私は、2013年の5月頃に『SHM-CD』に出会いました。
これは、「通常のCDよりも、緻密で透明度の高いポリカーボネート樹脂」を採用しています。
そして、CDに精密な書き込みを可能にし、読み取り精度をアップさせる事で、劇的に音質が向上しました。
SHM-CDに出会った時の驚きは、『SHM-CDを聴いたが、かなり凄いぞ』に書いています。
この記事を書いた頃から、SHM-CDの値段が下がった事により、一気に普及してきました。
現在では同じ技術を他社も採用して、これがCDの新たなスタンダードになってきています。
私は、この流れを高く高く評価しています。
「ようやくCDがまともに聴けるレベルになってきた。これで音楽界がもう一度、活性化されてくるだろう。」と、ワクワクしております(^-^)
さて、そうした中、昨年の9月頃に、『プラチナSHM-CD』なるものが新たに登場してきました。
私は今年に入ってから、これの存在に気付き、すでにSHM-CDの良さを知っていたので、興味しんしんになりました。
さっそくホームページを見に行ったところ、「SHM-CDを改良したもので、音質がさらにアップしている」との謳い文句です。
「ふむふむ、なるほど。新たな挑戦を始めたか。」と感心しました。
で、ネットでさらに情報を集めたのですが、値段が1枚で4000円近い事もあり、評判はいまいちです。
「SHM-CDと比べて、値段ほどの違いはない」、これがネットにおける評価の大勢でした。
「う~む。評判はいまいちだなあ。買おうかと思ったけど、評価がいまいちだし、止めようかなあ。でも、もしかしから凄い良いかもしれないし…。」と、大いに悩みました。
1週間ほど悩んだ後に、最終的には、勇気を出して1枚を買ってみる事にしました。
というのも、『最近まではSHM-CDについても、ネット上の評判があまり良くはなかった』からです。
私は、SHM-CDの凄さに驚いた後、オーディオに凝りだしている弟に、「これは、いいぞ」と薦めたのです。
弟は、購入の判断とするためにネットで情報を収集し、「評価が割れている。リマスタリングの良し悪しによって決まるみたいだ。」と、報告してきました。
私は、自分が高評価を下していたので、その報告に驚き、「SHM-CD 評価」と打ち込んで、ネット検索をしたのです。
すると、「違いが分からない」とか「デジタル情報をパソコンを使って解析したが、今までのCDよりも劣化している」などど、否定的な意見の方が多かったのです。
「CDは補正技術が要なので、CDへの書き込み精度や、読み取り精度は重要ではない。そんな事も分からない奴がいるのか。買う奴はアホだ。」とまで書いている人もいました。
私は、こうしたオーディオ・ファン達の反応に驚き、「そんな…。何という事だ…。」と思わず絶句しました。
それから30分ほどは、「俺の感性はおかしいのだろうか…?」と、ショックから立ち直れず、嫌な汗が出続けました。
30分が過ぎたあたりから、徐々に心が持ち直してきて、
「面白いじゃねえか。
よし。どっちの感性(聴力)が正しいのか、勝負だ。
SHM-CDが普及するかどうか、様子を見ていよう。」
と心に決め、静かに闘志を燃やしました。
その後、私の強い推薦により弟も1枚は買ったのですが、私ほどの感動は得られていないようでした。
「音が優しくなったとは思うけど……」というのが、弟の感想でした。
弟やネットに記事を書いているオーディオ・ファンの反応を見て、『音楽(音質)というのは、それぞれの感性によって、評価が激変すること』を、改めて思い知らされました。
それでも、(いや、SHM-CDは音が良い。俺は確信している。)と、内心では強固に信じていました。
結果としては、ここ半年くらいで強烈にSHM-CDは普及を進め、「音が良い」との評価もほぼ確定しつつあります。
私は、静かな勝利感に酔いしれています。
この経験があったので、プラチナSHM-CDについても、『自分で聴かないと、きちんと評価を下せない』と考えたのです。
そうして、聴いてみての結論としては、「さらに進化している。これは画期的な音だ。」と感じています。
