(『貧困襲来』湯浅誠著から抜粋)
日本やアメリカでは、貧困者は積極的に増やされています。
ここを見誤ってはいけません。
「増やしたくないけど増えてしまっている」のではなく、「増やしたくて増やしている」のです。
貧困者をターゲットにするビジネスがあります。
それを私は、『貧困ビジネス』と名付けました。
貧困ビジネスは、しばしば「ベンチャービジネス」と見られています。
具体例を挙げていきます。
① 人材派遣会社
貧困ビジネスの代表は、人材派遣会社です。
とりわけ代表なのが「日雇い派遣」を扱う、グッドウィルやフルキャストのような会社です。
フルキャスト社は、ローン会社もしている事で有名です。
1986年に施行された『労働者派遣法』は、1999年に大幅な改訂が行われました。
そして一部の業種を除いて、派遣が原則自由化され、爆発的に拡がりました。
2003年には、製造業でも派遣が可能になりました。
派遣業は、労働者を「商品」として提供するものだから、安く使い勝手のいい商品(雇用条件)が求められます。
その結果、派遣労働者の賃金は安くなり、雇用は短期になります。
商品として派遣会社に登録されるが、彼らは人間です。
だから、仕事を回してもらえなければ生活できなくなる。
結局、労働者は諸権利を放棄して仕事を回してもらう事になります。
② 消費者金融・銀行
生活に困っている人は、消費者金融の格好の「お客様」です。
末河さんは、武富士から10万円を借りようとしました。
ところが担当者は100万円を出してきて、「100万円じゃないと貸さない」と言う。
末河さんは100万円を借り、不必要な90万円をすぐに返済しようとしました。
しかし武富士は拒否した。
こういうのを、「過剰与信」といいます。
返済能力を超えるカネを貸し付けて、借金地獄に落とし込むのです。
多重債務に陥った人の相当数は、生活保護を受けられた人です。
しかし生活保護は宣伝していないから皆あまり知らないし、福祉事務所に行っても「あんたはダメ(生活保護を受けられない)」と追い返されがちです。
消費者金融の多くは、違法な金利を取っているから、弁護士に相談すれば支払額を減らせるし、過払い金の戻し請求もできます。
だが、多くの人はこれを知らず、返済地獄に陥っています。
消費者金融は、生活保護を機能させない行政や、低金利でカネを貸せるのに貸さない銀行と、暗黙のタッグを組んでいます。
銀行は、低金利で安く調達したカネを消費者金融に回して、空前の業績を上げています。
「企業が豊かになれば、国民の底上げが図れる」という説明がとんでもない嘘だと、これ1つを見ても分かります。
消費者金融や銀行は、貧困を作り出すことで好業績を上げています。
(2014.7.29.)