サッカーの日本代表・男子は、私の大好きだったザッケローニ監督が辞任し、新たにアギーレさんが監督に就任しました。
それはまあいいのですが、アギーレJAPANになってから数試合がすでに行われましたが、どの試合もひどい出来です。
特に10日ほど前にあった対ブラジル戦は、「サッカーになっていない」と言えるほどの酷い内容でした。
私には、この事態は予想できました。
「やはり、そうなったか」という心境です。
日本サッカー界は、悪い状況になったり、世界のサッカー界で新しいトレンドが出てきたりすると、それまで積み上げてきたものを全て投げ捨てて、思考停止状態で新しいスタイルに移行しようとする悪癖があります。
これが、再び現れているのです。
今の日本代表は、完全に自分を見失っている状態ですよ。
今まで積み上げてきたものを、自分達でも否定し、周りも否定するので、何をしていいかが分からず、とりあえずピッチ上でボールを蹴っているだけです。
日本代表・男子は、しばらく前のブラジルW杯で惨敗しました。
明白な惨敗でした。それを偽る気はありません。
しかし、惨敗したからといって、それまで積み上げてきたものをゴミ箱に捨てる必要はないです。
「どこが足りなかったのか、どこを改善すればいいのか」を考えるべきなのであって、「さあ、新しいサッカーを始めよう」などと言い出すのは不誠実なやり方ですよ。
冷静に考えてみれば、ザッケローニ監督は着実に日本代表を進化させていたし、ザックJAPANのサッカーは徐々に成熟していました。
実際に、W杯に近づくにつれて、強豪国とも対等に戦えるようになってきていたのです。
W杯本番では結果が出ませんでしたが、私はザックさんの仕事を高く評価しています。
私としては、ザックさんに続投してもらいたかったです。
W杯で大きな結果を出すには、4年では短いです。
例えば今回優勝したドイツだって、レーブ監督は8年の長期に渡って一貫した指導をして、優勝に導いたのですから。
結局のところ、アギーレ監督に代えてすぐさま「さあ、新しいサッカーを見せよう」との軽薄な空気を醸しているのは、『惨敗の責任を回避したいサッカー協会』と『惨敗でサッカー熱が冷めるのを恐れる、サッカーをビジネス機会にしているスポンサー達』です。
彼らには、ビジョンもサッカーへの真摯な姿勢もありません。
ですから、それに踊らされるのは愚の骨頂です。
第一、日本に来たばかりで右も左も分からないアギーレさんが、すぐに新しいサッカーを展開できるはずもありません。
アギーレさんに日本代表を丸投げしている現在のサッカー界は、無責任の極みだと思います。
そもそも新監督に依頼する内容は、「今まで積み上げてきた事を土台に、そこにプラスアルファをしていく事」でなければならないです。
日本は、プロリーグ(Jリーグ)が始まってから20年くらい経っているのだし、生まれたての赤ちゃんではありません。
「ここを強化してほしい」「こういうサッカーを作ってほしい」と、アギーレさんに具体的に言うのが筋ですよ。
ここまでの結論になりますが、私はこう思います。
『日本代表は、サッカースタイルを変える必要などない。
ザックJAPANの4年間に培ってきたものを大事にしつつ、さらなる前進をはかろう!』
日本がこの4年間に目指してきたパス・サッカー(ポゼッション・サッカー)は、日本人に合っているし、「日本のスタイル」として確立していけるだけのポテンシャルもあると、私は確信しています。
(なぜ日本人に合っているかは、この記事の直前の2つの記事など、他のページに書いてあります)
今考えなければならないのは、「新しいスタイル」ではなく、「現在のスタイルを(ザックJAPANで築いたスタイルを)どう修正して進化させるか」です。
この考えを基盤にして、ここから話をしていきます。
私がブラジルW杯での日本代表を見ていて感じた改善すべき点は、次の5つです。
① 守備から攻撃への切り替えの遅さ
② カウンター攻撃への対処のまずさ
③ 相手が得点を重ねてリードすると、心が折れてしまう
④ 攻撃を続けても相手の守備網を崩せないと、攻撃のアイディアが枯渇してしまう
⑤ 精神的に余裕がなく、試合中に常にびびっている
この5点を改善するだけでも、日本は倍くらいに強くなると思います。
W杯でベスト8まではいけるでしょう。
W杯から数ヶ月が経ち、すでに新シーズンとなって各国リーグが開幕していますが、ACミランの本田さんやマインツの岡崎さんなど、W杯で戦ったメンバーの多くが世界のトップリーグで大活躍しています。
これを見れば、彼らに実力がすでに備わっている事がよく分かります。
つまり、今まで積み上げてきたものはきちんと結果を出しているし、日本代表は大幅な変更をしなくてもよく(しない方がよく)、修正を重ねていけば(選手の実力をばっちり出せるように改良していけば)強くなるのです。
ちなみに、私は本田さん達の活躍を見ても嬉しくはならず、むしろ活躍するほど「お前ら……。W杯で、なぜそれを出さないんだ!」と、怒りが沸々と湧いてきます。
