップ棋士に勝ち、衝撃を与えた。
「AlphaGo」は、過去のプロ棋士の対局を学びつつ、AlphaGo同士で対局をくり返して強くなった。
その後継の「AlphaGo Zero」は、プロ棋士の対局は学習せず、自分自身との対局のみをくり返したが、たった3日でAlphaGoよりも強くなった。
囲碁AIは、人の手を離れて、自己進化したものだ。
このようにAIが自己改良していき、あらゆる分野で人を上回ることで、「2040年代にはAIが人よりも有能になる」とレイ・カーツワイルは主張している。
だが、人と同じ様に「色々なことが出来るAI」は、まだ完成していない。
というのは、自己改良型のAIは、人に理解しがたい判断をする事が多くなり、人が制御しづらいからである。
このため、企業などは品質保証ができないと考えて、AIの自己改良をあまり進めない。
レイ・カーツワイルの予想には、「2020年代に分子サイズの小型ロボットである『ナノボット』が登場し、2020年代の終わりには人の脳に入れられて、脳内を詳細にスキャンする」というのもある。
これにより、脳の情報処理の全貌が明らかになるという。
加えてカーツワイルは、「脳内のナノボットが、外部からの情報を脳の神経細胞に伝えることで、人は様々な体験をバーチャル・リアリティとして可能になる」と予想した。
そして「2030年代には、バーチャル・リアリティの品質が高まり、現実と区別がつかなくなる」と予想した。
カーツワイルは著書で、ナノボットが脳内に入る方法として、血管を通って脳内に侵入することや、脳に直接注入することを挙げている。
血管内を移動するとしたら、赤血球くらいのサイズにする必要があるが、赤血球の直径は0.008ミリだ。
(※脳とコンピュータを繋いでバーチャル・リアリティを体験させることは、3月の日記『AIを使った人の脳とコンピュータの融合、その技術開発を学び論じる』で取り上げています。
併せて読むと、より理解できます。)
現在のナノボットやナノマシンは、電子機器ではなく、高分子を利用したものが主流だ。
例えば、高分子のカプセルに抗癌剤を入れて、それを標的の癌細胞に届けるといったものだ。
レイ・カーツワイルは、「2030年代の終わりには、人の脳の全情報をコンピュータに転送できるようになる」と予想した。
脳は神経細胞を接続し合って、信号をやり取りしているが、それをコンピュータのデータ形式に変換し、保存できるかもしれない。
人の脳と外部のマシンを繋ぐ技術は、「BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)」と呼ばれている。
BMIの実用化として、「人工内耳」がある。
人の内耳に電極を埋め込み、マイクで拾った音を内耳の聴神経に電気信号として伝えるのだ。
超小型のスマートフォンが開発され、それを脳に埋め込めば、手で操作することなく脳で操作できるだろう。
だが、脳と外部ネットワークが直接に繋がれば、外部からの情報に人はさらに大きい影響を受けるはずだ。
現在でも、SNSやテレビから、私たちは大きな影響を受けている。
そういった情報が脳内に直接流れ込んできたら、もの凄い影響を受けるのは必至だ。
だから、脳と外部ネットワークの接続に慎重な意見も多い。
レイ・カーツワイルは、こんな予想もした。
「2030年代には、多くの臓器が信頼性の高い人工臓器に置き換わり、脳は入り込んだ無数のナノボットによって外部のネットワークと繋がっている。
人工臓器によって寿命は長くなり、やがて平均寿命は500歳を越える。」
このような、科学技術で人の生物的な限界を越えようとする考えを、「トランス・ヒューマニズム」という。
カーツワイルは、トランス・ヒューマニズムの支持者である。
カーツワイルの著書『The Singularity is Near』が出版されたのは2005年だが、当初はさほど注目されなかった。
しかし2010年代にディープ・ラーニングでAIの能力が急速に進化すると、注目を集めるようになった。