タイトル貧困者を食い物にするビジネス③
敷金・礼金・仲介料が不要の賃貸業 保証人ビジネス 野宿者向け宿泊所

(『貧困襲来』湯浅誠著から抜粋)

⑥ 敷金・礼金・仲介料が不要の賃貸業

レオパレス21は、「敷金・礼金・仲介料が不要で、家具付き」を売りにする大手の賃貸業者です。

レオパレス21が入居者と結ぶのは、通常の賃貸借契約ではありません。

入居者は、まず「レオパレス・クラブ」に入会します。

そして会員として「アパート施設の部屋利用の契約」を結ぶのです。

賃貸借契約ではないので、『借地借家法』が適用されません。

そのため、家賃を滞納すればすぐに会員資格を剥奪して追い出せます。

レオパレス21のシステムは、賃借人を保護する『借地借家法』を骨抜きにするものです。

類似のシステムを採用しているのが、スマイルサービスです。

東京に住んでいる人は、「敷金0、礼金0、仲介手数料0」のハデなピンクの看板を見たことがあるでしょう。

こちらでは何と、「施設付き鍵利用の契約」です。

会員規約には、「賃貸権ではないので、居住権・営業権は認められません」と書いてあります。

そして家賃払いが1日でも遅れれば、会員資格を失います。

⑦ 保証人ビジネス

これは、保証人を頼める人を持っていない者をターゲットにした、家賃保証を請け負うビジネスです。

フォーシーズ社は、2001年から家賃保証業を始めています。

05年には家賃保証した件数が1.5万件になった、急成長企業です。

5分の審査で家賃保証を請け負い、家賃が遅れた時には3日以内に立て替える。

フォーシーズの契約書にあるのは、次の条項です。


家賃を2ヵ月以上の滞納をした場合は、強制的に契約を解除できる


立て替え金には、日歩10.19銭(年利40%)の利息がつく
(※年利40%は、刑事罰相当の違法金利です)


フォーシーズの職員が訪問する際の交通費を、全額負担する

このような悪徳企業が、自治体サービスの協力業者となり、ベンチャー企業として受け止められています。

⑧ 野宿者向けの宿泊所

1990年代の末に、「日本人権連合」なる団体が東京の路上に現れました。

この団体は、路上で野宿者をリクルートし、自らの施設に入所させて、生活保護を取得させます。

生活保護の住宅費は、東京23区では1人あたり5.4万円です。

リクルートした人を小さな部屋で同居させれば、高い収益を上げられます。

1施設の収益は、多い所では1ヵ月に100万円を超えています。

日本人権連合のビジネスは、収益を投資に回して、瞬く間に関東一円に拡がりました。

この団体は、今は「NPO法人エスエスエス」として活動しています。

2005年10月の段階では、127ヵ所4138名定員の施設を運営しています。

エスエスエスの施設で暮らす人々は、食費や管理費などを引かれて、手元に残るのは3万円程度です。

🔵まとめ

貧困者を食い物にする『貧困ビジネス』は、不利な条件が設定されており、いつまで経ってもそこから抜け出せなくなるはめになります。

貧困生活に陥ると、アクセスできるのは貧困ビジネスばかりになり、劣悪な条件に手を出さざるを得なくなる。

貧困ビジネスは、「グローバル競争に勝ち残るために必要だ」といって導入された、規制緩和が生み出したものです。

大抵の人は貧困を見ようとせず、「なんだかんだ言っても、本人が悪いんじゃない?」と考えて、そこで思考を止めてしまう。

行政は、貧困ビジネスの実態を十分に知っています。

知っていながら、しばしば協力関係を作っている。

ある人が福祉事務所に相談に行ったところ、「サラ金でも利用したらいかがですか?」と言われたという。

貧困ビジネスの側も、行政と協力関係を築くことで、社会的信用を得ている。

そしてマスコミは、行政や貧困ビジネス事業者の言う事を信用する。

呆れ果てる事態と言う他ありません。

母子家庭の母親や野宿者を劣悪な条件で働かせて、それを「自立支援」と言うのは、貧困ビジネスの世界に放り出しているにすぎません。

貧困ビジネスが公的セーフティネットに取って代わるという、悪夢のような事態が起きています。

(2014年7月29~30日に作成)


NEXT【次のページ】に進む

BACK【前のページ】に戻る

目次【日本の問題の勉強 貧困問題】 目次に戻る

目次【日本の問題の勉強】 目次に戻る

home【サイトのトップページ】に行く