アメリカの誤った政策⑪
国連安保理で拒否権を連発

(『ノーム・チョムスキー』リトル・モア刊行から抜粋)

質問者

なぜアメリカは、しばしば国連の安保理の決議に反対するのでしょうか。

チョムスキー

世界の国々が賛成なのに反対するのは、大抵はアメリカです。

社会主義陣営が崩壊するまでは、「国連の活動を阻害しているのはソ連だ」という一般的な了解が(西側諸国には)ありました。

だからソ連が崩壊した時、ニューヨーク・タイムズ紙にはこんな記事が載りました。

「ついに国連は、ソ連の拒否権が無くなるので機能するだろう。」

拒否権の記録を見てみると、1940年代後半~50年代初めには、ソ連が何度も行使しています。

理由は単純で、アメリカが国連を自分の道具として使っていたので、ソ連は多くの決議を拒否したのです。

1950年代に入ると、状況は変わりました。

植民地の独立が進み、第二次大戦のダメージから他の先進国も復活してきました。

1960年代になると、アメリカは国連をコントロールできなくなりました。

1960年代から現在まで、最も拒否権を行使しているのはアメリカです。

2位はイギリスで、かなりの差があってフランスが3位、ロシア(ソ連)は4位です。

実際の構図は、多くの人が考えているのと違うのです。

質問者

アメリカは、ヨーロッパの意見も無視しますね。

チョムスキー

アメリカ政府は、自国民の意見すら無視します。

国民の多くは、パレスチナ問題についてサウジアラビアのプランを支持するでしょう。

しかし政府は反対しているし、国民にはそれが知らされていません。

質問者

アメリカが変わる可能性はあるのでしょうか。

チョムスキー

アメリカは変わってきました。

例えば、今では武器の輸出に関して、人権を考慮しなければならなくなりました。

アメリカ国民は文明的になってきて、政府の暴力に束縛を課しています。

世界最強の国に束縛を与えられるのは、外部にはあり得ません。

しかし、内部から束縛することは可能なのです。

(2015.7.16.)


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