なでしこジャパンのW杯3戦目、その感想
攻撃も守備も形になってきている
(2015.6.20.)

なでしこジャパンのW杯での試合ぶりを見続けています。

グループリーグの第3戦では、エクアドルと試合をし、1対0で勝利しました。
これにより、3戦全勝で、グループリーグを1位通過する事が決まりました。

3戦全勝だったチームはほとんどなく、それを達成した日本は結果的には「ここまでは順調だった」と言えます。

私は、ベテラン勢のコンディションを心配していたのですが、3戦を観た限りでは不調の人はいないようです。

エクアドル戦では、「攻撃も守備も形になってきている」と感じさせる、安定した試合運びでした。

私は、4月7日の日記で「現状だと、日本がW杯を連覇する可能性は5%だ」と指摘したのですが、その時よりは格段に良くなっていますね。

ここからは、エクアドル戦の感想を書いていきます。

この試合については、「弱い相手だったのだから、もっと大量の得点をして勝たなければいけなかった」と言う識者が多いです。

しかし私は、「90分を通して試合の主導権を握っていたし、選手達は落ち着いてサッカーをしていた。相手が強くなかった事を考慮しても、かなりの前進を見せている。」と感じました。

一番良かったのは、90分を通して選手達が迷いなくプレイしていた事ですよ。

ここまでの2戦は、「どのようにプレイしたらいいのか分からない」という顔つきでピッチ上にいる選手が、何人もいました。

私はそれを見た上で、6月13~14日の日記に色々と改善策を書きました。

それが生かされたような試合ぶりで、なでしこ達は迷いなく精神的に落ち着いた状態でプレイを続けていました。

タイトルにも書きましたが、『攻撃も守備も形になってきている』と思います。

今の方向性を基本にして、さらに修正をはかれば、W杯の連覇も不可能ではないと思います。

私がこの試合で高く評価するのは、『FWの大儀見さんが、しっかりとボールをキープして、ためを作りつつ良いパスを味方に繋いでいたこと』です。

これにより、攻撃は格段にスムーズになり、守備をする時間も減りました。

6月13~14日の日記で詳しく指摘したのですが、これまではFWがポストプレイをきちんと出来ない事が、攻撃面での大きな問題点でした。

ここが改善されるとなでしこのサッカーが安定して機能する事が、エクアドル戦で証明されたと思います。

この先の試合では、エクアドルよりもDFのマークが厳しいのは確実です。

そこでも大儀見さんと菅澤さんがきちんとポストプレイをできるかが、鍵になると考えます。

なでしこジャパンの攻撃については、多くの方が「ボランチがパスを上手く散らせるかが一番重要だ」と考えていると思います。

でも、私は何年もなでしこジャパンの試合を見続けてきて、「それと同じ位に、FWがポストプレイをできるかが重要だ」と気付きました。

日本が良くない試合をする時って、FWが相手DFに当たり負けをして、ボールを取られまくる時なんですよ。

こうなると、サイド攻撃も機能しなくなる事が多い。
なぜなら、サイドにいる選手は、1回FWに当てて、スペースに走り込んでボールを返してもらうパターンが多いからです。

ボランチの選手も同様に、前線にボールを預けて、スペースに入ってボールを返してもらう事が多い。

要するに、攻撃の中で1回はFWにボールが渡されるし、前線ではどうしても接触プレイが多くなるので、体格がきゃしゃな日本人はそこで当たり負けして奪われる事が多くなりがちなのです。

私は、『なでしこジャパンの攻撃は、前線がボールをキープできるかが生命線である』と考えてます。

これを指摘する識者を見た事は無いのですが、私は「これが真実である」と確信しています。

率直に言って、FWの選手はボールを奪われずに味方に良い形で繋げれば、攻撃面では7割の仕事を成し遂げたと考えていいです。

私は、エクアドル戦のMVPは大儀見さんだと思います。

彼女はこの試合で得点しましたが、そんな事はどうでもいい。
ポストプレイで大活躍したのを、私は高く評価します。

これからの試合でも同じくらい大儀見さんがボールをキープできれば(ボールを繋げれば)、私は大会MVPを彼女にあげますよ。

エクアドル戦での大儀見さんについては、「下がってきてゲームの組み立てに参加したのが良かった」と皆が言ってます。
でも、下がったのが良かったのではなく、ボールをキープして味方に繋いだのが良かったんです。

菅澤さんも、もっと身体を張ってポストプレイをしてほしい。

攻撃面では、『センターバックが素晴らしいロングパスを出せるか』も、ここからの課題でしょう。

多くの方が、「今の日本は縦への展開が遅い」と指摘しており、それは正しいと思います。

これを改善するには、センターバックがどうボールを配球していくかが鍵になる。

日本のセンターバックは、もっとサイドMFやFWに精度の高いロングパスを出す必要があります。

これをすれば、攻撃のスピードは上がるし、さらに多彩な攻撃になるでしょう。

現状だと、岩清水さんと熊谷さんはロングパスをけっこう出すが、精度が低い。
そして川村さんは、精度は高いがあまりパスを出さない。

今までの記事でも何度か書きましたが、私は川村さんのパス能力を高く評価しています。

彼女は、代表でも屈指のロングパスの精度を誇ります。
「宮間か川村か」という位のレベルなんですよ。

彼女は、柔らかいロングパスを出せる人で、現状では他には宮間さんと澤さんしか出せません。
凄い才能を持っているのに、ロングパスを出す回数はとても少ない。

「川村! お前なら凄いロングパスを出せるのに、何をやってるんだ!」と憤りを感じてますよ。

彼女は、ここしばらくはボランチで起用されていましたが、エクアドル戦ではCBで起用され、良い働きをしたのでここからはCBで使われそうです。

もしCBで出場したら、「通せそうだ」「繋がりそうだ」と思ったら思い切ってロングパスを出してほしい。
「CBの中で一番パス技術があるんだから、お前が出せ。遠慮するな。」と思います。

