(『なぜアメリカはこんなに戦争をするのか』ダグラス・ラミス著から抜粋)
アメリカ軍による、アフガニスタンのタリバン政権への戦争は、明らかに国際法に違反している。
9.11事件は、アフガニスタンが行ったものではない。
タリバン政権は、9.11テロと関わっていなかった。
テロの実行犯とされる者達は、アフガニスタン人はおらず、サウジアラビア人が中心である。
(オサマ・ビン・ラディンもサウジ人である)
アメリカは、テロの主犯をオサマ・ビン・ラディンだと言ったが、その証拠はない。
アメリカ政府は証拠はあると言っているが、その証拠を開示していない。
オサマは、犯行声明を出していない。
アメリカがアフガニスタンに攻め込んだ理由は、「オサマ・ビン・ラディンを引き渡さなかったから」であった。
しかし、犯罪の容疑者を渡さない事が、戦争を仕掛ける理由になるだろうか?
日本政府は、元大統領のフジモリをペルーに引き渡していないが、それを理由にペルーは日本を攻撃してもいいのか?
タリバン政権は、「ビン・ラディンがやったという証拠を見せないかぎり渡さない」と言った。
これは、おかしい主張ではない。
ところがアメリカは、その条件を認めず、証拠も見せない。
タリバン政権は、「それならば、イスラム教の中立的な第三国に引き渡してもよい。アフガニスタン国内で裁判するのでもよい。」と言った。
タリバン政権は色々な条件を出して、交渉をしようとしていた。
ところがアメリカは、「タリバン政権とは交渉はしない」と言い、「引き渡さなければ攻撃する」の一点張りである。
この経過を見ると、アメリカはとにかく戦争をしたかったのだろう。
アメリカはこの戦争の目的を、「テロを地球上から根絶すること」と言明した。
アメリカは、この戦争に負けるだろう。
勝つ見込みのない戦争である。
もし軍事力でテロを抑え込むことが可能ならば、イスラエルはとっくの昔にパレスチナに勝っていたはずだ。
ところが、テロは減るどころか、ますますエスカレートしている。
アメリカは今、世界規模のイスラエルになろうとしている。
テロリストとの戦争は、きりがない。
暴力で抑圧すれば、その暴力に反発して新たなテロリストが生まれる。
アメリカ政府の高官は、「この戦争は、私たちが死んだ後も続いているだろう」と発言した。
彼らは、テロとの戦いが新たなテロを生んでいる事を自覚している。
アメリカ人の一部は、大きな戦争を始める機会を、ずっと待っていた。
9.11事件からアフガン攻撃までの間、ブッシュ大統領やチェイニー副大統領らは、明らかに活き活きしていた。
それは、テレビを見ていれば分かる。
「テロとの戦争」の始まりによって、軍事費は大幅に増えて、軍需産業はボロ儲けである。
軍隊は人気者になり、CIAの活動は再び自由になった。
ブッシュ大統領は一躍して英雄になり、有頂天になっている政治家や軍人がたくさんいる。
ブッシュは9.11事件の直後に、「十字軍」という言葉を使い始めた。
彼の意識には、「聖戦をやっている」という考え方があったようだ。
日本政府もハイテンションになり、自衛隊の軍艦を派遣しようとしたが、アメリカから「ちょっと待て、今はいらない」と言われて帰ってきた。
沖縄タイムスでは、これを「押しかけ支援」と呼んでいる。
小泉純一郎・政権は、戦場で必要だからではなく、自分たちがやりたいために、軍艦を派遣しようとした。
自民党政府が海外に自衛隊を派遣するチャンスを虎視眈々と狙っていた事が、ここから分かる。
日本政府は9.11の数年前から、「日米の新ガイドライン」を作ったりして、着々と準備を進めていた。
2001年9月11日にテロ事件が起きると、ブッシュ大統領は翌12日に『テロとの戦争』を、布告した。
これは、「今まではテロは犯罪として対応してきたが、これからは戦争として扱い、報復戦争で応じていく」という意味であった。
アメリカ政府の顧問であるワーレン・ラドマンは、こうコメントした。
「テロに対する戦争には、ルールは必要ないと思う」
実際にアメリカは、国際法に次々と違反していった。
「先制攻撃をする」「アフガニスタンら戦争をするつもりのない国に攻撃(侵略)する」「戦場で捕まえた人を捕虜として扱わない」「遠隔操作の無人機を使って暗殺を行う」といった事を始めた。
ブッシュ大統領は、「先制攻撃も辞さない」と言っているが、先制攻撃は国際法では明確に戦争犯罪である。
アメリカは、イエメンにCIAの飛行機を派遣してテロ容疑者を殺す、という事も行った。
(2014年6月10日に作成)