(Democracy Now!の動画から抜粋)
グレン・グリーンウォルドは、『暴露 スノーデンが私に託したファイル』を、新たに著した。
グリーンウォルドは、NSA内部告発者のエドワード・スノーデンと会合し、託された機密文書を元に、記事をガーディアン紙に連載し始めていた。
『暴露 スノーデンが私に託したファイル』では、新たに多数の文書が掲載(公開)されている。
グリーンウォルドは、ガーディアン紙の一員としてピュリツァー賞を受賞した。
(*ここからは、グレン・グリーンウォルド(以下ではグレンに略)へのインタビューに入る)
質問者
NSAの機密文書について、おさらいしましょう。
グレン
第1報は、NSAによるメタデータ収集でした。
NSAは、すべてのアメリカ人の電話履歴を、毎日収集しています。
このニュースは、アメリカ人に衝撃を与えました。
続いて、監視システム「PRISM(プリズム)」の記事が、世界を震撼させました。
フェイスブック、グーグル、ヤフー、マイクロソフトなどはNSAに協力しており、NSAは楽々と通信データを盗み見ています。
2005年のNSAによる通信傍受事件では、加担していたのはAT&Tやベライゾンといったアメリカ国内の電話会社でした。
今回に明らかになったのは、『大手ネット企業の加担、世界全体への監視』です。
世界の何十億人もが、監視の対象なのです。
明らかになったのは、NSAによる「プライバシーの抹消」です。
世界中のあらゆる電子通信を収集・保管し、必要ならば分析と監視をするのです。
空前の大衆監視体制が、民主主義をうたう国家によってこっそり築かれていました。
質問者
あなたは『暴露 スノーデンが私に託したファイル』で、新たなNSA文書を公表しましたね。
グレン
NSA文書では、「すべてを収集せよ」が掛け声になっています。
ある文書では、「すべてを収集し、すべてを嗅ぎつけ、データを解析して利用せよ」と書いてあります。
実業界との戦略提携を示す文書もあります。
提携企業80社の一覧には、AT&T、ヒューレット・パッカード、オラクル、IBM、インテル、マイクロソフトなど、IT業界の雄が並んでいます。
『通信傍受の目的は、テロ探知や安全保障よりも、経済競争のためであること』が、多数の文書で示されています。
国連などの組織に対しても、アメリカ商務省の依頼で傍受が行われています。
商務省は、NSAのお得意先です。
NSAは、恐るべき計画を立てて、すでに実行しています。
企業や地方自治体は、ネット接続を共有するために、ルーター、スイッチ、サーバーなどのネットワーク機器を購入します。
Ciscoなどのアメリカ企業は、この分野のトップメーカーです。
NSAは、好きな時にこれらの企業を利用します。
狙っている相手から注文が入れば、NSAが納入品に手を加えます。
郵送品を途中で横取りし、NSAの拠点に運んで開封、傍受装置を埋め込んで未開封シールを貼り、配送するのです。
何も知らない企業や地方自治体は、それを利用し、通信はすべてNSAに転送されます。
質問者
傍受装置を埋め込んでいる作業中の写真が、『暴露』には載っていますね。
グレン
NSAの撮った写真です。内部通信にあったものを載せました。
NSAは、「通信傍受の成功例」として、身内に向けて自慢しています。
嬉しそうに、からくりを文章で説明しています。
開封から再梱包までの工程を、写真付きで説明している。
質問者
Cisco製のルーターを、NSAが横取りして手を加える。
これについて、Cisco社は承知しているのですか?
グレン
Cisco社が知っている証拠はなく、被害者かもしれません。
でも同社は、NSAのパートナーの一員です。
質問者
視聴者にはCisco社のユーザーもいます。
対策はありますか?
グレン
正直わかりません。
この件で注目すべき事は、アメリカ政府が以前から、「中国製のルーターやスイッチを買わないように。傍受装置を埋め込んでいるから。」と警告してきたことです。
おかげで中国最大手のファーウェイ社は、悪評で売れなくなり、アメリカ市場から撤退しました。
ところが、アメリカ政府こそが、そうした行為をしていた。
質問者
代わりにCisco製品を買わせて、傍受しようとしたのですか?
グレン
その通り!
世界中で中国製品への警戒を煽り、代わりにNSAが侵入できる製品を買わせるのです。
質問者
NSAとCisco社について、他には情報はありますか?
グレン
システム不具合への対処法を議論した資料があります。
うまく傍受できていないためです。
質問者
ここで、スノーデン氏が出演したドイツのTV番組から、彼の言葉を紹介します。
スノーデン
「アメリカは、間違いなく経済スパイ活動をしています。
例えば、ドイツのジーメンス社に有益な情報があれば、安全保障に関係なしにその情報を盗みます。」
質問者
(スノーデンの言うアメリカ政府の)経済スパイ活動は、行われているのですか?
