(『フセインの挑戦』小山茂樹著から抜粋)
イラクが1990年8月にクウェートに侵攻した理由の1つに、『イラクが軍事強国になっていたこと』がある。
1988年のイラク軍の戦力は、兵力100万人、戦車5500両、戦闘機500機以上であった。
戦闘機には、ミラージュ64機や、ミグ25とミグ29も含まれている。
そのうえ、化学兵器の保有量は数千トンに達していたという。
8年間イラクと戦ったイランは、兵力60万人、戦車1000両、戦闘機50機である。
中東で最強国と言われるイスラエルでさえ、兵力14万人、戦車3850両、戦闘機677機で、空軍力でイラクを上回るのみとなっていた。
イラクはなぜ、そこまで軍事力を持ったのか。
その最大の理由は、武器購入だった。
ストックホルム国際平和研究所の試算では、「イラクは1980年代に、800億ドルの武器購入をした」としている。
購入先は、ソ連が53%、フランスが20%、中国が7%だった。
アメリカは、イラクとは外交的に断絶していたにも関わらず、イラン・イラク戦争でイラクが不利な状況になるや、偵察衛星の情報を提供し、ペルシア湾に40隻以上のアメリカ艦隊を「石油ルートを確保する」という名目で派遣した。
アメリカは、対イラク輸出を1986年頃から増加させ、88年には西側諸国で最大の14億ドルを記録した。
また、10億ドルの対イラク・クレジットも付与した。
要するに、イラクを軍事大国にしたのは、武器を売ったソ連・フランス・中国や、イラクを支援したアメリカである。
(2014年8月18日に作成)