(『チョムスキー、世界を語る』から抜粋)
チョムスキー
聖書に出てくる「預言者」とは、実は「知識人」のことです。
ヘブライ語の聖書には「ナビ」という単語が出てきて、「預言者」と訳されますが、実は「知識人」を指す語なのです。
彼らは情報を収集し、人間の問題に真剣に取り組みました。
ところが現代の「著名な知識人」は、これとは全く別の存在です。
彼らは、それぞれの権力構造の中にいます。
預言者と呼ばれた人たちは、政治や道徳の問題の解決に尽力しました。
しかし、彼らは人々の憎しみを買い、投獄されたり追放されたりしました。
というのも、彼らは反体制的な存在だったからです。
何世紀も経ってから、彼らの価値が認められ、預言者となったのです。
20世紀においても、知識人はソ連圏では投獄され、アメリカ圏では暗殺されました。
例えば、エルサルバドルの6人のイエスズ会士がそうです。
彼らは、アメリカ軍の訓練を受けた特殊部隊に射殺されました。
(1981~92年のエルサルバドルの内戦において、アメリカは軍事政権を支持した。そして兵士をアメリカで訓練した。
内戦では8万人が死に、89年11月にはイエスズ会士の暗殺事件もあった。
中南米では、神父が社会改革の先頭に立つことが多い。)
知識人への弾圧は、スターリン後のロシアよりも、現在のアメリカ圏のほうがずっと酷いです。
アメリカ国民が、このイエスズ会士の暗殺事件を知っているか。
答えはノーです。
その一方で、東ヨーロッパの反体制派については知っているのです。
質問者
あなたは、真実をどう定義なさいますか。
チョムスキー
正確な説明に接するとき、人は真実に接するのです。
(2014.5.22.)