(『イスラム・パワー』松村清二郎著から抜粋)
初代国王のイブン・サウード以来、サウジの歴代の国王は「部族的な大王」として行動してきた。
国王には、いかなるサウジ人でも謁見の間で会うことが出来る。
こうした部族的慣習を守ってきた事が、遊牧民の伝統が支配しているこの国において、人々の忠誠心をもたらしてきた。
サウジは地政学的に外界から孤立しており、保守的で半鎖国的な孤立主義がある。
サウジは石油が国際商品だが、米系メジャー会社に依存していたので、サウジ政府は石油の間接当事者に留まっていた。
しかしながら、1960年代以降に産油量が飛躍的に増大して、国庫収入が天文学的な伸びを見せると、様々な社会変動が起きた。
それは、「商業・金融の発展」「労働力の海外からの流入」「テクノクラートの台頭」「都市人口の増加」「部族社会の比重低下」「メディアの影響力の増大」などである。
1971年のOPECテヘラン交渉で、産油国と石油メジャーの力関係は劇的に逆転した。
自信をつけた産油国たちは、石油利権に「事業参加」し始め、主体的に関与するようになった。
それと同時に、サウジは外部世界との接触が急速に進展した。
かくしてサウジは、閉鎖的な孤立主義からの脱却を余儀なくされた。
(2013年3月28日に作成)