ビル・エバンスの「エブリバディ・ディグズ」おまけ②
「Night And Day」「Tenderly」のコード進行

おまけとして、4曲目の「Night And Day」と6曲目の「Tenderly」のコード進行を紹介します。

大好きな演奏なので、だいぶ以前になりますが、コード進行やエバンスのアドリブ・フレーズを勉強しました。
懐かしいなあ。

「Night And Day」 キーはE 形式はAABC

 A

|Fm7-5(11)   |B7(♭13 ♯9)  |EM7     |EM7     |

|Fm7-5(11)   |B7(♭13 ♯9)  |EM7     |EM7     |

|Am7-5      |Am7(13)    |Gm7     |Gdim     |
                           (Cdim(11)Adim(11)

|Fm7      |Fm7(11)on EM7(9) |EM7(9)  |EM7(9)
         (B7sus4)

 A

|Fm7-5(11)   |B7(♭13 ♯9)  |EM7       |EM7    |

|Fm7-5(11)   |B7(♭13 ♯9) |EM7       |EM7     |

|Am7-5      |Am7     |Gm7     |Gdim       |
                           (Cdim(11)Adim(11)

|Fm7 Fm7(11)on|Fm7(11)on EM7(9)|EM7(9)  |EM7(9) |
     (B7sus4) (B7sus4)

 B

|G6(9)     |G6(9)    |EM7(♯11)   |EM7(♯11)  |

|G6(9)     |G6(9)    |EM7(♯11)    |EM7(♯11)  |

 C

|Am7-5      |Am7(13)  |Gm7     |Gdim      |
                          (Cdim(11)Adim(11)

|Fm7 Fm7(11)on|Fm7(11)on EM7  |EM7   |EM7  |
     (B7sus4) (B7sus4)

○ コード進行の解説

Aの前半部分は、Ⅱm7-5 ー Ⅴ7 - ⅠM という進行です。

Ⅱm7-5 ー Ⅴ7 は、短調でのⅡ-Ⅴであり、『短調の感じでⅡ-Ⅴ進行をしながら、長調のトニック・コードに進む』という進行です。

この進行は、たまにあります。

Fm7-5(11)の構成音は、下部から順にいくと、F、B、E、Bです。

7(♭13 ♯9)構成音は、B、A、D、G、Dです。
(一番下のBは、ベーシストに任せて、弾かない方がいいです)

12小節目は、基本はGdimなのですが、コードを転回させてCdim(11)Adim(11)にした方が、ビル・エバンスの弾くコードに近づきます。

Cdim(11)の構成音は、C、G、A、F。

Adim(11)の構成音は、A、E、G、D。

14小節目のFm7(11)on は、機能としてはB7sus4なのですが、私がギターでB7sus4を弾くと、少しエバンスのコードと噛み合わないのです。

ギターやピアノがFm7(11)を弾いて、ベースがBを弾くと、ちょうどいい感じになると思います。

Fm7(11)onの構成音は、B、F、C、E、B

13小節目のFm7(11)on は、14小節目のFm7(11)onに対する、半音上からのアプローチ・コードです。

14小節目のEM7(9)も、EM7(9)への半音上からのアプローチ・コードです。

Bに入ると、GのキーとEのキーを、行ったり来たりします。

もEも、ⅠMです。

6(9)の構成音は、G、B、E、A、D

M7(♯11)の構成音は、E、B、D、G、A。
(これも、一番下のEは、ベーシストに任せて弾かない方がいい)