グレン
はい、アメリカ政府はしています。
アメリカ政府は、「私たちは経済スパイはしていない。それをしているのは中国たちだ。」と主張してきました。
しかし、入手した文書では、アメリカ政府による経済スパイの情報が満載です。
いかに人々を欺いてきたかが、資料に示されている。
ブラジルでは石油企業のペトロブラスを狙い、世界各地で開催される国際経済会議を狙い、世界銀行やIMFを狙い、傍受しています。
NSA文書にも、「NSAの目的の1つは、経済情報の獲得だ」と明記されています。
NSAの顧客は政府機関で、CIAやペンタゴンの他に、農務省や商務省も顧客なのです。
証拠となる文書は、山のように存在します。
質問者
公表した機密文書では、NSAとGCHQ(イギリスの諜報機関)の標的に、ロシアの石油企業ガスプロムや航空会社アエロフロートが入っていますね。
シャノン国務次官補は2009年に、NSA長官への手紙でこう述べています。
「米州首脳会議のための多大な諜報支援に感謝する。
NSAの通信傍受により、参加国の計画や狙いを見抜くことができた。」
このとき傍受した対象には、キューバやベネズエラが挙げられています。
グレン
その米州首脳会議は、ブラジルのルラ大統領の主導で実現しました。
経済条約の締結が目的でした。
シャノンがNSAに感謝を述べたのは、各国の狙いと戦略を教えてくれたからです。
シャノンはその後、ブラジル駐在のアメリカ大使になりました。
質問者
通信傍受が告発された後のブラジルの反応は?
グレン
国民は驚きましたが、政府は無反応でした。
しかし、ルセフ現大統領やペトロブラス社も標的だったと分かると、一転して大問題になりました。
ルセフ大統領は、ホワイトハウスの訪問をとり止め、国連の場でアメリカを非難しました。
質問者
ドイツのメルケル首相も、電話が盗聴されていましたね。
グレン
反応は、ブラジルにそっくりでした。
ドイツ国民への無差別な盗聴に対しては、ドイツ政府の反応は鈍かった。
でも、メルケル首相も盗聴されていると分かると、とたんに大問題になりました。
アメリカとドイツの関係は悪化しています。
質問者
オーストラリア政府の高官が、自国民の監視をアメリカに依頼していたそうですね?
グレン
各国は、法律により自国民の監視はできません。
そのため、他国に監視を依頼するのです。
スノーデンが持ち出した文書によれば、アメリカ政府は他国政府と提携関係を結び、自国民の監視・盗聴を依頼しています。
質問者
飛行機内でのネット接続が可能になりましたが、NSAとGCHQは機内の通信を傍受しているのでしょうか?
グレン
はい、しています。
機内のWi-fiを使ったネット通信を傍受しています。
彼らは、地球上に自分たちが監視できない状況がある事が許せないのです。
だから飛行機も標的になる。
質問者
NSAが標的にしている、大統領や領事館のリストがあります。
ブラジル、ブルガリア、コロンビア、EU、フランス、グルジア、ギリシャ、インド、イタリア、日本、メキシコ、スロバキア、南アフリカ、ベネズエラ、ベトナム、などなど。
収集方法のリストもあります。
PCスクリーン、電磁波感知収集、エアギャップ飛び越え、などです。
詳しく説明して下さい。
グレン
国名リストで重要な点は、多くは民主的なアメリカの同盟国である事です。
それに、そもそも大使館と領事館は、特権を持つ不可侵な場所です。
でも、NSAは傍受を行っています。
「エアギャップ」と呼ばれるネット未接続のPCでさえ、標的にしています。
ネット未接続のPCを、ジャーナリストはよく極秘情報の扱いに使います。
「エアギャップ飛び越え」の唯一の手段は、端末にじかに侵入して装置を埋め込む事です。
NSAはそれを行うため、大使館に忍び込んで監視装置を埋め込むことも実行しています。
質問者
「PCスクリーン」とは?
グレン
PCでやっている作業を、逐一監視できる手法です。
質問者
「電磁波の感知収集」とは?
グレン
電磁波でPCの動作を解析して、機能に侵入して全データを盗み出せます。
質問者
「カスタム」とは?
グレン
これは専門家に聞いても分からない手法で、まだ知られていないものかも。
質問者
2012年10月3日の文書には、「急進派がNSAの標的だ」という記述があります。
グレン
アメリカ政府は、権力に逆らう人々を「急進派」「脅威」と見なしてきました。
権力に逆らう者を、安全保障上の脅威としてきたのです。
NSAの文書では、『急進分子と見なす人々を攻撃するために、情報を集めていること』が示されています。
テロとは無関係なのは分かっているのに、発言だけで過激派と決めつけ、チャットやポルノサイトなどの閲覧履歴を収集しています。
ウィキリークスのサイトを監視して、閲覧者を特定しようとしています。