タイトル貧困者を無くすための10の方法(前半)

(『貧困襲来』湯浅誠著から抜粋)

貧困者を無くすために、私たちには何が出来るのでしょうか。

ここでは、10の提案をします。

① 自己責任論とオサラバする

あなたの使う駅に野宿者が居たとします。

「まったく迷惑な。自堕落な生活をしやがって。」と感じたとしたら、それは自己責任論が背景にあります。

野宿者を見たら、別の考え方をしてみよう。

「彼らは、家も無く、仕事も無く、お金も無い。それに対して、行政や私たちは何をしてきたのか」と。

こう考えば、違った見え方になります。

障害者に対応する『バリアフリー』という考え方があります。

あれは、「障害者が可哀相だから、駅にエレベーターを作ってあげよう」という事ではありません。

バリアフリーは、「障害者が安心して暮らせない社会は、不自由な社会だ。障害者が不自由な生活になるならば、それは社会に問題がある。」という考え方に基づいています。

障害者に対応する事は、社会が自由を獲得する事なのです。

貧困に関しても、この考え方でいきたい。

貧困は「本人のせい」ではなく、「社会の側に問題がある」のです。

貧困に自己責任論を寄せ付けてはいけません。

② 自分を排除(否定)しない

貧困に陥っている人は、「自分は悪くない」と考えましょう。

「ぬるい事を言ってんじゃねー」と言うかもしれないが、私は本気です。

現在うまく行っていない人は、「自分は悪くない」と100回唱えることをお勧めします。

貧困にあえぐ人の多くは、「自分の責任だ」と思っています。
だが、それはおかしい。

誰かが貧困だとしたら、それを解消する責任は『政治』と『社会』にあります。

だから貧困状態の人こそ、真っ先に「何とかしろ!」と声を挙げていいのです。

ところが自己責任論がまかり通っているので、当の本人がなかなか声を挙げません。

そのため、貧困についての政策が、貧困者を抜きに決められています。

障害者の権利を訴える運動では、「私たちの事を、私たち抜きで決めるな」というスローガンがあります。

これこそ真っ当です。

③ 疑ってみる

自己責任論と手を切れば、貧困の実態が見えてきます。

「ホームレス」「多重債務」「自己破産」「給食費の滞納」「ニート」「フリーター」「日雇い派遣」「自殺」「犯罪」など、あらゆるものの陰に貧困は潜んでいます。

これらの情報に接した時、「これは貧困が現れているのではないか?(社会に問題があるのではないか?)」と疑ってみよう。

貧困を見なければ、貧困は止められません。

④ 調べる

貧困に目を向けると、「どうしたらいいのか?」という問いが生まれます。

貧困問題に対応している団体はありますが、人材も資金も不足しており、社会的に認知されていません。

だから、自分で調べて、そういう団体を知っておこう。

貧困の相談を誰かから受けた時に、「○○って所がある」とか「××ができるよ」と繋げるようにしよう。

⑤ 計算する

日本における貧困の公式定義は、『最低生活費(生活保護の基準)以下で暮らしていること』です。

では、最低生活費はいくらか。
多くの人は、それを知りません。

貧困が見えないのは、そこに大きな原因があります。

議論をしようにも、何が貧困か分からないからです。

『生活保護の基準額』は、生活にさまざまに影響しています。

国民健康保険の減免措置では、対象者は「収入月額が生活保護基準額の120%未満」と定まっています。

公営住宅の家賃減免、就学援助制度、最低賃金の算定なども、生活保護基準が尊重されています。

最低生活費を皆が知ると、困ってしまう人達がいます。

自治体のホームページを見てみて下さい。
生活保護のことは、たいてい一番分かりにくい所に置いてあり、詳しい説明もありません。

人々が生活保護について知らないのは、情報が少ないので当たり前なのです。

貧困について知りたいと思ったら、まず自分の家族(世帯)の最低生活費を知りましょう。

(2014.7.30.)


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