BCCIの不正事件 イギリスが背後に見える

(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)

国際商業信用銀行(BCCI)の不正事件は、有名である。

この事件の発端は、アメリカ上院の外交委員会の調査官だったジャック・ブラムが、1988年に不正に気付いた事だった。

ブラムは、ロッキード事件の解明に尽力し、アメリカ国際電信電話会社(ITT)がチリのアジェンデ政権を倒そうとした事件や、IOSの摘発にも関わった男である。

イラン・コントラ・ゲートの調査もした。

ジャック・ブラム

「いろいろと調べていくうちに、麻薬は不正の一部にすぎないと
 分かってきた。

 ケイマン諸島を調査したら、これは全部が簿外のマネーだと
 気付いた。

 オフショアは、企業の帳簿がでっち上げられる場所なんだ。」

BCCIは、インド生まれの銀行家であるアガ・ハッサン・アベディによって、1972年に設立された。

出資者には、サウジアラビアの王族や、アブダビ首長などが名を連ねた。

BCCIは、有力者たちに近づき、何でもする事で急成長していった。

政治家にたっぷり賄賂を贈り、サダム・フセイン、アブ・ニダル、コロンビアの麻薬組織メジデン・カルテル、アジアの麻薬王クン・サなど、悪党たちにサービスを提供した。

BCCIは、核物質の取引に関わったこともあるし、北朝鮮のスカッド・ミサイルをシリアに売り込んだこともある。

さらには、アメリカにも進出して、ワシントンやCIAとも協力関係を築いていた。

ジャック・ブラム

「ワシントンの至る所に、BCCIは素晴らしい銀行だと主張する者がいた」

ブラムの友人は「命の危険がある」と警告したが、彼はマンハッタン地区担当の連邦検事であるロバート・モーゲンソーとチームを結成した。

そして、BCCIを調べ始めた。

アガ・ハッサン・アベディは、BCCIを2つに分割して、それぞれの持株会社をルクセンブルクとケイマン諸島に登記していた。

そして、シティ・オブ・ロンドンに本店を構えて、イギリスの保守党に多額の献金をした。

BCCIは、一部の顧客には自己資本の3倍も貸し付けていた。

アベディは、友人たちの借金は帳消しにしていたが、ポンジ・スキームで誤魔化していた。

(ポンジ・スキームとは、運用益ではなく投資家から集めたカネを配当にあてて高いリターンを装う、投資詐欺のことである)

BCCIは、見かけ上はロンドンに本店があり、アラブの首長たちが後ろ盾になっているため、疑う者は少なかった。

ロバート・モーゲンソーは、ケイマン諸島とイングランド銀行に協力を求めたが、断られた。

イングランド銀行に「行動しないなら世論に訴える」と圧力をかけ、ようやくBCCIの営業停止に同意させた。

モーゲンソーは1991年に、BCCIを営業停止に追い込み、同行の創業者たちを起訴した。

すでに1990年に、BCCIの社員たちは、イギリスの閣僚やイングランド銀行に「詐欺をしている」と手紙を送っていた。

この年には、イギリスの諜報機関がイングランド銀行に、「テロ組織のリーダーであるアブ・ニダルが、BCCI本店の42の口座をコントロールしている」と知らせていた。

さらに監査法人のプライス・ウォーターハウスは、「ナクヴィ・ファイル」と呼ばれる隠しファイルを見つけて、「不正行為をしている」とイングランド銀行に伝えていた。

だがイングランド銀行は、モーゲンソーが圧力をかけるまで何もしなかったのだ。

BCCIに関する報告書の全文は、イギリス政府の「国際社会を動揺させる」という理由で、今日でも機密扱いになっている。

これは、ロンドンがタックスヘイブンだと認めているようなものだ。

(2015.2.2.)


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