(Democracy Now!の動画から抜粋)
(※これは、Democracy Now!が2013年6月10日に放送した番組の、抜粋である)
NSA(国家安全保障局)の監視体制の拡大について、連日の報道をしてきた英国ガーディアン紙は、情報提供者を公表した。
情報提供者は、元CIA職員のエドワード・スノーデン氏である。
彼は4年間NSAに勤務し、最近はブーズアレン社と契約してハワイのNSA支局に勤務していた。
2013年5月20日に香港に飛び、そのまま戻っていない。
NSAは、ベライゾン社に対して秘密の裁判所命令(おそらく偽造した裁判所命令である)を出し、膨大な利用者の通信記録を提出させている。
グーグル、マイクロソフト、ヤフー、アップル、フェイスブックなど、大手ネット企業9社の中央サーバーにアクセスできるプログラム、「プリズム」の存在も明らかになった。
さらには、オバマ大統領がサイバー攻撃の標的リストを作るように求めたこと、も明らかになった。
PCや電話ネットワークから盗んだ膨大な情報を分析する「データマイニング・ツール」の詳細も明らかになった。
極秘の「世界ヒートマップ」には、インターネットから収集した970億件の情報が記されている。
主な標的は、イラン、パキスタン、ヨルダン、エジプト、インドである。
(スノーデンから得たデータを元に)一連の記事を書いたグレン・グリーンウォールド(※以下ではグレンで表記します)による、スノーデンへのインタビューを、ここから取り上げる。
この映像は、昨日(2013年6月9日)にガーディアン紙のウェブサイトに掲載された。
(※ここからは、インタビューに入る)
エドワード・スノーデン
私は29歳です。
ブーズアレン・ハミルトン社に雇われ、ハワイのNSAオフィスに勤務しています。
グレン
諜報機関での経歴は?
スノーデン
私はシステム管理者で、CIAの上級顧問でした。
グレン
告発をするに至った経緯を教えて下さい。
スノーデン
諜報機関のシステム管理者は特権的な立場で、広範な情報に触れられます。
情報の中には、動揺させられるものもあります。
非道なことを頻繁に見せられると、『これは権限の乱用だ』と気付きます。
しかし、それが当たり前になっている職場で問題を提起しても、誰も真剣には取りあいません。
私は、時と共に悪事を働いていると強く感じ、周りに話さずにはいられなかったが、話せば話すほど無視されました。
やがて気が付きました。
『これは、役人や政府に雇われた会社ではなく、社会が判断すべきだ』と。
グレン
監視システムは、アメリカ人も標的なのですか?
スノーデン
NSAは、情報収集しか頭にない。
場所や手段は選びません。
本来の職務は外国情報の収集に限定されていますが、次第に国内に移行して、標的は全ての人の通信になっています。
全ての人から通信を収集し、ふるいにかけて評価した後に、一定の期間で保存します。
それが、いちばん簡単で確実だからです。
アメリカ政府は「外国政府やテロ容疑者を標的にしている」と言っていますが、万人の通信を収集しています。
分析官であれば、どこを標的にしてもいい事になっています。
私には、誰でも盗聴する権限があった。
あなたのメールも読めるし、連邦裁判官や大統領のだって読めました。
グレン
普通だと、内部告発者は名前を隠しますよね。
あなたは名乗り出ました。なぜですか?
スノーデン
皆に動機を説明したかったのです。
私は、毎日オフィスに座り、そこで監視を続けていました。
そして、『こんな政策をしていいのだろうか。社会が判断をすべきだ』と思ったんです。
私が入手して渡した文書の信憑性は、保証します。
何ひとつ変えていないし、生の真実です。
皆で判断してほしい。
政府は隠れて盗聴をし、優位に立っている。
役人は都合の良い事だけをマスコミに伝え、世論を誘導しています。
職権の乱用はまず報じられず、これを暴くのは大切な仕事です。
でも、それをすれば悪者にされます。
「反国家の人物だ」と言われます。
グレン
アメリカ政府がどう反応するかを、考えましたか?
スノーデン
ええ。
CIAの手が回って、どこかの国の監獄に送られるかも。
マフィアを雇ったり、工作員を使ったりしてね。
すぐそこのアメリカ領事館にも、CIAの事務所がある(苦笑)。
世界最強の諜報機関を敵に回して、リスク無しで済むわけがない。
でも、人間には『決断すべき時』もある。
社会の利益に反した仕事をして良い給料をもらう、そしてテレビを見て寝る。
そんな世界を創るのに自分が加担していると気付きました。
次の世代にはこの圧制がますます強化されると分かったら、どんな代償を払ってでも国民が審判を下せるようにしたくなる。
グレン
なぜ、監視行為をそこまで問題視するのですか?
スノーデン
何も悪い事をしなくても、監視・盗聴されているからです。
そして、その記録の保存容量は、毎年ケタが上がっています。
これでは、いずれ誰もが何かの嫌疑をかけられる。
間違い電話1本で容疑者にされかねない。
捜査当局は過去の記録を参照して、あなたの下した全ての決断や交友関係を調べ上げ、攻撃の材料にする。
容疑を作り出して、誰でも犯罪者に仕立て上げるのです。
グレン
私達は今、香港のホテルに居ます。なぜ香港に来たのですか?
「中国に亡命して、アメリカの敵を支援する」という憶測も出ていますが。
スノーデン
まず言いたいのですが、中国はアメリカの敵ではありません。
両国の政府間には対立はありますが、双方の国民は気にしていない。
自由に通商しているし、戦争などありません。
お互いにとって最大の貿易相手です。
香港には、伝統的に言論の自由があります。
中国本土では言論統制がきついけど、香港では街頭デモが昔から盛んで、人々は意見を隠さない。
ネット検閲もない。
それに香港政府は、欧米の政府との関係では独立していると思います。
グレン
もし個人的な利益が動機だったら、持ち出した資料を売れたのではないですか?
スノーデン
もちろんです。
私の技術と職権があれば、機密をロシアに売り渡すのは簡単です。
いつでも歓迎されたでしょう。
私は、NSA関係者の全員の機密にアクセスできた。
他の諜報機関や、世界中にいる秘密工作員についても、所在地や任務を知ることができた。
私はハワイで、特権的な暮らしをしてきました。
これを捨てさせる理由は、人々に真実を知らせたかったからです。
私がいちばん恐れているのは、アメリカが何も変わらない事です。
人々は、メディアを通じてすべてを知るでしょう。
それでも人々が立ち上がろうとせず、議会を動かそうとしないかもしれない。
このままだと、時が経つほど事態は悪化します。
国家による監視を抑制できるのは、国の政策だけなのです。
他の国との合意文書でさえ、法律ではなく『政策文書』です。
新リーダーが選ばれて、「新たな危機が起きている。より強大な政府権限が必要だ。」と言って実行したら、もう手遅れです。
専制政治の始まりです。
○ 村本のコメント
エドワード・スノーデンは、偉大な人物だと思います。
私は、彼の言葉をこの動画で見て、感動しましたよ。
『神との対話』では、「マスター(偉大な人物)はそれまでの常識や概念を否定するので、冒涜者と見られがちだ」と説きます。
彼の場合、まさにそれであり、アメリカ政府は「あいつは犯罪者であり、指名手配する。社会の秩序を乱すとんでもない奴だ。」と宣言しています。
マスターを信じるか、アメリカ政府を信じるか。
そこで、その人が試されるのでしょう。