(『チョムスキー、世界を語る』から抜粋)
チョムスキー
金融資本の力は、政治権力(政府)から生じるのです。
技術革新を促進する最大の原動力は、政府にあります。
アメリカの民間航空機の製造は、エアバス社とボーイング社が握っていますが、両社ともに莫大な公的資金の投入を受けています。
この2社の民間用飛行機は、軍事用が姿を変えたものと言っていいです。
たいていの分野は、最初は公的資金で研究・開発が進められます。
その後で民間企業に譲渡され、寡占状態に移行します。
マイクロソフト社、ボーイング社、IBM社は、アメリカ政府が作ったも同然です。
未来のテクノロジーに関わる最先端の分野は、大半は官の(公的資金の)研究・開発の産物です。
インターネットも、官の研究・開発から生まれたものです。
1995年に民間に委ねられましたが、この移管についてはどういう手順で運ばれたのか、いまだに不透明な部分が残っています。
エコノミストや知識人は、技術革新があると「市場原理の奇跡だ」とか「企業精神の賜物だ」と言いますが、新しいテクノロジーは国家によって支えられているのです!
国防高等研究計画局(DARPA)は、ペンタゴンに属する機関ですが、インターネットを開発したのはここです。
現在はバイオテクノロジーに資金提供をしています。
納税者は、知らないうちに資金を提供させられているのです。
(1957年にソ連が、世界初の人口衛星スプートニクの打ち上げに成功すると、アメリカはNASAを設立し、国防省内に「高等研究計画局(ARPA)を設置した。
ARPAは民間の科学研究に資金提供をする機関で、後にDARPAに改称した。)
(2014.5.23.)
(『ノーム・チョムスキー』リトル・モア刊行から抜粋)
チョムスキー
アメリカでは軍事産業は、実質的にはすべてのハイテク産業と結びついています。
軍需生産は、ハイテク産業を隠れ蓑にしてきました。
コンピュータ、通信技術、インターネットなど、あらゆるエレクトロニクスがそうです。
アメリカ政府の支出を調べてみると、この数年間は「生物学」への支出が急増しています。
ですから将来は、生物学の産業が最先端になっていくでしょう。
バイオテクノロジーや遺伝子工学といった産業です。
今は、その分野にお金を注ぐために、「バイオテロとの戦い」という口実が使われています。
その口実の下に行われている事実を見たら、きっと驚かれるでしょう。
例えば、アメリカは「反バイオテロ条約」の構築をする国際的な取り組みに、反対してきました。
反バイオテロ条約ができたら、アメリカの製薬業界とバイオテクノロジー業界が困るからです。
アメリカは、遺伝子操作によって、炭疽症の抗ワクチン種(ワクチンの効かない炭疽症)を作ろうとした形跡があります。
これは国際的に禁止されているのですが、どうもアメリカは作っているようなのです。
(2015.7.15.)