現状では、かつてのSHM-CDと同じく、プラチナSHM-CDも否定的な意見の方が多いです。
私は、この記事を発表後に、再び様子を見る事にしましょう。
ここからは、いよいよ『プラチナSHM-CD』の音質について書いていきます。
私が購入したのは、エリック・クラプトン(デレク・アンド・ザ・ドミノス)の『いとしのレイラ』です。
これを聴いた感想を書いていきます。
パッと音を聴いての第一印象は、「音が滑らかだな、リズムが自然だな」と「音が少し大人しいな」でした。
聴き込んでいくと、『音の肌触りが自然で、今までのCDにはない滑らかな音触感』がある事に気付きました。
ネットで得た情報では、「SHM-CDと大差ない」との意見が多かったのですが、私が聴く限りでは『音の感触』が大きく違います。
アナログ・レコードに近い、柔らかく滑らかな感触があります。
ただし、音が大人しくて、少々つまらない感じもしました。
そこで、ここまではCDプレーヤー(デノンのDCD-755RE)にヘッドフォンを繋いで聴いていたのですが、今度はオーディオ装置で大音量にして聴いてみます。
大音量で鳴らすと、大人しさが改善されて、聴き応えのあるものになる場合が多いのです。
しかし案に相違して、音のバランスがヘッドフォンで聴いていた時よりも悪く、音が硬くて聴き苦しいものでした。
私は「これは、どうした事か」と、考え込みました。
オーディオ装置で使っているCDプレーヤーは『ティアックのVRDSー25X(1997年製)』です。
名機として評価されているものですが、これにはヘッドフォン端子が付いていません。
そのため、ヘッドフォン専用のCDプレーヤーとして『デノンのDCD-755RE(2012年製)』を使ってきました。
(ヘッドフォン・アンプを購入する手もあったのですが、もう1台ある方が便利だろうと思い、プレーヤーを買う事にしたのです)
前者の方が定価で4倍くらい高いので、漠然と「前者の方が音は良い」と信じており、後者をオーディオ装置に繋ぐことは試してすらいませんでした。
私は、「今回のプラチナSHM-CDは、最新の規格なので、新しいプレーヤーの方が相性がいいかも」と思いました。
そこで、オーディオ装置にDCD-755REを繋いで、プラチナSHM-CDを聴いてみたのです。
すると、とんでもない事が起きました!
音場感や音色がびっくりするほど向上して、音の硬さも取れました。
そして、今までに我が家の装置ではCDからは聴いた事がない、『しなやかでタメの効いた、リアルなスウィング感』が出たのです。
私は大ショックを受けて、急いで他のCDもかけてみましたが、どのCDでもDCD-755REの方が音が良かったです。
こうして『CDプレーヤーは、激しく進化してきていること』を、理解させられたのでした。
そして、オーディオ装置のCDプレーヤーの棚には、755REが鎮座する事になりました。
話が脱線しがちで申し訳ないです。
結局、DCD-755REで「いとしのレイラのプラチナSHM-CD」を聴き込んでいく事になりました。
音のバランスが良く、キンキンしないので、音量を上げてもうるさくありません。
音量を相当に上げてみたのですが、音場感が素晴らしく、音の柔らかさを失いません。
オーディオ店で試聴できる「トータルで200万円ほどの高額装置」から出てくるニュアンスに近い音が、自分の装置から出てきたので、本当にびっくりしました。
我が家の装置からは(レコードでは別ですが)CDからこのような豊かなニュアンスを感じた事は、1度も無かったです。
聴きながら、「凄いよ、プラチナSHM-CD!!」と感動しました。
具体的に、ニュアンス部分を書いてみましょう。
このアルバムは、『ジム・ゴードン』という素晴らしいドラマーが参加していて、彼の叩き出す雄大で温かいリズムが1つの特徴になっています。
ゴードンについては、クラプトンが自伝で「私が共演した中では、一番のドラマーだった」と述べているほどで、彼はロック史上でも最高のドラマーの1人です。
ゴードンの持つ、「余裕感のある柔らかいリズム」「ソロイストを包み込むような配慮のあるサポートぶり」「オーラの出ている力強い雰囲気」は、CDではなかなか再生できません。
