(『サウジアラビアを知るための65章』から抜粋)
サウジアラビアの国民をまとめてきたのは、イスラム教である。
サウード家(サウジ王家)は、「アッラー、マリク(国王)、ワタン(祖国)」に忠誠を誓うアイデンティティを広めようとしている。
だがサウード家は、王族への忠誠を強要する方針を、国民に公言はできない。
なぜかと言うと、イスラム教では主権はアッラーのみにあり、国王にも国民にも無いからである。
イスラム法では、国王はイスラームに奉仕する限りにおいてのみ、統治の正当性を認められる。
実は、イスラームのおかげで国王の専横はかなり制限されている。
一般国民が、サウード家に対して忠誠を誓う場面は、まずない。
部族指導者、サウード家の人々、軍人、だけが忠誠の儀礼を行っている。
(つまり、直接に王族と利権でつながっている人々のみが、忠誠を誓っている)
国王などの写真が掲げられる事については、「偶像崇拝である」と怒りを感じている思想家が常に存在する。
(イスラム教では偶像崇拝は禁じられている)
王族を尊敬していない国民は、たくさんいる。
また、石油の富の分配も、重要な要素である。
これによって、支配層(サウード王家など)は国民の支持を得ている。
(これについては、別のページを見ていけば分かります)
サウジ人の意識を考えれば、「国民」とは呼びにくい。