ここからは、指摘した5点について詳しく説明し、どう改善すればいいかを書きます。
まず、『① 守備から攻撃への切り替えの遅さ』です。
これは守備から攻撃へ移る時に多く見られ、日本の攻撃力を減退させています。
日本がボールを奪った際には、相手の陣形が崩れていてカウンター攻撃のチャンスである場合も、かなりあります。
ところが、日本はほぼ100%の確率で、カウンターを仕掛けないのです。
この理由としては、カウンターを仕掛けるとボールを奪われた時に危険な状態になるので、リスクを恐れていることがあると思います。
リスクを恐れるがゆえに、ボールを奪うとまず自分たちの陣形を整えることを優先しています。
こっちが陣形を整えれば安定感は増しますが、相手も守備陣形を整えてしまいます。
結果的には、相撲でがっぷり四つに組むような形になります。
がっぷり四つで組んだ時に相手を倒せるほどの強さが日本にあるならば、それでもいいのです。
でも今の日本では、強豪国が相手だと通用しない事もしばしばです。
私は、ボールをキープしてじっくり攻める時間帯があるのは、良いと思っています。
いつもカウンターを仕掛ける必要などないし、基本的にはボール・ポゼッションを高めるスタイルで良いです。
ただし、相手の陣形が崩れている場合には、それを突いていかなければなりません。
要するに、『攻撃のバリエーションを増やせ』という事です。
いつも遅攻だと、相手に読まれてしまいます。
ちなみに、なでしこJAPANは、攻守の切り替えが速くて、男子代表とは大きく違います。
速攻と遅攻を使い分けるなでしこを、ぜひ見習ってほしいですね。
次に、『② カウンター攻撃への対処のまずさ』です。
これは、日本では男女の代表ともに共通していて、なでしこの課題でもあります。
これについては、10月21日のなでしこJAPANについての記事でも取り上げました。
日本はポゼッション・サッカー(パス・サッカー)をしているために、DFラインを高く設定しています。
それ自体は日本を生かす良い事なのですが、相手はそれを研究して、DFラインの裏を狙うカウンター攻撃を仕掛けてきています。
そうして、見事にやられまくっているわけです。
10月21日の記事に書いたように、これを解決するにはいくつかの事が必要で、特に「センターバックの守備力を上げること」が重要です。
世界トップクラスのセンターバックを見ると、相手のFWと1対1の場面ならば、判断力を駆使してなんとか止めます。
しかし日本のセンターバックは、2対1と数的有利にある状況でも、点を奪われてしまうのです。
GKのカバーリングが拙いのも、カウンターでやられる原因の1つです。
思い切って飛び出した方がいい場面では躊躇するし、飛び出さない方がいい時に出てしまいます。
カウンターでやられている現状を見て、「DFラインを下げるべきだ」と言う識者もいますが、私は安易に下げない方がいいと思っています。
DFラインを下げると、相手はロングボールを放り込むパワープレイをしてくるし、それをされると体格で劣る日本は苦しくなります。
それに、DFラインを下げると全体が間延びするので、日本が得意にしているパス・サッカーをしづらくなります。
DFラインを低く設定するよりも、DFとGKの能力や連係を高めて解決する方が、長期的には日本を強くできると思います。
次に、『③ 相手が得点を重ねてリードすると、心が折れてしまう』です。
男子代表は、相手が強豪国の場合だと無意識に「負けそうだ」と思うらしく、試合の後半でリードされると諦めてしまいます。
それが顕著だったのは、W杯でのコートジボワール戦とコロンビア戦でした。
まだ時間がたくさん残っているのに、相手が2点目を取ってリードした時点でやる気を失い、覇気のないプレイになっていました。
これは精神的な問題なので、解決するのは難しい気もしますが、単純に「サッカーをよく知れば解決できる」とも思います。
今の男子代表は、リードされると負けた気になってしまうのですが、サッカーは終了するまで逆転のチャンスがあります。
実際に逆転する試合はたくさんあるし、選手はそれを体験してきているはずだから、弱気になる必要はないと理解できるはずです。
冷静に考えてみると、「日本代表に精神的な支柱がいないこと」が大きい気がします。
苦しい局面でも声を出して、味方を鼓舞し続けるタイプが、現代表にはいません。
苦しい場面で頑張れるかどうかは、理屈ではないので、「とにかく諦めない選手」を見つけて、代表のスタメンに1人はいれておく事が大切だと思います。
シュバインシュタイガーやマスチェラーノのような、苦しい場面になればなるほど輝くタイプ(苦しい場面でもパフォーマンスが落ちず、常に安定したプレイをするタイプ)が、日本に今いちばん欲しい人材です。
次に、『④ 攻撃を続けても相手の守備網を崩せないと、攻撃のアイディアが枯渇してしまう』です。
これについては、「日本人には創造力がない」とか「自由な発想が足りない」などと、センスの問題として捉える人もいますが、私はそうではないと思います。
単純に、「今の代表は攻撃のバリエーションが少ない」のだと考えます。
