(『ノーム・チョムスキー』リトル・モア刊行から抜粋)
チョムスキー
2001年にアメリカでベストセラーになった本があります。
『ブラック・ブック・オブ・コミュニズム(共産主義黒書)』です。
本の中では、共産主義に殺された人の数を、1億人と推定しています。
1億人のうち2500万人は、1958~60年に中国の大飢饉で亡くなったとしています。
著者のセン教授は、こうしたイデオロギーによる犯罪の研究でノーベル賞を受賞しました。
セン教授は、「中国の大飢饉は、イデオロギー制度がそうさせた」と解説しています。
全体主義国家では、国内の情報が中央に入ってきません。
そのため対策を講じられずに、2500万人も餓死したのです。
しかし、まだ話は半分でしかありません。
セン教授は、インドと中国の比較をしました。
イギリス領だった時のインドでは、常に大飢饉に見舞われており、何千万人も死んでいます。
インドは、独立以降は大きな飢饉は無くなりました。
民主主義国家になり、飢饉の情報がきちんと中央に入るようになったからです。
ところが、インドでは死亡率は高いままでした。
その一方で、中国は独立後は急速に死亡率は下がりました。
中国では、独立後に診療所がたくさん作られて、貧しい人々の健康水準が大きく改善されたからです。
インドでは違いました。
資本主義国家では、貧しい人達に何もしません。
セン教授は、「中国は大飢饉で2500万人を葬ったが、同じ人数をインドは8年ごとに葬った」と指摘しています。
1947~80年の間に、インドでは貧困による死者が1億人になりました。
しかし我々は(資本主義の国々は)、これを資本主義の犯罪とは呼びません。
敵側の犯罪しか数に入らないからです。
それに甘んじる事を選択したのは、私たち自身です。
(2015.7.14.)