(『なぜアメリカはこんなに戦争をするのか』ダグラス・ラミス著から抜粋)
国際刑事裁判所の創設が話し合われるようになると、息子ブッシュ政権は「それを批准しないし、協力もしない」と断言した。
その理由は、正直に説明されている。
「そのような裁判が生まれたら、アメリカ軍やアメリカの政治家が戦犯として訴えられる可能性がある」
ブッシュ政権は、自分たちのやっている事が国際法に違反しているのを分かっている。
2002年1月29日に、息子ブッシュ大統領はアメリカ議会で演説し、「テロに対する報復戦争に、ある国が協力しないならば、アメリカは間違いなく代わりに行動する」と言った。
この言葉は、こういう意味である。
「アメリカ政府が『あなたの国にテロ容疑者がいる』と言ったら、すぐに逮捕して引き渡せ。
そうしないなら、アメリカは軍やCIAを送り込んで、自分で逮捕して連行する。」
実際にアメリカは、アフガニスタンに対してその通りの事をやった。
9.11事件の3日後に、ブッシュ大統領は非常事態(戒厳令)を布告した。
それでどうなるかは、アメリカ国民にもよく分からなかった。
2002年1月29日の演説で、ブッシュ政権が何を目指しているかが見えてきた。
ブッシュは、「今回の戒厳令は、その効力は国外にも及ぶ。もしアメリカに協力しないなら、外国の国民であれ逮捕して軍事裁判にかける。」と脅した。
その前の2001年11月13日に、彼は重要な大統領令を出している。
これは、『テロ容疑者には軍事法廷制度を設ける』というもので、「テロ容疑者には通常の人権を与えないこと」を明記していた。
テロ容疑者には、国際法やアメリカの法律で保障している人権を認めないのである。
軍事裁判制度は、アメリカの憲法を自ら無視するものである。
軍や警察が国民を逮捕する権利を持つのは、その国の中だけである。
しかしアメリカは、全世界に対して「俺がその権利を持っている」と言い始めた。
「世界のどこでも、アメリカは住民を逮捕できる」と主張し始めた。
2002年くらいから、アメリカの学者やジャーナリストたちは「アメリカ帝国」という言葉を使い始めた。
スティーブン・ローゼンという人は、こう書いている。
「アメリカは圧倒的に優勢な軍事力を持ち、それを用いて他の国家に影響力を行使しようとしている。
我々は、帝国である。
我々の目的は、帝国としての位置を維持すること、帝国による秩序を維持することである。」
ソ連が崩壊してから、アメリカは「自分は世界帝国だ」との意識を持ってしまった。
様々な文書によれば、ブッシュ政権は9.11事件の前から、世界の国々に侵攻する計画を持っていたようである。
「父ブッシュの時代からそういう計画を持ち、実行のチャンスをうかがっていた」との暴露文書も出ている。
明るい話もある。
アメリカのジェレミー・リフキンによると「イラク侵攻に反対する声は、アメリカ政府に影響を与え始めている。政府は動揺している。」という。
(この記事は、2003年に書かれたものからの抜粋である)
下院議会でイラク侵攻に反対した票は、二百数十に上った。
その前のアフガン侵攻の時は、バーバラ・リーの1票だけだった。
アメリカを支持している国はイギリスなど少数で、アメリカvs全世界になっている。
リフキンは、「世界中で平和運動をしている人たちに、とても感謝している。それは、とても役に立っている。」と言う。
(2014.6.10.)