Cは、Aの後半部分だけを取り出した構成をしています。

7~8小節目のEM7は、ここではエバンスが9thのテンション・ノートを入れていないので、(9)を書きませんでした。

アドリブに入ると、BのEM7(♯11)は、エバンスはE6(9)で弾くようになります。

つまりBでは、G6(9) → E6(9) → G6(9) → E6(9)と、
『同じ響きのコードで、短3度の上下をする』のです。

これが、とてもかっこいい響きなのです。しびれますねー。

エンディングは、EとEを行ったり来たりする進行になります。

ずっとEM7 ー EM7 でもいいのですが、それだと雰囲気が出ないので、細かく構成音を表記してみます。

下記の通りに弾けば、エバンスの音と良い感じにはまります。

 エンディング  (Cの5小節目から書きます)

|Fm7      |Fm7(11)on EM7(9) |EM7(9)  |EM7(9) |
         (B7sus4)

|EM7(9)   |EM7(9)    |EM7(9)    |E6       |

|EM7     |E        |E       |EM7      |

|EM7     |EM7      |EM7     |EM7       |

|EM7     |E6       |EM7      |E6       |

|EM7     |E6       |EM7      |E6       |

|EM7     |EM7    |

次は、「Tenderly」です。

この曲は、このアルバムでは3拍子で演奏されています。

エバンスは、けっこう3拍子が好きみたいで、よく演奏しますよね。

この曲は、とにかくエンディングがかっこいいです。

エンディングのコード進行も書きますが、後述しますが一箇所だけ自信のない部分があります。

「Tenderly」  キーはE  形式はAB

 A

|EM7      |EmM7on  |Em7(9)    |A7(13)  |

|Fm7(9)      |D7(♯11)    |EM7      |EM7     |

|Am       |B7        |Am      |Dm7-5 G7 |

|Cm7       |F7(13)     |Fm7(11)    |B7      |

 B

|EM7      |EmM7on  |Em7(9)    |A(13)  |

|Fm7(9)    |D7(♯11)    |EM7      |EM7     |

|Am      |Dm7-5 G7   |Cm7      |Am7-5 D7  |

|Gm7  C7  |Fm7  B7  |EM7     |Fm7  B7  |

 エンディング Bの15小節目から入る)

|EM7        |E6on    |DM7      |D6on   |

|CM7       |FM7(13)    |EM7      |AM7(13)   |

|DM7       |GM7(9)    |CM7      |FM7(♯11)  |

|EM7(♯11)   |

○ コード進行の解説

まず、Aの部分ですが、2小節目はコード・ブックだとA7(♯11)になっているのですが、EmM7が正確なコードだと思います。

コード・ブックに出ている、A7から3小節目のEm7への進行は、響きとして変だと思います。

m7とA7とは、Ⅱ-Ⅴ進行のコード関係になるので、2小節目という中途はんぱな所からA7→Em7→A7(Ⅴ-Ⅱ-Ⅴ)と進行していくと、「意味が分かんないなー」と聴き手に感じさせてしまいます。

M7→EmM7→Em7(9)と進めば、三度の音がクリシェ進行(半音で下降するライン)になって、「おおっ、かっこいい」となります。

mM7の時にベースはAに行っているので、EmM7onで表記しました。

9&11小節目は、響きとしてAmの方がAm7よりもはまります。

シンプルなAmで、「どーん」と重みを出した方が、きまります。
ここでのエバンスも、そうしています。

この曲は、メロディがテンション・ノートに行って、ロング・トーンになる事が多いです。
なので、なるべくテンション・ノートも表記してみました。

(カッコの中の9とか13が、テンション・ノートです)

Bは、Aとは後半部分が違います。
それほど難しい進行ではないので、問題ないでしょう。

エンディングは、Bの15小節目から入りますが、それまでのEキーから、Eキーにいきなり転調します。

そこから、どんどんと転調していきます。
最初の4小節は2小節ごとに転調し、その後は1小節ごとの転調です。

5小節目からは、すべての音がM7コードになっているのがポイントです。
美しい響きになっていますねー。

11小節目のCM7は、メロディに♯11の音が出てくるのですが、バックのコードはCM7でいいと思います。

12小節目のFM7が、くせものなんですよ。
-5度の音とM7度の音が入ってくるので、違うコードに聞こえるのですが、だぶんFM7(♯11)の表記でいいと思います。

ギターで弾いた場合、1度、-5度、M7度、♯11度、と音を重ねると、しっくりきました。

最後のEM7(♯11)は、1度、3度、M7度、10度、♯11度、と音を重ねると、ばっちり決まります。

(2013年6月1日に作成)
(「Night And Day」は11月22に追加)


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