(以下は『毎日新聞 2013年1月14日』から抜粋)
現在、アメリカの平均寿命は79歳である。
アメリカでは、65歳以上と身体障害者が対象の「メディケア」と、低所得者のための「メディケイド」以外には、公的な医療保険がない。
現役世代は民間保険に加入するが、保険料を支払えない人も多く、6人に1人(5000万人)が無保険の状態だ。
(以下は『毎日新聞 2013年1月21日』から抜粋)
米国の医療費支出は、GDPの17.6%を占めており、これは世界一で日本の9.5%のの倍近い。
米国の医療費は高額で、1日の入院で130万円とられる例もある。
がん治療では数千万円の請求も稀ではない。
米国民の自己破産の半分近くが、医療費支払いに伴うものと言われている。
医療費が高い理由は、「市場原理」に従っている事が大きい。
民間保険が中心のため、多額の保険金を支払う高額所得者ばかりが優遇される仕組みになっている。
(以下は『ニュースを読む技術』池上彰著から抜粋)
世界同時不況により、2009年6月に自動車メーカー最大手の「GM」が破産した。
破産の直接のきっかけは、不況による売り上げの減少と、金融機関から借り入れが出来なくなったことである。
しかし背景には、「年金制度」と「健康保険制度」の問題があった。
GMは1728億ドルもの借金を抱えたために、破産を申請して当面の借金返済を免れようとした。
返済額を減らす再建案をまとめようとした。
アメリカの年金制度は、日本と違って国家の支出はない。
企業と個人が拠出したものを、受給者に支払っている。
平均の支給額は、2003年時点で895ドルである。
医療保険は、基本的にすべてが民間の運営である。
このため保険料が高く、4700万人もの人が保険に入っていない。
GMは、昔は売り上げが好調だったために、1950~60年代から年金額は「スライド制」になった。
これは、年金額が現役社員の給料が上がるにつれて、どんどん上がっていくシステムである。
さらにGMでは、従業員や退職者、その家族までも、医療費を会社側が100%負担していた。
やがて高齢の退職者が増えてくると、医療費はうなぎ昇りになり、GMの負債は470億ドルに上った。
アメリカの医療費はとても高く、盲腸の手術で100万円もかかる。
1970年代になると、日本車がアメリカに進出して、GMの経営は悪化した。
経営改善をすればよかったが、それをせずに政治家に泣きついた。
1981年に、アメリカ政府の圧力で、日本は対米の自動車輸出を自主的に規制し始めた。
その結果、GMは最高益を上げるようになった。
この時の利益を、日本車に負けない高品質の車つくりにつぎ込むべきだった。
ところが経営者たちは、自分たちの報酬を上げてしまった。
一方、日本のメーカー達は、輸出が難しくなったために、アメリカに製造工場を建設することにした。
これならメイド・イン・USAだから、非難を受けない。
「自分が経営者でいる間さえ良ければ、後の事は知ったことではない」という、経営陣の問題の先送り体質。
それがGMの経営破たんの真因である。
(以上は2013年8月17日に作成)