(『そうだったのか!現代史2』池上彰著から抜粋)
2002年5月24日に、アメリカのブッシュ大統領とロシアのプーチン大統領は、モスクワで会談した。
そして、『モスクワ条約』を結んだ。
この条約は、「戦略核弾頭を削減する」との約束である。
両国の持っている戦略核弾頭を、2012年12月31日までに、現在の5000~6000発から、1700~2200発に減らすことになった。
戦略核弾頭とは、長距離ミサイルに積んだ核爆弾のことで、大陸間弾道弾(ICBM)とも呼ばれる。
この条約は、実は大して変化がない。
というのも、核弾頭をミサイルから取り外しただけで、「削減した」と言える内容だからだ。
現に2002年7月にアメリカのパウエル国務長官は、「アメリカは今後も、4600個の核弾頭を保有し続ける」と明言した。
ましてこの条約は、戦術核兵器や戦域核兵器については、一切触れていない。
戦術核兵器とは、射程の短い、戦場で兵士や戦車を攻撃する核兵器のことだ。
戦域核兵器とは、中距離ミサイル用の核兵器である。
ブッシュ大統領は、モスクワ条約を結ぶ一方で、「使いやすい核兵器の開発」を計画した。
地下施設を標的にする核兵器や、小型の核兵器を、開発する計画を立てた。
核兵器使用の敷居を低くしようとしたのである。