大富豪に支配されたアメリカのマスメディア
大富豪とCIAおよびイスラエルとの繋がり

(以下はサイト『note あかいひぐま』2025年12月4日の記事から抜粋)

ニュース番組、あるいはニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載される記事の内容は、ほんの一握りの人々が決めている。
ほんの一握りの人々が、強力な編集権を持っている。
世界で最も裕福な7人は皆、今や強力なメディア王である。

トランプ大統領の忠実な支持者でありCIA契約社員でもあるラリー・エリソン氏によるCNN買収は、目前に迫っている模様。世界第2位の富豪である同氏にとってメディア業界への進出となる。

エリソン氏が所有するパラマウント・スカイダンスは、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収において最有力候補だ。

この買収は、最終的には大統領が承認する必要がある。

エリソン氏は既にホワイトハウス高官らと、トランプ大統領が嫌っているとされるCNNの司会者やキャスターの解雇について協議している。

CNNの政治的方向性を転換させることが、ホワイトハウスがワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収を強く推奨する理由である。

純資産が2780億ドルという驚異的な額を誇るラリー・エリソンは、メディアへの投資を増やしており、2025年初めにはパラマウント・グローバル買収の資金を提供した。

パラマウント・グローバルは、CBS、BET、MTV、コメディ・セントラル、ニコロデオン、パラマウント・ストリーミング、ショータイムといった巨大複合企業を傘下に持つ。

ラリー・エリソンの息子のデビッドは、CBSニュースのCEOに任命されると、すぐに同社の政治見解を大幅に変更し、スタッフを解雇し、親トランプ派になるよう圧力をかけ、自称「シオニスト狂信者」のバリ・ワイスを編集長に任命した。

トランプ大統領は、2025年9月に、ソーシャルメディア・プラットフォーム「TikTok」をエリソンが所有するテクノロジー企業オラクルが率いるアメリカのコンソーシアムに売却する提案を承認する大統領令に署名した。

計画では、オラクル社が「TikTok」のセキュリティと運用を監督することになり、30歳未満のアメリカ人の60%以上が利用するこのプラットフォームを、世界第2位の富豪であるトランプが実質的に管理することになる。

4,800億ドル以上の資産を持つイーロン・マスクは、世界で最も裕福な人物であり、今後10年以内に地球初の兆万長者になると予想されている。

2022年にマスクは約440億ドルでTwitterを買収した。
彼はTwitterを自身の政治を推進するために活用している。

マスクは昨年に、ジェフ・ベゾス氏を抜いて世界一の富豪となった。
Amazon社の創業者兼CEOであるベゾスも、メディア業界に進出している。

ベゾスは2013年にワシントン・ポスト紙を2億5000万ドルで買収し、すぐに同紙への影響力を発揮し始め、反体制派の記者を解雇し、戦争支持派のコラムニストを雇用した。これは、彼がビジネス・インサイダー(現在はインサイダーにブランド変更)の少数株を取得したわずか数か月後のことだった。

1年後の2014年に、Amazon社は月間約700万人の配信者を抱えるストリーミング・プラットフォーム「Twitch」を10億ドル近くで買収した。

Amazonは他にも、映画スタジオMGM、オーディオブック・プラットフォームのAudible、映画データベースサイトのIMDBなど、幅広いメディア事業を所有している。

一方でフランスの億万長者ベルナール・アルノーは、自国のメディアを買収している。

アルノーは、コングロマリットであるルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー(LVMH)の会長であり、世界第7位の富豪である。

彼は、「ル・パリジャン」や「レ・ゼコー」といった日刊紙、「パリ・マッチ」や「チャレンジズ」といった雑誌、「ラジオ・クラシック」などのメディア帝国を築いている。

世界の富豪の上位7位にランクインした残りの3人も、いずれもメディア帝国を築いている。

Googleの共同創業者であるセルゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏の資産総額は5,000億ドルを超える。

Googleはソーシャルメディアでも君臨している。
2006年にYouTubeを16億5000万ドルで買収したが。アメリカ人の35%がYouTubeを主要なニュース・ソースとして利用している。

