(『イスラム・パワー』松村清二郎著から抜粋)
レバノンには、18の宗教が存在する。
マロン派キリスト教、スンニ派、シーア派、ギリシャ正教などである。
一番古いのはギリシャ正教で、現在でも沿岸都市にいる。
その後、マロン派キリスト教徒が、7~8世紀に北部山岳地帯に定着した。
同派は、1736年に「ローマ法王の宗主権を認める」協約を結んだ。
スンニ派は、港湾都市の商人階層である。
オスマン帝国時代などを通じて、「体制派」として存続してきた。
シーア派は、南北の山岳地帯などに散在し、最低水準の生活を強いられてきた。
十字軍の遠征時代以前は、この地域で最大の宗派だったようだが、13世紀のエジプト・マムルーク朝の侵攻以後は、弱者の地位にある。
ドルーズ教(イスラム教ドルーズ派)の人々は、シェーフ山岳地域にこもって、独自性を保ってきた。
宗教・宗派の対立は、レバノンでは昔からあると誤解される恐れがあるが、山岳部が多いため国を統一するのは困難であり、『各種のコミュニティが共生・共存する複合社会』だった。
18世紀初めまで、レバノンでは武力抗争が繰り返されたが、それは宗派対立ではなく「部族対立」が原因であった。
『複合社会』だったのは、オスマン・トルコ帝国の間接統治の所産でもあった。
(2013年4月9日に作成)