(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)
グローバルなオフショア・システムは、金融・経済危機の主因となっている。
金融規制の緩和が進んだ結果、「成長しすぎてつぶせない銀行」が生まれ、銀行が政治を牛耳る力を手にしている。
巨額の違法資金は、アメリカやイギリスのような赤字国に流入し、マクロ経済の不均衡を生んでいる。
多国籍企業は資産を各地のオフショア地に分散させたため、各地(各国)の相互不信をかきたてて、危機を深刻化させた。
エンロン、リーマン・ブラザーズ、AIGなどの金融不正を行った大企業は、オフショアに深く関わっていた。
きちんとした企業は、「租税は社会への利益分配だ」とわきまえている。
1950年代に生まれたロンドンのユーロダラー市場(巨大な無規制の脱税市場)は、アメリカの銀行に規制から逃れる基盤を提供した。
(1929年に始まった)世界大恐慌の前にあった、ウォール街とシティ・オブ・ロンドンの同盟関係は、こうして復活した。
金融業はワシントンの政治を乗っ取り、大きすぎて潰せない銀行が登場した。
やがて、アメリカは自らオフショア地域となり、大量のマネーがアメリカに入ってきて、銀行の力を強化した。
1980年代に入ると、イギリスやアメリカのオフショア・ゾーンは、脱税や犯罪よりも金融規制から逃れるために、利用される事が多くなっていく。
オフショア・システムが世界各地に拡がるにつれて、新しいタイプの弁護士・会計士・銀行家が登場した。
多くの人は、「金融の規制を無くせば、グローバル経済の効率が高まり、人々は豊かになる」と思っていた。
だが現実には、富は上方に、リスクは下方に分配され、グローバルな犯罪が増加した。
実際に起こっていたのは、アメリカのニューディール政策の原則やヨーロッパの社会民主主義への攻撃だった。
(2014.3.10.)