日朝首脳会談の真実③
日本は国交正常化と経済協力を目指すが、
アメリカが難色を示し頓挫する

(『北朝鮮の真実』重村智計著から抜粋)

日朝首脳会談では、核開発の問題についても話し合われたが、解決には至らなかった。

会談後に発表された『日朝の平壌宣言』では、核開発の問題については「解決を図る必要性を確認した」としかない。

平壌宣言は、国交正常化に触れていて、経済協力も約束している。

この合意に、アメリカは呆れた。

平壌宣言の内容に、アメリカ政府は強い不信感を抱いた。

なぜなら、首脳会談について事前にアメリカに通告していなかったからである。

アメリカは、「日米同盟は崩壊に向かうのではないか」と危惧した。

日米同盟の維持には、2つの条件が必要である。

1つは「共通の敵の存在」、もう1つは「共通の価値観」である。

アメリカ政府は、交渉を主導した外務省アジア局長の田中均に、強い不信感を抱いた。

小泉純一郎・政権は、アメリカの反発を理解していなかった。
そして、会談を事前にアメリカ側に伝えていなかった。

そのために、アメリカ国務省は激怒した。

小泉首相は、訪朝直前の日米首脳会談で、息子ブッシュ大統領から「日朝の国交正常化は困る。核問題が解決していないのに、正常化はしないでほしい。」と、厳しくクギを刺されていた。

アメリカ国務省のケリー次官は、日朝首脳会談の翌月(10月)に平壌を訪れて、高濃縮ウランの計画について問いただした。

そしてケリーらは、北朝鮮は核兵器開発を認めたと判断した。

その結果、アメリカは『米朝の枠組み合意』の破棄を決めた。

アメリカは日韓に説明した上で、12月に北朝鮮への重油の供給(枠組み合意で約束されていた供給)を止めた。

日本政府は、日朝首脳会談の際に、「2003年1月1日に国交を正常化する」と密約していた。

しかし米朝枠組み合意の破綻で、不可能になった。

結果的には、国交の正常化は実現せず、経済支援金も供与されなかった。

そして、日米同盟は守られた。

○村本尚立のコメント

こういった話を知ると、日米同盟がある限り、日本は独自の外交は出来ない事が分かります。

私は、もう今の時代には「共通の敵を想定して事を進める」という手法は、古いと思います。
そうした手法では、いつまで経っても真の平和にたどり着けないからです。

この時に、日朝は国交を正常化した方が良かったと思います。


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