(以下は『東洋経済オンライン』2026年8月21日 安積明子の記事から抜粋
2026年8月24日に作成)
2026年8月3日の高市首相の熊本地震・被災地への視察は、“撮影班”が同伴し、高市首相をクローズアップする動画が作成された。
この動画について、木原稔・官房長官は「視察の様子を国民にわかりやすく伝えるため」というが、BGMまでつけて作り込まれた動画は、高市首相の「やった感」を盛り上げるプロパガンダだった。
「至れり尽くせり」などと高市首相にひたすら感謝の意を示した被災者との面会は、作られたドラマであった。
話は変わるが、アメリカのトランプ政権は8月18日に、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子・所長とアブドゥライ・セイ上級法廷弁護士を経済制裁の対象に指定した。
ドナルド・トランプは、第1次政権の時からICCを敵視してきた。
ICCが2020年3月にアフガン戦争でのアメリカ軍の戦争犯罪について捜査することを決定すると、アメリカは担当者に制裁を加えた。
ICCは2024年11月に、パレスチナ自治区ガザでの戦闘をめぐる戦争犯罪や人道の罪で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相(当時)に逮捕状を出した。
今回の赤根所長へのアメリカの制裁は、これへの報復といえる。
すでにトランプ大統領は2025年2月に、ネタニヤフ首相の逮捕状発令に関連してICCのカリム・カーン主任検察官(当時)らに制裁を発動していた。
この時は赤根氏は制裁対象から除外されたが、これは当時の石破茂・政権が制裁しないようアメリカ政府に強く働きかけたからだった。
ICC締結国125ヵ国のうち79ヵ国は、2025年2月7日にアメリカに対して「法の支配を脅かす」と非難する共同声明を出した。
赤根氏も「何百万人もの罪のない犠牲者から正義と希望を奪おうとするもの」と批判した。
日本は世界で唯一の被爆国として、その悲惨さを世界に訴えていくべき責務を負っている。
にもかかわらず『核兵器禁止条約』に署名・批准をしておらず、過去3回の締結国会議へのオブザーバー参加も見送ってきた。
アメリカの「核の傘」に依存しているというのが、自民党政権が『核兵器禁止条約』を拒否する主な理由だが、要するに自民党はアメリカに反対を表明できないのだ。
今回の赤根氏への制裁について、高市首相は「大変残念に思っている」、「これからも米国を含む関係国と意思疎通を継続しながら対応していく」と述べるにとどまった。
だがトランプ政権による赤根氏への制裁は、極めて不当で深刻な人権侵害だ。
アメリカで赤根氏の資産が凍結された場合、アメリカ国内でクレジットカードが使えないなど、赤根氏の生存権すら脅かされかねない。
高市首相は2026年1月に赤根氏と面会したとき、「厳しい国際情勢の中であっても、日本は法の支配を重視しており、ICCがその役割を果たせるよう、日本政府としてICCおよび赤根所長を力強く支援していく」と語っていた。
今回、ICCの本部があるオランダをはじめ、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長やアントニオ・コスタ欧州理事会議長、国際連合のアントニオ・グテーレス事務総長などは、きちんと制裁に反対を示している。
高市首相も制裁反対を表明するべきだ。
赤根智子・ICC所長は、2023年3月にロシアのウラジーミル・プーチン大統領に逮捕状を出したことで、その報復としてロシアの裁判所で有罪判決を受けた。
そのとき彼女は、「私が死んでも裁判官の代わりはいる」と発言した。
命を賭して務め抜くという覚悟がひしひしと伝わってくる。
8月13日のプーチン大統領の択捉島上陸や、トランプ大統領の北朝鮮への接近、そして中国の王毅外相の韓国訪問など、このところ日本外交は世界から取り残されている。
その原因が高市首相でないことを願う。