(『週刊文春2023年12月28日号』から抜粋)
未承認国家として、「沿(えん)ドニエストル共和国」が存在する。
沿ドニエストル共和国とは、モルドバの東部を流れるドニエストル川の沿岸国という意味である。
モルドバは、元はルーマニアの一部だった。
ルーマニアは、第二次大戦でドイツ側に付き、ソ連と戦って負けた結果、東部をソ達に割壊した。
これがモルダヴァア共和国となり、ソ連の共和国の1つになった。
1991年にソ連が崩壊すると、独立してモルドバ共和国となった。
ソ連の時代に、ドニエストル川沿いは、火力発電所や製鉄所が建設され、ロシアから大量の移住があった。
これはウクライナ東部に、ソ連の時代にロシア人が多く移住したのと同様である。
モルドバがソ連から独立した際、ドニエストル川沿いに暮らすロシア人達は反発し、モルドバからの独立を宣言した。
これが「沿ドニエストル共和国」である。
モルドバはこの独立を認めず、武力で解決しようとしたが、ロシア軍が介入して戦争となった。
1992年に停戦となり、沿ドニエストル共和国は独立した。
現在も沿ドニエストル共和国には、 ロシア軍の1500人が平和維持軍の名で駐留している。
沿ドニエストル共和国は、各所にロシア軍の基地がある。
沿ドニエストル共和国は、ソ連への郷愁が強く、多くの国民が「皆が平等で、あくせく働かなくても社会保障が充実していた、ソ連時代が懐かしい」と語る。
現在の人口は46万人。
首都の中心部にはレーニン像が今も立っている。
ロシアは沿ドニエストル共和国を国家として承認し、天然ガスを無償で供給している。
同共和国は、これを火力発電に用いて、電力をモルドバに売っている。
モルドバとは対立しているようで、実は商売相手である。
ロシア軍がウクライナに侵攻したウクライナ戦争では、ロシア軍はオデーサを占領できる所まで近づいている。
オデーサを占領したら、すぐ西の沿ドニエストル共和国とつなげたいらしい。
そうすればウクライナは黒海から切り離された内陸国になり、経済が衰退する。