それが、「オーラの出ている力強い雰囲気」以外は表現できているのです。
今までのCDでは表現できなかった、うねる様なリズムとか、リズムのしなやかな伸び縮みが、相当に出ています。
ゴードンの素晴らしさが、きちんと聴き取れました。
彼の持つオーラについてのみ、再現されていませんでした。
次は、クラプトンのギターについてです。
彼のギターは、美しい音色や、叫ぶようなチョーキング(音の曲げ)が特徴です。
こうした部分が、きちんと出ています。
音に滑らかな繋がり感があるので、チョーキングで「グイ~ン」と音を曲げた時に、そこから醸される切なさとか演歌のこぶしみたいなものが表現できています。
全体的に、今までのCDよりも音の情報量が多い印象で、聴きごたえがあるし、音に実在感や立体感があります。
今までのCDにありがちだった、「作った音」の感じ(不自然な感じ)が相当に薄まってます。
レコード盤だと、音自体の美しさや格調高さに、しびれる瞬間があります。
出てくる響きだけで感動する瞬間があるのです。
これが、CDだとぜんぜん無かったのですが、今回は感じられます。
以上のように、私はプラチナSHM-CDを高く評価します。
新たな領域に入ったと言えるくらいの、進化ぶりだと思います。
実は、プラチナSHM-CDは、CD規格ではありません。
CDプレーヤーで再生できますが、反射率の関係で、CD規格からは外れるそうです。
『規定の枠からはみ出てでも、良い音を追求しよう』という心意気を、私は高く評価します。
「開発者とは、そうでなくてはならない」とすら思いますよ。
素晴らしい音質と可能性を持ったプラチナSHM-CDですが、普及できるかどうかにはやや疑問があります。
というのは、非常にレアな金属である「プラチナ」を使用しているからです。
普通だと、量産していく中でコスト・ダウンに成功し、価格が下がっていっそう普及していくものです。
この好循環が、今回は通用しない可能性があります。
プラチナをいくらで調達できるのか知りませんが、この部分は量産してもコスト・ダウンが難しいと思います。
(私には知識はありませんが、交渉や提携しだいでは安く調達できるのでしょうか?)
現在は1枚で4000円弱ですが、「1枚2000円」が普及が進むラインだと思います。
ですから理想としては、プラチナと同じ効果のある、もっと安価な素材を見つけ出すのが求められます。
それに成功したら、世界に衝撃を与える音楽ソフト革命の成就でしょう。
プラチナSHM-CDでは、『ターコイズブルー・レーベル』と銘打つ技術も使われています。
これは、レーベル面をターコイズブルーにする事で、乱反射を制御する技術ですが、一般のCDにも適用できそうです。
見栄えもなかなかだし、CDの標準技術に採用していいと思いますね。
(以下は2014年5月7日に追記)
「いとしのレイラのプラチナSHM」を愛聴し続けていますが、14曲目の「Thorn Tree In The Garden」にハマッています。
今までは、この曲はレイラの次の曲だし、ドラムなどの参加していないシンプルな編成という事もあり、地味な存在に思えて、私はほぼ無視していました。
ところが、プラチナSHMで聴きだしてからは、毎回聴く曲となっています。
プラチナSHMは、静かな曲の表現や、アコースティック楽器の音色が、とても良いです。
そこは、今までのCDとは段違いです。
「Thorn Tree In The Garden」は、ボーカルとアコースティック・ギターのみで演奏されていますが、ギターの音が美しいです。
アコギ特有の、美しく繊細な響きや、かなり入る倍音成分が、良く表現されています。
今までのCDは、音が硬すぎで、倍音成分もほぼ皆無でした。
アコギの持っている素晴らしい響きを、ぜんぜん再現できていなかったのです。
プラチナSHMは、こういう部分では凄い進化していますよ。
でも、まだまだ音が硬い(情報量が少なく、正確でもない)です。
本当のアコギやボーカル(人間の声)の響きは、もっと深く繊細ですから。