練習をして攻撃パターンを増やせば、アイディアの枯渇は防げると思います。
男子代表の良くない癖として、「膠着すると(厳しい時間帯になると)ボールをもらいに行く動きが減る」のがあります。
なんでボールをもらう動きをしなくなるのかよく分からないのですが、たぶん自信が無いのでしょう。
なでしこの場合、ボール・ホルダーがパスを出せずに苦戦していると、ちゃんと周りが動いてパスを出せるようにします。
この差は大きいですよ。
よくよく考えると、攻撃のアイディア不足というよりも、消極的な姿勢に問題があるのかもしれません。
苦しい場面になると、長友さんや本田さんなど以外は、ボールを持つのを避ける素振りを見せる事すらあります。
皆が消極的になるので、パスの出し所が減り、連動性も無くなり、結果としてさらに膠着してしまい、相手のカウンターの餌食になっています。
日本のサッカーは、選手間の連係による正確なパスワークを売りにしているので、誰かが消極的な姿勢になるとパスが繋がらなくなり、一気に攻撃が停滞してしまいます。
これを自覚した上で、怖がらずにパスをもらいに行く必要がありますね。
最後に、『⑤ 精神的に余裕が無く、試合中に常にびびっている』です。
これは、③とかなり被る問題点ですが、いつまでも改善されません。
この問題については、「国際経験が少ないからびびるのだ。海外で経験を重ねれば解決できる」との意見がありますが、私はそうじゃないと思います。
いざという時に平常心を保てるかどうかは、「経験」も大切ですが、それよりも「人格」や「信念」や「日々の落ち着いた暮らし(日々の生活態度)」が大きいと思うのです。
実際に、海外組は増える一方なのに、いつまでもびびるのは続いています。
私が指摘したいのは、『メディアやスポンサーが、ビジネス目的で男子代表をやたらと持ち上げているのが、悪い影響を与えているのではないか』という事です。
メディアがあまり注目していないなでしこJAPANは、選手達が試合中もプライベートでも冷静さを保っているように見えます。
そしてなでしこは、いざという時でもびびりません。
メディアとスポンサーが色々と煽る事で、男子代表はプレッシャーを感じ、サッカーに集中できない状態に追い込まれています。
それが、情緒不安定な試合ぶりに繋がっているのではないでしょうか。
「注目されるのの何が悪い、メディア露出や副業が忙しくてもサッカーに集中しろ」という意見もあると思いますが、今の男子代表の状況は異常ですよ。
サッカー選手をCMに起用して、自社の良いイメージを植え付けようとする浅ましいスポンサーたち(大企業たち)には、本当にうんざりします。
「もっと自社の製品やサービスの内容をきちんと宣伝しろよ。選手なんて、商品の質となんの関係も無いだろ。イメージのみのCMをして何になる?そんなに自社の仕事に自信がないのか?」と思います。
もっと冷静な報道をし、選手も余計な副業を減らせば、選手はプレッシャーから解放されて落ち着きを取り戻し、びびる事も減ると思います。
最後になりますが、アギーレJAPANになってからの数試合での選手達のパフォーマンスについて、感想を書きます。
とにかく酷い試合の連続だったのですが、その中でポジティブに評価できるのは「武藤さんと柴崎さんの2人の若手の活躍」です。
彼らは良い動きを見せたし、プレイ以上に評価できるのは日本代表に入ってもびびっていない事です。
特に柴崎さんは、引き分けに終わったベネズエラ戦の試合直後のインタビューで「私自身まだまだです。勝てる試合でした。」と述べるなど、意欲の高さを感じさせます。
この2人は、代表に定着させていいと思います。
あとは、「GKの西川さんの安定感」も目につきました。
逆に言うと、川島さんのプレイは本当に酷いです。
川島さんのベネズエラ戦での、「平凡なGK正面へのシュートを、ファンブルしてゴールに流し込んでしまったプレイ」には、堪忍袋の緒が切れました。
彼は、今までもこうしたミスを何度もしています。
私が許せないのは、彼が反省しているように見えない事です。
あのプレイを見て、「川島さんは代表から追放されるだろう」と思いました。
それ以後も彼が代表に呼ばれ、スタメンで出場している事には、驚きを通り越して呆れていますよ。
ぜひ、川島さん以外の人を起用して、育てていってほしいです。
他の選手たちは印象に残らないプレイばかりでしたが、あえて言うなら「細貝さんに成長の跡が見える」のを指摘できます。
守備を統率しようとする積極性が、以前よりも出てきています。
(以下は2014年11月16日に追記)
ブラジルW杯での日本の惨敗については、「あれは思い出したくない、もう忘れよう」と考えているファンも居ると思います。
しかし私は、そのような態度は出来ません。
敗因を知りたいし、ぱっと忘れられるほど日本代表に無関心ではいられないのです。
ブラジルW杯についてのサッカー雑誌を読み、敗因について勉強したところ、かなり見えてきました。
この勉強については、『サッカー』のページで取り上げており、いま作成中です。