マーク・ザッカーバーグは、Facebook、Instagram、WhatsAppといったソーシャルメディアとテクノロジーベンチャーによって2030億ドルの資産を築いている。

ザッカーバーグの企業もニュース業界の主要なプレーヤーであり、アメリカ人の38%がFacebook、20%がInstagram、5%がWhatsAppを利用している。

これらの富裕層の多くは、トランプ大統領と連携している。

その筆頭が、上述したラリー・エリソンの一家である。

ラリー・エリソンは極めて保守的な見解を持ち、共和党への主要な寄付者であり、トランプの側近でもある。

エリソンの影響力の強さから、彼を「アメリカ合衆国の影の大統領」と呼ぶ者もいる。

イーロン・マスクも、トランプ大統領の内閣の非公式メンバーとなり、事実上の政府効率化省の長官となった。

ザッカーバーグは、自身のプラットフォームをMAGA運動に沿わせるために、ファクトチェックチームを解雇するなど、いくつかの措置を講じてきた。

ザッカーバーグは、メタ社の国際問題担当社長で元英国自由民主党副首相のニック・クレッグ氏を、ジョージ・W・ブッシュ政権の首席補佐官を務めたジョエル・カプラン氏に交代させた。

他にもザッカーバーグは、アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC)のCEOであり、トランプ大統領の側近でもあるダナ・ホワイト氏を、メタ社の取締役に任命した。

こうした動きは、ザッカーバーグが2024年の大統領選挙での勝利を欺くようなことをすれば終身の投獄すると、トランプが脅迫したことへの対応として行われたのだろう。

ザッカーバーグは2024年の大統領選挙でトランプが勝つと、マール・アー・ラゴでトランプ大統領と会談し、ベゾス氏や他のIT界の大物と共にトランプ大統領就任基金に100万ドルを寄付した。

一方、ベゾス氏は所有するワシントン・ポスト紙について、今後は資本主義に懐疑的な意見を掲載しないと発表した。

ワシントン・ポスト紙の主任経済記者であるジェフ・スタイン氏は、「ジェフ・ベゾス氏がワシントン・ポスト紙のオピニオン欄に大規模に侵入した。反対意見は公表されず容認されなくなった。」と述べている。

上記の大富豪の台頭は、米国政府との近さが主因で、彼らの会社の多くは国防総省との契約で富を築いてきた。

今日の戦争やスパイ活動は、ハイテク・コンピューティング機器に依存しており、2022年に国防総省はAmazon、Google、Microsoft、Oracleに90億ドルのクラウド・コンピューティング契約を授与した。

ベゾス氏のAmazon社は長年CIAと緊密な関係を築いており、2014年にはCIAと6億ドルの契約を結んでいる。

Googleとイーロン・マスクの航空宇宙企業スペースXは、設立当初からラングレー研究所と深く関わってきた。

CIAは、スタンフォード大学におけるブリン博士の研究に資金援助して監督した。
この研究は後にGoogleの基礎となった。

2005年までCIAのベンチャーキャピタル部門であるIn-Q-Telは、Googleの主要株主だった。
これはGoogleがKeyhole, Inc.を買収したことによるもので、KeyholeはCIAの支援を受けた監視会社で、同社のソフトウェアは後にGoogle Earthとなった。

ワシントン・ポスト紙によると、2007年までに米政府はイラクなど海外における敵の監視と標的化にGoogle Earthの強化版を使用していた。
Googleは当時、ロッキード・マーティン社と提携し、軍事向けの先進技術を開発していた。
Googleと連邦政府の様々な機関の間では、雇用の循環が存在している。

In-Q-Telの最高経営責任者であるマイク・グリフィン氏は、スペースXの誕生に尽力し、設立当初からサポートとアドバイスを提供した。
グリフィンは2002年にマスク氏に同行してロシアに行き、スペースX社設立のため安価な大陸間弾道ミサイルの購入を試みた。

