(『フセインの挑戦』小山茂樹著から抜粋)
クウェートの人口は、1990年時点で200万人に達していたと言われている。
1985年の調査では、全人口は170万人、そのうちクウェート人は68万人、非クウェート人は102万人だった。
クウェート国籍を持つ者は、人口の40%に過ぎない。
非クウェート人のうち、アラブ人は64.3万人、アジア人は35.6万人、その他は1.7万人である。
クウェート人と非クウェート・アラブ人の人口がほぼ同じなのに、驚かされる。
さらに驚くのは、68万人のクウェート人のうち、有権者がわずか6.2万人なことである。
クウェートでは、有権者は『1920年以前にクウェートに住んでいた者、およびその直系の子孫。そして成人男性のみ。』と、非常に限定されている。
この限られた人々が、いわゆる「第1級クウェート人」である。
第1級クウェート人とそれ以外のクウェート人は明確に差別されていて、しかもこの格差は永久的である。
全人口のわずか数%の人が、クウェートを牛耳っている。
首長の世襲を続けているサバーハ家に属する人は、1990年時点で2800人である。
家族を含めると1.4万人に上ると言われており、政府の要職を占めている。
何十年もクウェートに住みついて発展に貢献してきた数十万人のパレスチナ人(パレスチナ難民とその子孫)は、全く政治に発言力を与えられていない。
これで国の安定が保たれるほうが不思議である。
1985年の総労働者数のうち、非クウェート人は54.4万人で81%を占めている。
つまりクウェート人は、労働者の19%しか貢献していない。
しかもクウェート人の70%以上は、政府部門で働いている。
クウェート国籍を持つ者は無制限で政府は雇用する仕組みになっていて、「無教養なクウェート人のほとんどが政府の役人になる」というのが実態である。
細かく見ていくと、クウェート人のうちわずか2.7%しか生産部門には従事していない。
クウェートの1人あたりのGNPは、1990年に13700ドルで、世界でも屈指である。
これは全人口で割ったものなので、第1級クウェート人なら数百倍になるだろう。
イラクがクウェートに侵攻した時、クウェートはあっさり崩壊したが、その背景にはこのような歪んだ社会があった。
(2014年8月20~21日に作成)