(『レンヌ=ル=シャトーの謎』マイケル・ベイジェント、リチャード・リー&ヘンリー・リンカーン著から抜粋)
1969年に、ジェラール・ド・セードの書いた『ル・トレゾール・モーディ』という小説を読んだ。
この本には2つの暗号文が載っていて、著者は解読したようだが、解読文は載ってなかった。
私(ヘンリー・リンカーン)は、この本の秘密に惹かれて、レンヌ=ル=シャトーの謎解きをしたいと思い始めた。
BBCのテレビ番組の制作責任者だったポール・ジョンストンに話したところ、1970年の末にド・セードに取材できる事になった。
私はこの時、「どうして暗号文に隠された内容を公表しないのか?」と問うたが、ド・セードは「あなたのような人が興味を持ち、自分で見つけるかもしれない」と答えるだけだった。
だがその後にド・セードは、画家のプッサンとテニエについて述べた暗号の解読文を教えてくれた。
他にも、プッサンの有名な絵である「アルカディアの牧童」に描かれたものとよく似た墓が見つかったと教えてくれた。
私たちは取材を進めて、BBCは1972年2月に『エルサレムの失われた財宝か?』という番組を放送した。
その後も資料は集まり続けて、『司祭と画家と悪魔』という続編も放送した。
1975年にリチャード・リーと出会った。
私(ヘンリー・リンカーン)は作家だが、学位を持ちイギリスの大学で講師をしていた。
リチャード・リーも講師をしていて、そこで出会った。
私がレンヌ=ル=シャトーの謎やテンプル騎士団について話すと、リーはすでに調査をしていて色々と教えてくれた。
さらにリーの紹介で、テンプル騎士団を調べていたカメラマンのマイケル・ベイジェントとも協力することになった。
私たちは共同で作業し、1979年にBBCは『テンプル騎士団の影』を放送した。
本書は、その後も続けた調査の成果である。
(※この本『レンヌ=ル=シャトーの謎』は1982年に出版された)
(※以下は、1996年に再刊された時の序文からの抜粋である)
最近まで17世紀の「薔薇十字団」は、キリスト教の狂信的な一派にすぎないと考えられていた。
しかし研究により、三十年戦争に先立つ事件や、イギリス王立協会の設立で重要な役割を果たしたと分かってきた。
薔薇十字団や神秘思想は、歴史学界から疑いの目で見られて、研究する者はほとんど居なかった。
しかし歴史を知るためには、こうした組織や思想をうかつに信じないように注意しながらも、きちんと研究する必要がある。
私たちは『レンヌ=ル=シャトーの謎』を出版した後も調査を続けて、1986年には『メシアの遺産』を書いた。
さらに『隠された聖地』も書いたし、フリーメーソンについては『神殿とロッジ』、1世紀のパレスチナについては『死海文書の謎』を書いた。
なお、プッサンの「アルカディアの牧童」に描かれた墓は、1988年に取り壊されてしまった。
BBCの放送などで注目された結果、多くの人がこの墓のある土地に不法侵入するようになり、爆破しようとする者まで出たため、土地の所有者が墓を壊してしまった。
本書が各国で出版されるとその影響で、キリスト教カタリ派や、テンプル騎士団に関する本が次々と登場し始めた。
それらの中で私たちが推奨できるのは、ブルガリア人のユリ・ストヤノフが書いた『ヨーロッパの隠された伝承』である。
1963年にヒュー・ションフィールドは、『過越祭の陰謀』を出版して、「イエスは十字架で死ななかった」と主張した。
これは新しい説ではなく、イエスの頃から2000年に渡って、(ローマ教会、キリスト教カトリック派から)異端とされた派が伝えてきたものである。
イスラム教の世界では、この説は広く受け入れられている。
「イエスは結婚していた」という説も、多くの者が唱えてきた。
(2022年12月23日に作成)