しかし2008年までにスペースXは窮地に陥り、マスクは従業員に給与を支払うことができず、スペースXとテスラモーターズの両社が清算されるだろうと考えられた。

グリフィンが獲得に貢献したNASAとの予想外の16億ドルの契約によって、マスクは救われた。

スペースX社の主な顧客は依然として、空軍、宇宙開発庁、国家偵察局といった米国政府機関である。

スペースXから派生した新しい企業「カステリオン」は、敵国の核ミサイルを撃墜するために設計された、北米を周回する武装衛星ネットワークの構築に取り組んでいる。

カステリオンの上級顧問4人のうち2人は、元スペースX社員。残りの2人はグリフィン氏を含めた元CIA高官である。

イーロンは長男にグリフィン・マスクと名付けた。もう一人の息子、A-12はCIAの偵察機にちなんで名付けられた。

ラリー・エリソンほどCIAと密接な関係にある億万長者はいない。

エリソンは、CIAのデータベース・システム「プロジェクト・オラクル」の開発に携わったことからキャリアをスタートさせた。

彼は1977年にオラクル社(以前のプロジェクトにちなんで名付けられた)を共同設立した。

エリソンが海軍情報部、空軍情報部、NSAなど、米国政府の国家安全保障部門と契約するまで、CIAはオラクルの唯一の顧客だった。

その緊密な関係は今日まで続いている。
2020年にオラクル社は、CIAおよび他の16の米国情報機関と、数百億ドル規模の15年契約を獲得した。

同社の幹部陣は、元CIA幹部で構成されている。
その一例が、元CIA長官で国防長官を務めたレオン・パネッタ氏が取締役会に名を連ねていることだ。

上記の大富豪に共通するもう一つの重要な特徴は、イスラエルに対する熱烈な支持である。

ラリー・エリソンはユダヤ国家の利益推進を生涯の目標とし、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の熱烈な支持者であり、ハワイにある自身の私有島でネタニヤフと休暇を過ごしたこともある。

彼は最近、ネタニヤフ首相に対して年俸45万ドルでオラクルの取締役に就任するよう申し出た。

エリソンは、イスラエル国防軍(IDF)に対し、単独の寄付者としては最高額を寄付している。

2017年だけでも、イスラエル国防軍兵士の新たな訓練施設の建設に1660万ドルを寄付すると約束した。

息子のデイビッド・エリソンも熱心なシオニストであり、グレイゾーンの調査によると、アメリカ国民をスパイする計画でイスラエルの高官と面会したことがある。

この計画は、イスラエルのガザ攻撃を見て親パレスチナの活動に参加するアメリカ国民の攻撃を目的としていた。
文書には、計画の潜在的な協力者としてブリンの名前も挙げられている。

オラクル社のイスラエル人CEO、サフラ・カッツ氏も、ネタニヤフ首相の親しい友人であり、オラクル社はイスラエルを支援する使命を帯びていると語る。

2023年10月の暴動を受けて、カッツは世界180カ国以上の企業のスクリーンに「オラクルはイスラエルを支持する」という言葉を印刷するよう指示した。

TikTokを通じて世界中の若者がイスラエルの侵略行為を見るようになると、TikTokを禁止しようとする運動が起きた。

その運動のリーダーは元下院議員のマイク・ギャラガーで、彼の法案は連邦議会で可決され、TikTokはオラクルが率いるコンソーシアムへの売却が迫られている。

今ではCBSニュース・編集長のバリ・ワイス氏が、初めて世間の注目を集めたのは、大学在学中にパレスチナ支持の見解を持つイスラム教徒やアラブ人の教授を解雇しようとする団体を設立した時だった。

先週、ユダヤ人指導者会議で彼女は、「CBSでの自分の使命はハッサン・パイカーやタッカー・カールソンのような声を排除することであり、アメリカでの議論の範囲の線引きをし直すことである」と述べた。

ザッカーバーグのプラットフォームであるフェイスブック、インスタグラム、ワッツアップも、イスラエル支持の傾向がある。

2016年にフェイスブックは、検閲問題でイスラエル政府と協力しており、アイェレット・シャケド法務大臣はフェイスブックがパレスチナ支持コンテンツの削除要請の95%に応じたことを明らかにした。

