(以下はサイト『エネフロ』 2025年8月19日の安倍宏行の記事から抜粋)
🔵砂電池とは何か
「砂電池」とは、砂による蓄熱システムで、フィンランドのPolar Night Energy社が開発した。
再エネの安価な電力を使い、抵抗ヒーターで発生させた熱を、断熱材で覆われた巨大な鋼鉄製タンク内の砂に蓄える。
エネルギーが必要な際には、熱せられた空気が熱交換器を通じて水を加熱し、温水や蒸気を生成する。
太陽光発電や風力発電は、天候や季節によって発電量が大きく変動する。
これら再エネの出力をいかに安定させ、24時間365日、信頼できる電力として供給するかが、脱炭素化社会を実現させるカギとなる。
これまではリチウムイオン電池が期待され、急速に普及していた。
だがリチウムイオン電池は、必要ちなるリチウムやコバルトといった希少資源が特定の国に偏っているし、季節をまたぐような超長期のエネルギー貯蔵に向かない。
「熱の貯蔵」といえば、以前の記事(「岩石蓄熱が拓く カーボンニュートラルの新時代」2025年4月8日)で触れた「岩石蓄熱」がある。
岩石を蓄熱媒体とする技術が、日本で実証実験が進んでいる。
今回は、熱媒体に「砂」を利用した蓄熱システムである。
開発したのはフィンランドのスタートアップ企業「Polar Night Energy」で、「砂電池(サンドバッテリー)」と呼んでいる。
砂電池は、まず再エネの発電量が需要を上回り、電力価格が低下する時間帯の安価な電力を使って、抵抗ヒーター(電気ストーブと同じ原理)で熱を発生させる。
発生した熱は、断熱材で覆われた巨大な鋼鉄製のタンクの中に密閉された大量の「砂」に送り込まれる。
タンク内の砂は、600℃程度の高温状態で熱エネルギーを蓄える。
エネルギーが必要になったら、タンク内の熱せられた空気を使って熱交換器を通じて水を加熱させ、高温の温水や蒸気を生成する。これを利用する。
Polar Night Energy社は2022年に、フィンランド西部の町カンカーンパーで最初の商用プラントを成功させた。
2025年にはフィンランド南部のポルナイネン市で、世界最大となる砂電池が稼働した。
このプラントは、高さ13メートル、幅15メートルの巨大なタンクに、砕かれた滑石(ソープストーン)を蓄熱材として使用し、実に100MWhもの熱エネルギーを貯蔵できる。
市の熱供給網に接続されており、約1週間にわたって市の暖房をまかなうことができる。
将来的には、夏の間の熱を冬まで貯蔵することも視野に入れている。
🔵砂電池の長所
砂電池の長所は、第1に「効率的で均一な熱伝達」だ。
蓄熱システムは、熱をいかに効率良く蓄熱材全体に伝えるか、いかに効率良く熱を取り出すかが性能を左右する。
Polar Night Energy社の砂電池は、タンクの内部にパイプを張り巡らせ、そこに熱した空気を循環させることで砂全体を加熱する。
砂は粒子が細かく流動性があるため、空気との接触面積が大きくなり、熱がムラなく効率的に伝わる。
岩石を使うと、岩の内部まで熱が伝わるのに時間がかかったり、岩と岩の間に不均一な隙間ができたりして、熱伝達にムラが生じやすい。
だから砂を用いた方が効率が良い。
第2の長所は、高い充填密度と体積エネルギー密度だ。
砂は粒子が小さいため、タンク内に隙間なく高密度に充填することができ、容器の体積あたりの蓄熱量(体積エネルギー密度)が高いのだ。
岩石だと、岩と岩の間に空間ができてしまい、充填密度が低下する。
その結果、同じ体積のタンクで蓄えられるエネルギー量が砂に比べて少なくなる。
第3の長所は、扱い易さだ。
砂は流体のように扱うことができ、ポンプやコンベアを使ってタンクへの搬入・搬出が可能だ。
一方、岩石はクレーンなどの重機が必要となり、設置に手間とコストがかかる。
第4の長所は、効率の良さで、これは材料の違いというより、Polar Night Energyの砂電池システムの設計の優位性だ。
この砂電池システムは、貯めた熱を再び電気に戻す(再電化)のではなく、地域の暖房システムへ熱として直接供給する。
これによりエネルギー効率は90%以上を達成することも可能だという。
🔵砂電池の課題
砂電池の課題は、大規模化と立地の制約だ。
大都市や大規模な工業地帯のエネルギー需要を賄うには、GWh級以上へのスケールアップが求められる。
巨大なタンクを建設するための土地確保が必要になる。
そして何よりも地域の熱供給網というインフラが未整備の地域では、砂電池の価値は半減してしまう。
だが、工場やデータセンターから出る排熱を砂電池に貯蔵し、必要な時に家庭やオフィスに供給できれば、より良い未来になるはずだ。