タイトル成長の定義を拡大させよう
(2016.6.5.)

日本では長いこと、「経済成長」や「GDPの増大」や「企業の収益および規模の拡大」が重視されてきました。

国政選挙になると、多くの国民は、「経済成長を実現させる」「景気回復を実現させる」と訴える政党・政治家に投票します。

私は、この国民意識に対して、甚だ疑問を持っています。

「経済よりも大事なものが、この世には沢山あるんじゃないか?」、こう思い続けてきました。

日本社会の主流的な価値観に、ずっと疑問の目を向けてきたわけですが、最近になり、このような考えに至りました。

『問題は、人々が経済成長(カネ)を重視している事ではない。

人間には「成長していきたい」という欲求がある。
それを止める事はできないし、無理に止めれば充実した人生は送れない。

問題なのは、今の日本人が「成長=金儲け(増益)、成長=収入アップ」だと思っている事だ。

成長とは、そんな浅いものではない。

成長の定義を拡大させて、「成長=快適な暮らしの実現、成長=持続性」に変える事こそ、いま求められている事だ。』

現在の日本では、日々を快適にすごす事を低予算(無駄のない効率性)で実現すると、「ケチ」とか「堕落」と見られてしまう。

「そんな事では、経済成長に貢献できない! 不心得者め! もっと大胆な消費をしろ!もっと欲望を解放しろ!」と、社会から言われてしまう。

それに、やみくもな拡大路線を選ばずに、地に足のついた持続性を重視する道を選択するのも、軽蔑されている。

「臆病者め! そんな事でこの厳しい世の中を渡っていけると思うな! チャレンジしろ! 危ない綱渡りをしろ! そうやって経済成長に貢献するのだ!」と、社会から言われる。

こんな異常な価値観になるのは、成長についての考え方が狭いからです。

例えば、経済成長は、GDPなどのいくつかの数字でしか考えられていない。

会社の価値も、株価とか増益率でしか見ていない。

冷静に考えれば、「国の成長とは、国民の満足度を上げることだ」とか、「会社の価値は、消費者に良質のものを末長く提供していくことだ」とか、「豊かな社会とは、全員が長期にわたって快適に暮らせる社会だ」と分かるはず。

成長を大切に思う日本人の気持ちは、間違っていません。

だから、本当の成長とは何なのかをしっかりと考え、成長の定義を拡大させよう。

経済を重視するのも、カネを重視するのも、別に悪いことではないです。

両方とも、社会を機能させるのに必要な事ですからね。

問題は、「経済成長とは、GDPのアップや、収益のアップである」と多くの人が考える結果、労働力やカネが人々の幸福に直結しない所に使われている事です。

人々の暮らしを重視すれば、政府の予算はもっと社会福祉に向かうし、大企業も内部留保金を溜めずに社員や消費者に還元するようになる。

今の成長の定義には、「持続性」が入っていない。

だから政府は借金を膨らませるし、企業は不正をしてでも利益を上げようとする。

本当は、成長において「持続性」は大切なものです。

例えば、健康な身体を長期にわたって実現するのは容易なことではなく、それを出来るようになればもの凄い成長ですよ。

企業の収益を一定の黒字に保ち続けるのも、同じでしょう。

持続性を重視するようになれば、国民はもっと節約やリサイクルやエコを大切に思うはず。

消費を煽る方向を避けて、余った食品を大量に捨てることに恥じ、必要性の薄い公共事業にはノーを突きつける。

社会全体の意識が変われば、投資(技術開発)する分野も変わっていく。
当然ながら、原発は廃止になります。

こうした価値観や社会の在り方を、今の日本はバカにしすぎている。
「それじゃあ経済成長できないよ」と言う。

ここで、「本当の経済成長とは何ぞや」という話になる。

将来世代にツケを(借金を)回す事をしながら、GDPや株価といった数字の増大を追うことが、本当の経済成長なのだろうか?

成長というと、何かを拡大させる事だと考えがちですが、そうじゃない場合もあります。

例えば、今まで10のエネルギーを使用していた事を、7のエネルギーで出来るようになる事は、立派な成長です。

無駄を減らしていく(効率性を上げていく)のは、成長の1要素ですが、特に日本政府では理解が進んでいません。

そして、歳出を減らすとなると、議員や行政の無駄な出費を抑えるよりも、弱者への支援が削減されている。
最悪の選択が、ずっと続けられている。

快適な暮らしの実現や、持続性の確保では、女性の感覚のほうが強みを発揮するようですね。

最近は、一般の女性たちが政治行動を起こすようになってきて、「介護」「保育園」「困窮した家庭」「障害者」などに社会が興味を持つようになってきた。

「ダム」「新幹線(リニアを含む)」「新空港」「オリンピック」「都市の再開発」など、国民の日々の暮らしにあまり関係ない事が、今までは重視されすぎでした。

成長の定義が更新(拡大)されないために、明治維新の頃の「世界の強国に追いつくために、イケイケ、ドンドン」の発想が、時代が変わっているのに続いています。

新しい価値観を身に付けましょう。

自分や社会にとって相応しい成長、これからの時代に合う成長。
それを考えて、進路を変えよう。


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