アメリカ圏のタックスヘイブン③
債券利子への課税免除、QI制度

(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)

アメリカ企業が発行する社債は、利子に30%の税が課せられていた。

そのため、多くの海外投資家は敬遠していた。

そこでアメリカ企業は、オランダ領アンティルにオフショア子会社を設立し、そこで非課税のユーロボンドを発行して資金を調達するようになった。

アメリカはアンティルと租税条約を結んでおり、アンティルからの所得には課税されない。

カーター政権は、タックスヘイブンについての調査をし、『ゴードン・レポート』としてまとめた。

このレポートは、レーガンが大統領になる1週間前に発表され、「アメリカが世界の先頭に立って、タックスヘイブンを取り締まること』を提言した。

しかし、レーガン政権は無視した。

1984年になると、アメリカの債券を海外投資家が買った場合、利子への課税は免除される事になった。

この抜け道は、富裕なアメリカ人も、もちろん利用した。

海外のオフショアを経由して、外国人のふりをしたのである。

これは、典型的なタックスヘイブンの手法である。

外国人に対して税を免除し、外国からマネーが流れ込むようにするのだ。

1990年代の後半になると、財務長官のロバート・ルービン(元ゴールドマン・サックス会長)が、『適格仲介人(QI)制度』を創り、脱税の仕組みをさらに進めた。

アメリカの税務当局は、海外にあるアメリカ人の口座を調査しているが、その過程で外国人の脱税を見つけたら、租税条約によって外国政府に報告する義務がある。

そこで解決策として、アメリカ人の口座の調査を、外国の銀行に委託したのだ。

委託された銀行は、外国人の情報はいっさい伝えない。

だからアメリカ政府は、外国人の脱税を見つける事はなくなる。

マイケル・J・マッキンタイア(国際課税の専門家)

「QI制度は、アメリカが脱税者を突き止めにくくするように設計されたいた。

この責任逃れは、アメリカの借り手が脱税者から低い利率で借金するためだった。」

これもまた、典型的なタックスヘイブンの手法である。

タックスヘイブンは、外国と情報交換を義務づける条約を締結し、それから情報を持たないようにする仕組みを築く。

デイヴィッド・ローゼンブルーム

「QI制度は、アメリカ人の脱税者と見つけるものではなく、外国人がアメリカに投資し易くするものだった。」

クリントン政権は、二期目の終わり近くになって、『OECD諸国の市民がアメリカに持っている銀行口座について、それらの国に情報提供をすること』を定める法案を提出した。

しかし銀行が猛烈な反対をし、息子ブッシュ政権は法案を撤回した。

(2014.8.23.)


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