そういえば同じくCBで、エクアドル戦でW杯に初出場した北原さんは、頑張っていましたね。

正直な話、なでしこリーグで見ている限りでは、傑出したものは感じなかったのですけど。
初出場なのに物怖じしない姿を見て、「なかなかの根性を持っている」と感心しました。

攻撃面では、あとは『セットプレイをもっと工夫する』のも大切です。

かなりの数のコーナーキックを獲得しているのに、ぜんぜん決めてないし、得点の匂いもしない。

もっと練習をして、精度を上げたほうがいいです。

日本は高さが無いのだから、なんらかの工夫(相手の意表をつくアイディア)が必要です。

エクアドル戦ではニアサイドの澤さんに何度も合わせていましたが、あれ以外にも決定力のあるパターンがないと厳しい。

エクアドル戦では、他にも2つほど、攻撃面で気になりました。
それを書きます。

まず私が気になったのは、『左サイドで起用された上尾野辺さんが、良い状態でパスをもらっているのにセンタリングを上げない事』です。

彼女は、代表でも屈指のボール・コントロール技術を持っているのに、ぜんぜんそれを活かしていない。
それに、かなりの俊足なのに、縦への突破をしかけることもしない。

攻撃面では、持っている能力の半分も出してないです。

「上尾野辺! お前はもっとやれるだろ! 積極的な攻撃参加をしろ! 1対1で仕掛けろ!」と思いますねー。

センタリングを上げない(出すのが遅い)のは、他のサイドMFおよびSBにも(鮫島さん以外には)ある程度あてはまります。

良い状態でボールをもらった時は(相手陣地の深いエリアで、フリーな状態でボールをもらった時は)、ペナルティエリア内に味方が2人以上いるなら、ダイレクトパスでセンタリングを上げていいと思う。

なぜだか知りませんが、フリーの時でも必ずトラップをして、ボールをキープしてからセンタリングを上げるんですよねー。
「そのまま1タッチですぐに上げちゃえよ」と思います。

ちなみに上尾野辺さんは、守備では素晴らしかったです。

エクアドル戦では、守備で唯一の危険な場面は、右サイドで相手FWと川村さんが1対1となり、川村さんが振り切られてしまった時でした。

あの時、上尾野辺さんは素晴らしいポジショニングをして、出されたラストパスをカットしました。

私は思うのですが、日本の選手達は『サッカーIQがとても高い』ですね。

上尾野辺さんなど何人もの選手が、クラブチームとは違うポジションでプレイしているのに、きちんと適応しています。

なでしこジャパンは、サッカーIQ(選手の頭の良さ)では、世界一だと思う。

この部分では、ダントツでトップですよ。

さて、攻撃面で気になった事も残り1つになりました。

最後の1つは、『澤さんが、フリーで前を向いた状態でボールをもらった時』です。

澤さんならば、良い状態でボールをもらった時は、もっと創造的でおしゃれなパスを出せるはずです。

「決して悪くはないが、澤ならもっと凄いパスを出せるはず」と感じています。

澤・宮間・川村・阪口の4人は、凄いパスを出せるセンスと技術を持っている。

だから、彼女達がフリーでボールを持った時は、パスが来ると信じて周りは積極的に動いていいと思う。

澤さんは、守備面はなにも言う事がないほど素晴らしいです。

あとは、絶妙のパスを出すこと、これでしょう。

私は6月12日の日記で、「大野さんはFWで使ったほうがいいのではないか」と提案しました。

でも、岩渕さんが負傷離脱から戻ってきて、エクアドル戦では良い動きを見せました。
だから、FWの駒は揃ったと思うし、大野さんはサイドMFでいいでしょう。

大野さんは、守備で献身的に働ける人で、そこは本当に素晴らしいです。

あれは、皆に見習ってほしいですねー。

攻撃についてばかり書いてきましたが、守備についてはエクアドル戦では完璧に近かったので、特に問題は感じませんでした。

相手はカウンター攻撃を狙っていましたが、前述した川村さんが抜かれて上尾野辺さんがカバーした場面以外は、完璧に封じ込めていたと思います。

6月13~14日の日記に守備面はたくさん書いたし、それがエクアドル戦では実践されていると感じました。
守備は安定感を増してきましたよ。

同記事では、「複数の人数でボールを奪いに行った時、ボールを奪えそうになければ、ゴールから遠い位置ならばファウルするのも手だ」と書きました。

エクアドル戦では、それが実践されており、危機を未然に防いでいました。

カードをもらうような危険なものじゃなければ、そこからボールを出されたら危険な時はファウルをするのも賢い戦術の1つです。

エクアドル戦での日本は、相手が怪我をしないような、美しく優しいファウル(そんなものは無いか!?)をしていたと思います。


日記 2015年4~6月に戻る