(『貧困襲来』湯浅誠著から抜粋)
私が支援をした福田さんは、5~9月の間に3回の就職をし、3回とも数日で辞めました。
30歳前の若者が、仕事を数日で辞め生活保護を受ける。
これを、「甘ったれてんじゃねー!」と本人のせいにして片付けるのは簡単です。
一喝して福田さんの態度がコロッと変わるなら、私もそうします。
そもそも仕事では、最初は誰でも上手くいきません。
しかし多くの人は、「大丈夫、いずれ出来るようになる」と感じ、「同僚ともうまく付き合えるようになるさ」と思います。
この「できるさ」に根拠はなく、本人の自信の問題です。
どうして自信を持てるかといえば、過去に成功体験や応援された経験があるからです。
逆に言うと、自信を持つ経験をしてこれなかった人は、「できると思えない」と感じても不思議ではありません。
私は、福田さん達を見ていて、甘えの問題だとは思えないのです。
これは、『貧困問題』なのです。
自信が小さくなってしまう事も、貧困です。
彼らの問題をとりあえず「意欲の貧困」と呼びますが、この問題を解決しなければならない当事者は、本人たちよりも社会全体です。
「本人が悪い」との自己責任論で処理し続ける事は、正しいのでしょうか?
上手くいっている人は、「自分の努力の結果だ、自分は1人で生きてきた」と思いがちです。
でも本当は違います。
(2014年7月23日に作成)