(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)
北のナイジェリアからガボンを経て南のアンゴラに至る、アフリカ大西洋岸は、大石油産地であり、アメリカと中国の石油輸入量の6分の1を供給している。
しかし同地域は、貧困と不平等がはびこっている。
1994年にフランスで起きたエルフ・アキテーヌ社の事件は、フランスの政界や情報機関とガボンのオマール・ボンゴ大統領をつなぐ、巨大な腐敗システムを明らかにした。
ガボンは、1960年にフランスから独立した。
当時この地は、有望な産油地となってきていて、フランスは自分の言う事を聞く人物を大統領にしようとした。
オマール・ボンゴは、少数民族の出身で国内に支持基盤がなく、うってつけの人物だった。
ボンゴは32歳で大統領になり、フランスは彼を守るために、官邸と地下トンネルで繋がる兵舎にフランスの部隊を置いた。
このフランス軍はきわめて効果があり、ボンゴは2009年に死去するまで大統領の座にあり続けた。
こうした現実を、現地のジャーナリストは「フランスは玄関から出て行って、横手の窓から戻ってきた」と表現する。
ボンゴは、フランス企業に資源採掘の独占権を与えた。
さらに、グローバルな脱税ネットワークの一員にもなった。
ガボンは、1970年代には、フランスの右派政党「RPR」の秘密の資金調達地になっていた。
フランスの最大手の企業グループであったエルフ・アキテーヌ社は、ガボンで作った裏金を各国への賄賂にも使っていた。
元下着モデルのクリスティーヌ・ドヴィエは、ミッテラン政権の外務大臣だったローラン・デュマの愛人であった。
台湾へのフリゲート艦の売却に反対していたデュマを説得しようとしたエルフ社は、クリスティーヌに600万ドルを渡して説得を依頼した。
彼女は逮捕され、5ヶ月半を刑務所で暮らした後に、「共和国の娼婦」という暴露本を出してベストセラーとなった。
このスキャンダルの後、エルフ社は民営化されて、今ではトタル・グループの一部門になっている。
ニコラ・サルコジが2007年にフランス大統領に就任した時は、最初に電話した外国首脳はアメリカやEUのリーダーではなく、オマール・ボンゴだった。
アフリカの不幸な現状には、1つの共通点がある。
それは、資金がアフリカから流出し、ヨーロッパやアメリカに流入している事である。
(2014.3.8.)