(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)
メディア王のルパート・マードックが持っている親会社「ニューズ・コーポレーション」は、オフショア活動の達人で、同社の公表する利益は毎年5億ドル以下である。
エコノミスト誌は1999年に、「ニューズ・コーポレーションに適用されている税率は、わずか6%だ」と書いている。
企業の脱税は、このように行われる。
多国籍企業のルクセンブルクにある金融子会社が、ホンジュラスの子会社に融資して年間200万ドルの利子を取るとしよう。
ホンジュラスの子会社はその額を支出にできるし、ルクセンブルクの子会社はきわめて低い税率で課税されるだけである。
(ルクセンブルクは税率が低い)
多国籍企業は、「移転価格操作」も多用する。
子会社同士で取引をし、中国のトイレットペーパーを1kg当たり4000ドルで買ったり、トリニダードからボールペン1本を8500ドルで仕入れたりするのだ。
世界の国をまたぐ貿易は、全体の3分の2が多国籍企業の内部で起きている。
この価格操作のために、途上国は毎年1600億ドルの税収を失っている。
イギリスでは、2007年には大手700社のうち3分の1が、まったく税金を払わなかった。
この移転価格操作は、多国籍企業が速いペースで成長する理由の1つなのだ。
多国籍企業は、租税回避に精力を集中して、良い製品やサービスの提供を忘れがちになる。
今の企業や資本は、最大の税控除が受けられる所に移動している。
1966年に、チェース・マンハッタン銀行のニューヨーク本店で働いていたマイケル・ハドソンは、「石油会社のロビー活動を手助けするために、石油産業の国際収支を研究しろ」と命じられた。
ハドソンは、チェース頭取であるデイビッド・ロックフェラーの計らいで、スタンダード・オイル・ニュージャージー(現エクソン・モービル)の財務部長ジャック・ベネットに話を聞けた。
ハドソンは、「どの部門が利益を上げているのか?」と質問した。
ベネットの答えはこうだった。
「利益は、正にここ、私のオフィスで作られる」
彼は、移転価格操作のことを言っていた。
『移転価格操作』とは、多国籍企業が世界各地のタックスヘイブンの口座間で資金を移動させて、利益を税率の低い国に、コストを税率の高い国に移すことである。
ベネットはハドソンに、利益を世界中の子会社間で移動させている事を説明した。
無税国であるパナマやリベリアで登記している子会社に原油を安値で販売し、その子会社は高値で精製部門や販売部門の子会社に売るのだ。
こうして多国籍企業は、脱税をしてきた。
(2014.3.8.)