フェイスブックとイスラエルの提携は、イスラエル法務省の元長官でイスラエル国防軍諜報部隊第8200部隊の元スパイであるエミ・パルモア氏を、フェイスブックの21人から成る委員会である監督委員会に任命した2020年に深まった。

ザッカーバーグのプラットフォームは長年にわたり、ヘイトスピーチだとしてパレスチナ人の発言を遮断してきた。
そして2023年10月7日の攻撃(ハマスがイスラエルを攻撃したとされるもの)以降、検閲は大幅に強化された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「インスタグラムとフェイスブックにおけるパレスチナ人のコンテンツの組織的検閲」について報告書を発表し、検閲事例1050件を調査したと述べた。
この調査では、そのうち1049件はパレスチナを支持する平和的な発言であり、Metaの利用規約に違反していなかったと結論している。

Meta社内では、スタッフたちの意見が組織的に抑圧され、パレスチナ人やイスラム教徒の従業員にとって「敵対的で危険な労働環境」と不満が出ている。

一方、WhatsAppは様々な意味で戦場となっている。
イスラエル軍はパレスチナ人のWhatsAppデータを利用して、ガザ地区の数万人を追跡し、標的にしている。

Meta社がこの取り組みにおいてイスラエル軍と協力しているのか、あるいはしていないかは不明。
しかし現在Meta社の幹部職に就いている数十人の元イスラエル・スパイの一部が、ソフトウェアにバックドアを仕掛けたり、単にデータを元同僚に渡している可能性が示唆されている。

2022年のMintPressの調査により、Meta、Google、Amazon、Microsoftで数百人の元Unit 8200工作員が働いていることが判明した。

ザッカーバーグはイスラエルの強力な支持者で、2023年10月の攻撃後、彼はハマスなどを「純粋な悪」と非難する声明を発表し、イスラエル政府は公式に感謝の意を表した。

イーロン・マスクは2023年11月にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相とイサク・ヘルツォグ大統領の両者と会談して、ガザ攻撃への全面的な支持を表明した。

マスクはハマスを「邪悪」と表現し、イスラエル国防軍は「民間人殺害を避けるため」にあらゆる努力を払っていると明言した。
同氏の訪問時点で、イスラエル軍は4週間にわたる爆撃で少なくとも2万人の命を奪っていた。

グーグルとアマゾンもまた、ガザにおけるハイテク虐殺を促進している。
2021年、両社はイスラエル政府と12億ドルの契約を締結し、イスラエル国防軍(IDF)にクラウド・コンピューティングとAIインフラを提供した。

この技術は、人口密集地帯の民間人を標的にするために利用されてきた。
この契約は従業員の間で反発を招き、両社の協力に反対する座り込みなどの抗議活動が組織された。

グーグルでは、少なくとも99人の元8200部隊のスパイが重要な役職に就いている。
顕著な例の一つはガブリエル・ゴイデル氏で、彼は長年、第8200部隊の指揮官および学習責任者を務めたが、その後にグーグル社に採用され戦略・運営の責任者となった。

グーグルの創業者の1人でロシア生まれのセルゲイ・ブリン氏は、自身の会社グーグルがガザ虐殺に関与していたことを詳述する報告書を国連が発表した際、国連を「あからさまに反ユダヤ主義的」と激しく非難した。

マスク、エリソン、ペイジ、ブリン、ベゾス、ザッカーバーグ、そしてアルノーの7人が支配する富は、人類の下位50%(40億人以上)の富を合わせた額を上回る。

彼らは巨額の富を握り、マスメディアを含む会社を記録的なペースで買収している。

そしてアメリカの報道機関は総じて保守的、トランプ支持、イスラエル支持へと傾き、反対意見を排除している。

これは民主主義、自由社会にとって非常に有害である。

かつては異なる視点をインターネットで簡単に見つけることができた。
しかし特にイスラエル/パレスチナ問題は、マスメディアの検閲が強まっている。

(2025年12月24日に作成)


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