アメリカの誤った政策⑤
国内政策について② 医療制度

(『すばらしきアメリカ帝国』から抜粋)

チョムスキー

アメリカの医療システムは、非効率で先進国の中では最悪です。

非常に多くの経費をかけているのに、成果は挙がっていません。

その原因は、製薬会社の強大な力と、民営化された医療システムです。

息子ブッシュ政権は、メディケード(低所得者への医療扶助制度)を削減すると発表しました。

こんな状況ならば、反乱が起きたり、経済破綻するかもしれません。

私が勤めているMITのクリニックのスタッフに聞いたら、「勤務時間の40%を書類の記入に充てており、常に監督されコントロールの下にある」との事です。

不必要な事務作業をこなすために、膨大な時間を費やしています。

こんな経験があるでしょう?

あなたは何かを解決したくなり、ある番号に電話します。

すると、「ご利用ありがとうございます」との録音音声が聞こえてきて、メニューを告げられるのです。

それは分かりづらく、その上あなたの要望はメニューに無いという始末です。

結局は誰かが電話に出るまで待つ事になります。

かつてならば、電話を掛けて担当者と話し、2分で解決しました。

こうした企業のコスト削減は、コストが消費者に転嫁されます。

そして経済活動としては、ひどく非効率です。

最近の調査に、「アメリカとカナダの医療を比較する」というものがありました。

そして、「アメリカが毎年に数千億ドルも無駄をしている」と明らかになりました。

カナダの病院では、請求書の作成部門は地下の小さな事務室にありました。

ところがアメリカの病院では、会計士・コンピュータ・書類だらけの作成室が1つの階を占めていました。

私は数ヶ月前に、鼻血に悩まされて医療センターに行きました。

そこで2~3時間待っていると、やっと医者がやってきました。

彼は、私が必要とするよりもはるかに高い技術をもち合わせていました。

このようにアメリカの医療は、人々が必要とするサービスを提供する状況にないのです。

ボストンのダウンタウンには、2つの大病院が隣り合わせに存在します。

市営のボストン市立病院と、民営のタフツ医療センターです。

タフツに到着した救急車は、しばしば市立病院へ回されます。

患者が低所得者だった場合には、病院が費用を負担しなければなりません。

そのため、市に支払ってもらおうと、お隣に送り込むのです。

アメリカ国民は、4分の3が医療制度の改革を求めています。

実のところ、アメリカは「破綻国家」です。

形式上は民主制度が整っていますが、機能していません。

「医療の充実が必要だ」と国民の75%が考えていても、無視されるのです。

コメンテーターが「倫理的な価値観」について熱弁をふるう場合、彼らは「同性婚の禁止」を話しています。

「誰もが医療保障を受けられるべきだ」とは述べません。

民主党の大統領候補であるジョン・ケリーは、政治的な支持があまりにも乏しかったために、医療保障の充実に言及できませんでした。

この「政治的な支持」とは、保険業界・金融業界・HMO(会員制の医療団体)・製薬産業の支持を意味します。

医療の改善は、1回のデモでは実現しません。

市民組織・労働組合・政治団体が、常に働きかけるような、機能的な民主主義社会が必要なのです。

(2014.7.13.)


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