途上国がいつまでも貧しいのは、資本が流出しているから
国を売ってカネを得る指導層が根本の原因

(『タックスヘイブンの闇』から抜粋)

1990年代の初めに、アフリカの産油国アンゴラで、スキャンダルが表に出た。

当時のアンゴラは内戦になっていて、アンゴラ政府は国際社会から武器禁輸の措置を受けていた。

そのため政府は1992年に、フランスのエルフ・アキテーヌ社の秘密ネットワークに頼り、武器購入を仲介してもらう事にした。

武器はスロバキアの会社から調達することになり、アルカディ・ガイダマックというロシア生まれのユダヤ人がカネを立て替えて、返済はオイルマネーでジュネーブ経由で行われた。

この秘密取引を調査したフランスの判事たちは、「最大で65%のマージン(手数料)が発生していた」との証言を得た。

この事件は、『アンゴラ・ゲート事件』と呼ばれている。

ガイダマックは国際指名手配され、モスクワに潜伏した。

彼はイスラエル政界への進出を目指したが、失敗に終わった。

冷戦終結時に、アンゴラはロシアに対して60億ドルの債務を抱えていた。

この債務の再編についても、ガイダマックが仲介した。

その結果1996年に、「債務は15億ドルに減額。ガイダマックの会社であるアバロン社を経由して、オイルマネーで返済する。」と決まった。

スイスのUBS銀行が支払いの経由先となったが、スイスの判事が調査に乗り出した。

その結果、『ガイダマック名義の口座への6000万ドルを超える送金、アンゴラの高官たちの口座への数千万ドルの送金、ロシアの新興財閥への5000万ドルの送金』が見つかった。

これらのカネは、スイス、ルクセンブルク、イスラエル、ドイツ、オランダ、キプロスの様々な口座に送金されており、ロシアの国庫には入っていなかった。

要するに、アンゴラの指導者たちがロシア財閥やオフショア仲介者と結託して、莫大なカネを不法に得ていた。

こうした話は、その気になればいくらでも挙げられる。

発表された調査結果も、それを物語っている。

2010年3月に、グローバル・ファイナンシャル・インティグリティが出したレポートでは、こう報告されている。

『1970~2008年の間にアフリカから違法に流出したカネは、控え目に見ても8540億ドルで、1兆8000億ドルに上る可能性もある』

このレポートでは、「アンゴラが1993~2002年の間に失ったのは、46.8億ドルだった」と推定している。

何十億ドルものカネが、不法にオフショアに消えたのだ。

2008年4月に、マサチューセッツ大学アマースト校が、1970~2004年のアフリカ40ヵ国の資本流出を調査した。

その結果は、「この35年間で40ヵ国からは、4200億ドルが流出した。利子を含めれば、6070億ドルになる。」だった。

その40ヵ国の対外債務は、合計で2270億ドルである。

報告書は、「アフリカの対外資産は、債務を大きく上回っている」と書いている。

要するに、『アフリカの対外資産は一部の富裕層が独占しており、債務は政府を通じて国民が負担している』のだ。

それにより、一般の人々は貧困を強いられている。

1980年代からこの問題を調べてきたジェームズ・ヘンリーは、こう言う。

「この問題の根本原因は、エコノミストの作り話だ。

 彼らの話は、起きた事の暴力的な面をすべて無視している。」

ヘンリーは、2003年に「The Blood Bankers」を著した。

そこでは、オフショアの銀行のせいで危機に陥る途上国のエピソードが書かれている。

銀行はまず、途上国に多額のカネを貸し付ける。

そして、その国のエリート達にカネの略奪方法を教え、オフショアへ持ち出す方法を教える。

その後、途上国は債務が返済できなくなるので、銀行はIMFと協力して脅し、外国資本に市場を開放させる。

(そして産業を乗っ取り、事実上の属国にする)

フィリピンでも、50億ドルの外国からの融資が、富裕層の口座に吸い込まれた。

フィリピンでは今なお、その借金を返済し続けている。

少なくとも36億ドル分は、マルコス大統領とその友人たちが着服した。

ジェームズ・ヘンリー

「1970~80年代に、アメリカなどの先進国は、途上国への
 借款を増大させた。

 その事が、グローバルなタックスヘイブン・ネットワークの
 基礎を築いた。

 債務の多い国では、借りたカネの半分以上が、1年以内に裏口
 から国外に出ている。

 途上国の公的債務は、その国のエリートたちがタックスヘイブン
 に貯め込む資産と、ほぼ一致している。」

今日の途上国では、所得上位1%の世帯が、個人資産の70~90%を所有している。

そして、これらの資産の半分以上は、国外のオフショアに置かれている。

1982年にメキシコのポルティージョ大統領は、議会でこう演説した。

「この国の多くの富は、プライベート・バンクによって指導された
 一部のメキシコ人が奪い去ってきた。

 それを打破するため、IMFの指示を無視し、銀行を国有化し、
 為替管理を導入する。」

だが、銀行・財界・保守派の攻撃により、10日もしないうちに彼は主張を撤回させられた。

マイケル・ハドソンは、1989年に資産運用会社に採用されて、途上国の国債に投資するソブリン債券ファンドを組成した人だ。

ハドソン

「当時は、アルゼンチンやブラジルのドル建て国債は、
 リスクプレミアム(上乗せ金利)が高かった。

 45%近い利回りだったんだ。

 私が組成したファンドは、オランダ領アンティル諸島で
 法人化されたのだが、こうした国債を買って、初年度から
 高い運用成績をあげた。

 運用していて気付いたのだが、最大の顧客はその国の政府
 関係者だった。

 彼らは、自国の中央銀行がきちんと債券を償還することを
 知っていて、このファンドに投資したんだ。

 中南米諸国のヤンキー債(リスクの高い債券)を買うのは、
 外国に口座を持つ現地の財閥だった。

 主な受益者は、オフショアに逃げていた自国の資本家だった
 んだ。

オフショア・システムは、現地のエリートたちを不法行為にいざなっている。

エリート達がカネを自国に置いておかなければならなくし、きちんと税金を支払わせるようにすれば、その国は豊かになる。

(2015年2月2日に作成)


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