2024年のアメリカ大統領選挙

(以下は『週刊文春 2024年9月12日号』から抜粋)

民主党の大統領候補となったカマラ・ハリスが、8月16日に政策を発表した。

まず法人税は、現在の21%から28%に引き上げる。
トランプ政権時代に法人税は、35%から21%まで下げられた。

多国籍企業が外国で上げた収益にかける税率も、現在の2倍の21%に上げる。

企業たちによる食品価格のつり上げを禁止する法律もつくる。
インフレが続いているのを抑えるためだ。

これについて共和党のトランプ候補は、「共産主義者の価格統制だ」と批判している。

ハリスは、住宅を大量に購入する者への税優遇も撤廃する。

これは住宅を貸す業者への課税強化で、不動産業者のトランプは反発している。

他には、生後1年までの子がいる家庭に、最大6千ドルの税額控除を新設する。

実は、ハリスの政策の多くはバイデン政権が目標としていたもので、ハリス本人の意思ではない。
民主党でも左派寄りの政策が多い印象だ。

トランプ候補は、民主党の政策に「共産主義者」などのレッテルを貼り攻撃しているが、きちんと政策論争していない。

「トランプにはそもそも政策論争できる能力がない」、との見方もある。

(以下は『週刊文春 2024年10月10日号』から抜粋)

共和党の大統領候補であるドナルド・トランプは、大統領選に向けたテレビ討論会で「スプリングフィールドでは、不法移民が犬や猫を食べている!住民のペットを!」と述べた。

オハイオ州スプリングフィールドの市長(共和党)は、この話を否定した。

だが調査したところ、トランプ支持者の52%がこのデマを信じている。

トランプを支援するイーロン・マスクは、Xの経営者だが、11人も子供がいる。

イーロンの子供ヴィヴィアン(20歳)は、18歳の時に性適合手術を受けて女性になった人だ。

イーロンはインタビューで、「彼が自殺するというから手術を許可した。おかげで息子を失った」と話した。

これに対しヴィヴィアンは、「父親ぶるな。あなたは私を育ててないし、私が男らしくないと罵倒した」とコメント。

(※ヴィヴィアンの母はイーロンと離婚している)

「ポリマーケット」というオンラインの賭博サイトは、大統領選挙で誰が勝つかなど、政治問題を賭け事にしている。

ポリマーケットの設立時に出資したのが、IT長者のピーター・ティールだ。

ドイツ生まれのティールは、オンライン支払いサービス「ペイパル」の創業者で、莫大な財を成した。

イーロン・マスクは、ペイパルへの出資者で、ティールの弟分である。

共和党の副大統領候補となったJ・D・ヴァンスも、ティールの弟分である。

ティールは自身の経営する会社に、1~2年ほどヴァンスを雇ったことがある。

トランプに対してヴァンスを副大統領候補にするよう推薦したのも、ティールである。

プロレスラーのハルク・ホーガンは、息子の交通事故の賠償で破産したが、騙されて自身のセックス・ビデオを撮影し、それがネット上のGawkerに掲載された。

ピーター・ティールは、ホーガンをけしかけてGawkerを訴えさせた。

ティールは、Gawkerにゲイであることを暴露されたので、その復讐にホーガンを使ったのである。

ホーガンは勝訴して3100万ドルで和解した。

この件からホーガンはティールに借りができ、ティールに指示されてトランプ支持を表明した。

(以下は『週刊文春 2024年11月21日号』から抜粋)

今回の大統領選のトランプ勝利は、労働者階級の勝利と言える。

トランプは資本主義の権化のような男だが、彼の当選を支えたのは労働者や農民だったからだ。

アメリカの製造業は衰退し、失業した労働者たちはオピオイドという麻薬入りの鎮痛剤に溺れている。
オピオイドの乱用で毎年8万人が死亡する状況だ。

民主党は、IT企業や金融業の金持ちに支配される党になってしまった。

これに対し共和党は、元は金持ちエリートの政党だったが、トランプが労働者の党に変えた。

トランプは、プロレタリアートの扇動に成功した。

労働者たちは、上から目線のエリート顔をした民主党の政治家を嫌い、「インフレを退治して物価高を止める」と語るトランプを支持した。

だがトランプは「輸入品に10~20%の関税をかける」と言っており、これをすれば物価は上がる。

トランプは、「地球温暖化対策のパリ協定から脱退する」とも言っている。

「不法移民を追い出す」とも言っているが、アメリカには1100万人の不法移民がいると推定され、全員を追い出すのは大変だろう。

もし追い出せば、人件費は上がるだろうし、人手不足にもなるだろう。

トランプは物価高を止めると言うが、彼の政策はインフレを加速させるものだ。

ドナルド・トランプは、史上初の刑事事件で起訴されたまま当選したアメリカ大統領となった。

民事裁判で性的暴行犯になったのに再選した初の大統領でもある。

トランプは前回の任期中に最高裁判事を3人任命したが、その影響で最高裁は保守化し、「連邦政府は中絶の権利を守らない」と判決した。
それで共和党の強い州では、中絶は違法になった。

民主党議員のバーニー・サンダースは、同党のカマラ・ハリス大統領候補に「インフレ対策の具体案を出すべきだ」と助言していた。
だがハリスは出さなかった。

今回の大統領選は、女性の過半数はハリスに投票し、男性の過半数はトランプに投票した。

トランプは、「ウクライナへの支援を停止し、ロシアへの経済制裁を解除する」と言っている。

ガザについては、「(イスラエルの)ネタニヤフ首相に仕事を完成させる」と言っており、イスラエルにガザを支配させるつもりだろう。

トランプは34の罪で有罪となり、恐喝などで起訴されている。

これに対し彼は、「大統領になったら自分を起訴した検察官などを起訴する」と言っている。

他にも「2020年の大統領選で私が負けたのは民主党に票を盗まれたからだ」と言って、「バイデンを票の操作で起訴する」と言っている。

トランプは、「政府の役人のうち5万人をトランプ支持者に入れかえ、司法省から自分に敵対的な職員を追放する」と言っている。

彼は独裁者を目指していると言える。

トランプは、国内の敵を軍で制圧するとも言っている。


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