無人攻撃機のプレデターとリーパー

(『エリア51』アニー・ジェイコブセン著から抜粋)

2000年頃になると、CIAはレーザーで誘導する精密ミサイル(ヘルファイア・ミサイル)を搭載した無人機「プレデター」を完成させた。

この無人機も、ネヴァダ州のエリア51でテストが行われた。

CIAはプレデターでテロリストを殺害しようと計画していたが、レーガン大統領が出した大統領命令12333号により、諜報機関が標的を絞った殺人に手を染めることは禁じられていた。

これが息子ブッシュ政権になると、変更された。

プレデターの存在が世界中に知れわたったのは、2002年11月にイエメンでアルカイダの幹部を殺害した時だった。

イエメン人のアル・ハラシーらは、プレデターが発射したミサイルで一瞬にして灰となった。

この殺害はあまりに劇的だったため、国防次官補のポール・ウォルフォウィッツはCNN出演時に自慢した。
「イエメンでの無人機攻撃は大成功だった」と。

これに慌てたのがイエメン政府だ。
「アメリカと結んだ守秘義務契約に違反している」と訴えた。

イエメン政府は作戦の内情をぶちまけて対抗することにし、「イエメン駐在のアメリカ大使であるエドマンド・ハルが、この暗殺計画の首謀者だった」と暴露した。

こうしてアメリカ政府が、「標的を絞った暗殺」を画策してきたことが明らかになった。

だが、イエメンでの無人機攻撃は続き、何百もの攻撃が行われていった。

アフガニスタンでも、アル・ハラシーらを殺害した翌週に、アルカイダのナンバー3とされるモハメド・アテフがプレデターに殺された。

プレデターの正式名称は「RQ-1プレデター」である。

Rは偵察、Qは国防総省の無人機システムを意味する。

製造を担当したのは、ゼネラル・アトミックス社だ。

プレデターの改良型が、「MQ-1」(Mは多用途の意)で、死神を意味する「リーパー」と名付けられた。

クリーチ空軍基地に勤めるマイケル・ルイス大尉は言う。

「プレデターは90kgしか搭載できないが、リーパーは1.5トンまで搭載できる。

そのうえリーパーはヘルファイア・ミサイル以外に、複数のGBU-12レーザー誘導爆弾も搭載できる。」

2004年3月29日に、イラク北部にあるブラド米空軍基地のまわりを偵察していたリーパーが、道路に簡易爆弾を仕掛けている3人を見つけた。

フランク・ゴラン准将は攻撃を許可し、ヘルファイア・ミサイルが発射され、たった1発で3人は殺された。

ゴランは言った。
「この攻撃は、我々は見ているというメッセージになる」

同じ頃、CIAと空軍はパキスタン北西部の部族地帯でも、無人機を使った殺害計画を進めていた。

パキスタンでは、2008年に入ってから無人機の攻撃が本格化し、その年は36回の攻撃が行われ、267人のアルカイダとタリバーンを殺害したと空軍は発表している。

2009年は53回の攻撃数だった。

数々の兵器開発に関わってきたソーントン・T・D・バーンズは、こう述べる。

「イラクとアフガニスタンの上空には、少なくとも15の人口衛星と無数の空軍機がいて、地上兵に24時間休みなく情報を送っている。」

2009年4月に、アフガニスタン上空で新しい無人機が目撃された。

その形は、1944年にドイツのホルテン兄弟が造った全翼機を連想させる。

8か月後に国防総省は「RQ-170センチネル」というこの無人機の存在を認めたが、ロッキード社の「スカンク・ワークス」によって製造されたこの最新型は、名前以外は機密扱いとなっている。

現在の無人機は、サンディア国立研究所とレイセオン社が開発した「SAR(合成開口レーダー)」と呼ばれる画像システムになっている。

この画像システムは、夜の闇でも煙や雲さえ通して、リアルタイムで地上の画像を送ってくる。

画像は、人工衛星を介して、基地で操作しているパイロットに送られる。

例えば中東で飛んでいるプレデターは、エリア51の南50kmにあるクリーチ空軍基地で、椅子に座った空軍パイロットが操縦している。

ちなみにクリーチ空軍基地は、元々はインディアン・スプリングスにある小さな空港だったが、拡張されて空軍基地となった。

この空港は、EG&G社が1954年にレーダー・テスト用の施設を造った場所でもある。

現代の戦争は人工衛星なしには行えないが、米軍の衛星通信の多くは民間業者によって提供されている。

2007年に、中国は自国の人工衛星をミサイルで撃ち落とした。

破壊された衛星は時速2万5750kmだったが、ミサイルは時速2万8970kmで命中した。

その7か月後の08年2月に、北大西洋の米軍艦からSM-3レイセオン・ミサイルが発射され、アメリカの人口衛星を破壊した。

こうやってお互いに軍事力を誇示しているのである。

だが実際のところ、米ソの冷戦の後半期は「宇宙では戦争行為をしない」という暗黙の了解の下で行動していた。

レグホーン大佐は「スパイ衛星は諸政府が受け入れざるをえない空の眼とされている」と解説する。

レグホーンは、1957年に「アイテク・コーポレーション」を設立している。
同社が開発した高解像度の写真システムは、アメリカ初のスパイ衛星であるコロナに搭載された。

CIAは、アイテク・コーポレーションの衛星画像を見て、外国政府の多くが空からの監視を逃れるため、地下に軍事施設を移したことを知ったのである。

(2021年8月15日に作成)


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