(ニュースを読む技術 池上彰著から抜粋)
世界の石油の価格を決めているのは、アメリカのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)と呼ばれる、軽質油(軽い原油)です。
テキサス西部で採れるこの原油は、アメリカでは最も質の良いものです。
このWTIの先物が、NYのマーカンタイル(商品先物)取引所で売買されて、
それが世界の原油価格の指標になっているのです。
取引されているWTIの先物とは、「1ヵ月や2ヵ月先に買う金額を、今から決めておく」というものです。
現物を取引するわけではないため、誰でも市場に参加できます。
そして、ヘッジファンドなどが参加するため、価格は大きく上下するのです。
WTIの取引単位は、「バレル」です。
バレルとは樽のことで、かつてアメリカでは飲み終えた酒樽に原油を入れて運んでいたので、この呼び名が単位になりました。
1バレルは、159リットルです。
WTIの価格を参考にして、ドバイ原油やオマーン原油のスポット価格が決まります。
これは先物ではなく、現物の取引です。
WTIよりもガソリン成分が少ないため、ドバイ原油とオマーン原油はやや安い価格になります。
そして、この2つの価格に基づいて、日本の石油会社が中東から購入する原油価格が決まります。
これを決めるにはルールがあり、ドバイ原油とオマーン原油の価格を足して2で割り、
それにプラスアルファの上乗せをして価格が決まります。
WTIの価格は、アメリカ国内で取引されているために、アメリカ国内の事情で価格が変動します。
アメリカに振り回される世界という構図が、ここにも存在しています。
(2013.8.17.)